はのんのBL部屋

　駅に着いて世那に今電車に乗る、とメールして電車に乗った。一人なのにはちょっとドキドキする。
　だって…初めて駅で一人だ。
　今まで引っ越して同じ家に住む様になってからずっと行きも帰りも世那が隣にいてくれたんだ。

　……過保護な位に守られている。
　なんでこんな譲なんかを世那は守ってくれようとするのだろう？
　放っておけないって…。
　そういえば大原さんが世那は弱い者に優しいとか言ってた。
　譲は弱い。でもじゃあ…もし他にも弱い人いたら…？

　いや、そうじゃなくて！
　譲は守ってもらうだけじゃなくて一緒に隣に立ちたいんだ。
　守ってもらうだけじゃだめなんだ。
　……でもそうしたら世那にいらないっていわれるのかな…？
　放っておけない、って事はそういう事？

　じゃあもし譲が放っておいてもいいようになったら世那は別の弱い人の所にいっちゃう…？だったら弱いままでも…。
　ああ……またぐるぐるしてきた。
　そんなぐるぐるしているうちに駅に着いた。
　いつもぼうっとしてると世那にとんと背中を押されるのにその手が今日はない…。
　やっぱり寂しい。
　それに西高生がいっぱいいる時は必ず譲の肩を掴んでくれるのにそれもない。

　…とはいっても今日はいつもみたいに多くはないのでやっぱり譲一人でも大丈夫そうだ。
　「あれ～？メガネちゃん一人ぃ？」
　…と思ったら学園祭にも来た人がいた！
　譲はそそくさと早歩きで歩いていく。
　「気をつけてねぇ～」
　白々しい…。
　向こうも今日は一人みたい。いっつも女の子連れてるんだけど…。

　大丈夫みたい…。
　ほっと安心しながら駅を出た。
　身体も小さいけど、このメガネが野暮ったいのもダメなのかなぁ…？
　トロいのも、ドジなのも。
　忘れ物しないように用意しておいて忘れるんだから…。
　それに慌ててまたドジを重ねる。

　世那の慌てるな、と譲を止めてくれる声を思い出す。
　世那がついていてくれると不思議と落ち着いてくるんだ。
　きっと譲が何かをしても世那がちゃんと助けてくれるって分かっているからだと思う。
　なんかもう本当に全部を世那に委ねちゃって依存しちゃってる。
　それじゃダメなのに。

　結局駅では気にしたような事も何もなく無事家に到着。
　鍵はお父さんに新しく作ってもらったのでもう譲も持っているけど、それもいつも世那と一緒だったから使った事がなかった。
　鍵を開けて家に入り、そして携帯を出して家に着いたよ、とメールすると世那から分かった、と一言だけ返った来た。
　そういえばわりとずっと一緒にいるからメールってあんまりした事ないんだ…。
　貴重な世那のメールの返信にくす、と笑ってしまう。
　ほら…こんな小さな事でも心がふんわりと温かくなってしまうんだ。
　

　世那のバイトが休みの日はどうしてもやっぱりべたべたしたくなっちゃうけど、我慢！
　いっつもいっつも世那にばっかりくっついてたら絶対ウザイ！
　ご飯を食べ終わった後、譲が自分の部屋に入っていこうとしたら世那が譲の腕を引っ張った。
　「なんだ？なんで自分の部屋？折角バイト休みで一緒にいられるのに」
　「え…と…テスト近いし…僕頭よくもないから勉強しないと…」
　「………そっか」
　世那が静かにそう納得した言葉に譲はぐっと心が苦しくなる。
　ホントは違うんだ。世那といたい！

　……でもちゃんと自分に自信持てないと世那のお母さんに堂々と世那の事が好きって言えないから…。
　「じゃ、頑張れ。分からないとこあったらもってこい」
　「………うん」
　世那があっさりと譲の腕を離した。
　引っ張ってくれればいいのに！
　ぎっちり世那の腕の中に入れてくれればいいのに！
　そしたら縋れるのに…。

　本当は触ってたいし、触られていたい。キスだってしたいし、それ以上だってしたい。
　引っ張っていって部屋の中に入れてもらってそのまま…。
　なのに世那はあっさりと譲を離して自分の部屋に入ってドアを閉じてしまう。
　世那が隣にいるのに…。
　なんで…？

　なんで、って自分で言ったんだけど。
　閉まったドアの向こう側が遠くて泣けてきそうだ。
　全然強くなんかなれない！
　こんなに世那が足りないのに…。
　なんで世那がバイトが休みで傍にいるのに近くにいられないんだ？
　弱すぎる！
　こんなんじゃダメだ。

　強くなるんだ。顔を上げられるように。
　世那の閉まったドアの前で顔を俯けたくなったが、くいと譲は顔を上げた。
　俯かない！
　強く！世那に迷惑かけないように！並べるように！
　上っ面だけはどうしようもないけど、中身だけでも変われないと！
　自分で決めたのにくじけそうになる。たったドア一つに…。
　譲は口を引き結んで自分の部屋に入って机に向かった。

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続きに拍手コメお返事です^^

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学