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僕の好きな人 83

 譲は一回世那のバイトを覗きに行ってから行ってない。
 だって世那が大原さんの言った先輩と仲よさそうに並んでるの見たら絶対凹んじゃう。
 だったら行かない方がいい。行かなければ見なくてすむ。
 その先輩って人の話が世那の口から出るのも嫌でバイトの事を世那に聞く事もしなかった。休みがいつか、とか何時からとか連絡事項ばっかり。
 頑張ってね、とかそういうのは言うけど、それだけ。
 ……やっぱりあの日。見に行かなければよかった。
 そしたらこんなに気になるなんて事なかったのに。

 「え?日曜日休みって…言ったのに」
 「悪い。昼だけちょっと入ってって頼まれて。夕方なんねぇ前には帰って来るから…待ってろな?」
 「………うん」
 しゅんとしてしまった。
 日曜日。テスト前だけど、学校も休み、世那のバイトも休みで、今まで我慢してた分べたべたしたいな、って思ってたのに…。
 すっごく楽しみにしてたのに…。
 ずっとキスとかもしてなかったからできるかなって思ってたのに…。
 大原さんに付き合ってるの?と聞かれた事あったけど…付き合ってるのとは違う気がする。

 「…わりぃ…早く帰ってくるようにする」
 世那が譲の頬を触ってそして出て行った。
 ツマンナイ…。
 今日はちょっと勉強も休んで、と思ってたのに…。

 仕方ないから勉強しようかなと自分の部屋に行ったけど勉強モードになってなかったので全然進まない。
 これじゃかえって効率が悪い気がして、気晴らしに本屋さんにでも行ってこようかな、と譲は家を出た。
 雑誌を立ち読みするけど、譲は普段あんまりそういう事もしないし、慣れない。

 自分を変えるって…外見もどうにかしたほういいのかな?ってファッション誌見たけど、別にジーンズにロンT、パーカーとかで自分の格好とどこがどう違うのか分からない。
 ブランド物で値段が違うって言ったらそれまでだけど。
 ……やっぱツマンナイ。
 結局本屋さんも出てしまう。

 一人で知らない店に入るのも、譲にはそんな勇気もなくて、家に帰ろうかなと思った時だった。
 ……見つけてしまった。

 ……なんで?
 バイトって言ったのにこんなとこに世那いるの?

 譲の目の前には世那のお母さんに呼ばれて入ったコーヒーショップだ。
 そしてそこ世那。世那と一緒にいたのは大原さんに聞いた純香さんって言ってた先輩だ!
 窓際にいた世那と向かい側に座る先輩って人を呆然として譲は見た。
 そんな譲の視線を感じたのかちら、と世那が顔をこっちに向ると譲と目が合い、世那が大きく目を見開いているのに譲は慌てて世那から視線を反らして走り出した。

 嘘だったんだっ…。
 やっぱり世那は…バイトは休みだったんだ。
 譲にはバイトって言って、家で待ってろって言って、あの人と会ってたんだ!
 でも世那にしたらマヌケだ!こんな家からも近い駅のコーヒーショップの窓際にいるなんて!

 譲が家から一歩も出ないと思って安心してた?
 ……このコーヒーショップは譲はもう二度と近づかない方がいいかも!
 いい事が一つもないとこだ!

 「譲っ」
 世那の声が後ろから聞こえてきた。
 なんで追いかけてくるの?
 走って逃げたけど帰る家は一緒だし、譲は足も遅いし、足の長さも違う世那にあっという間に追いつかれて腕を捕まれた。
 世那の顔を見たくないっ!

 だって、休み…すっごく楽しみにしてたのに…世那は嘘ついて…あの人と一緒にいたんだ。
 譲は顔を覆って俯いた。
 世那が譲のパーカーのフードを頭に被せてそのまま抱き寄せるようにしたのに譲は拒否するように首を横に振った。
 「や、だ…っ!……世那…嘘……ついた!」
 「……悪い」
 涙が溢れてくる。
 眼鏡が涙でぐちょぐちょになってる。

 「………譲。帰るぞ」
 「や、だ……っ」
 やだって言ったって譲の帰る家は世那と一緒の家しかないんだ。
 嗚咽を漏れるのを我慢しながら世那が譲を抱えるようにして家まで帰ってきた。
 「やだっ!」
 家まで帰ってきて二階に連れて行かれて世那に抱きしめられたが譲は拒否するように首を振りながら声を出した。

 「何が?もう俺が嫌になった?」
 「嫌になったの世那の方でしょ!……嘘ついた!…僕…今日…世那休み…楽しみ……に…してたっ……ずっと…バイトって…っ……いっしょ…いられる…と思ってた…のに…バイトって……でも…ちが……」
 うぅと声が漏れる。
 「譲…嘘ついたのは悪い。でもなんでもねぇ…」

 なんでもないならなんで嘘つくの!?
 そう言いたくても嗚咽で言えない。
 どんどんと世那の胸を叩いたけど世那は離してくれないで譲をぎっちりとと抱きしめたままだ。
 「譲……まだ俺の事は好きか?」
 「好きっ!」
 決まってる!なんでそんな事聞くの!?
 世那が涙でぐちゃぐちゃの譲にキスしてきた。

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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