「堂々と、とかちゃんとって何が?何で?…それに店まで来た?」
も一回世那が譲の中でイった後、綺麗にティッシュで後始末した後に服をちゃんと着せられ落ち着いたところで聞かれた事に譲はびきっと固まった。
「……えっと…」
世那のベッドに並んで座ったけどちょっと動揺してしまう。
なんか色々しゃべっちゃってた…?
泣いて動揺して何言ったか覚えていないけど…でも余計な事は言ってないはず、とは…思う。
「店…行ったよ…。外から覗いた」
大原さんと…。
それであの先輩と仲よさそうにしてて…見たくなかったから帰ったんだ。
譲がふい、と顔を俯けた。
「譲?」
「………」
「今日一緒いたのがバイト紹介してくれた先輩で、あの人とはホントなんでもねぇぞ?」
「………なんでもなく…ない…くせに…」
付き合ってた…って大原さんに聞いたもん。会長も言ってたもん。
綺麗なすらっとした人で世那の隣が似合ってた…。
また泣きそうになってきてぎゅっと口を引き結んだ。
「………譲?」
世那が怪訝そうな声を出して譲の顎に手をかけるとくいと上を向かせられた。
「………何か聞いたのか?」
「何かって?」
反対に聞いたけどこれは譲の意地悪だ。
「………世那覗きに行った日…世那の友達って言ってた大原さんに会った…。……あと会長から……聞いた」
チッと世那が舌打ちする。
「余計な事を!………譲、今は本当に何でもない。……今度バイト先に来るか?」
小さく譲は首を横に振った。
「だって…世那、仕事中だったら…つまんない…」
自分のとこだけにいて欲しいとか…そんな我儘な事言えないし。だからいい。
「じゃあ今度一緒に行く?」
「……世那と?」
「ああ。休みの日に」
「………うん」
それなら行く。
こくんと譲が頷くと世那が譲の頭を抱きよせた。
「好きなのはお前だけだ」
「………ん……」
「で、堂々とってのはなんだ?」
…………スルーしてくれないらしい。
「なんで急に変わった?」
「…急じゃないよ……。ずっと…こんな自分ヤダって思ってたし…」
「なんで?譲は譲だからいいんだろ?」
「どこが?僕のいいとこなんて全然ないもん」
「あるだろ。真面目だし、一所懸命だし、気が利くし」
「………どこが?」
そんな所ある?
真面目は分かるけど…。
「一番初めの時の片付けだってお前はちゃんとしようとして一所懸命してた。…できてなかったけど」
とん!と世那の胸を叩いて抗議すると世那が笑った。
「だから手伝ってやりたくなるんだ。してあげたくなる。なんでも自分でしようとしてるだろ?親達が旅行に行って、弁当って渡されたのにはびっくりした。手作りの弁当なんて高校なってから初めてだった。お前は当然の様に思ってただろうけど、あれは俺の中では結構衝撃的だった。高校生男子で普通に弁当作って、ってのが。それをある日突然義理の兄弟になりましたっていう俺にまでって」
「………そ、う…?」
「ああ」
世那が譲の額に額を重ねた。
「…可愛いな…って片付けんときも、階段でコケたときも、一つの事に一所懸命になれるお前が怪我したりしないか心配になって。……そこからはもうなし崩しに全部俺がついてないと、って思って…」
「……うん」
そう、だったんだ…。
照れる、けど嬉しい…。
世那の胸に顔を埋めるようにすると世那の腕が譲を抱きしめてくれる。
「そういうとこ、お前のいいところだと思うけど?…思うけど!変な風にも一所懸命になるのはいただけない!おかげで俺がどんだけやきもきしたか!」
「だって…世那バイトする…なんて言うし…いないんだもん…」
「バイトはお前とラブホにでも行こうと思ってだ!親の顔盗み盗みみたいなのが嫌だから!お前が気にするだろう?俺は別に下に親いたって二階にまで来ないし気にならねぇけど」
ら、らぶ、ほ……!?
かぁっと顔が真っ赤になってくる。
だってまさかそんな事世那が考えてたなんて!
「ま、それだけじゃないけど。どっか出かけたりとかもしてぇしな…と思って。……それが譲は全然近づいてこなくなるし!一体何がどうしてだ?ああ?」
聞き出すまで世那は諦めてくれないらしい。
言って…いい…のかな…。
「世那の……お母さんと…会った」
「何!?」
世那が大きな声で怒ったように言葉を発したのに譲はびくっと肩を竦ませた。
テーマ : 自作BL小説
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