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熱吐息 accelerando~急速に~9

 が~ん…
 なんでこんな事になったのだろう…。
 自分はもしかして淫乱だったのだろうか…?
 しかも動けない…。
 ぐったりとした身体は動かしたら後ろに激痛が走ってしまう。
 宗が身体から抜けるとぞくりと身体が震えて、宗がくっと笑いを漏らした。
 「待ってろ」
 宗がシャワー室にいってタオルを借りるぞ、という声が聞こえたけど返事も出来なくて。
 すると宗がタオルを手に戻ってきた。
 「あ…、い、いいよ…」
 声も掠れている。本当に隣は出かけているのだろうか?散々声をあげてしまった自覚はある。聞かれてたら恥かしくてもうここに住めない。
 「だめだ。中に出したから搔き出さないと大変な事になる」
 「…大変…?」
 「なんだ?知らないのか?トイレから出られないことになるぞ?」
 まじで?
 「痛いだろうが、ちょっと我慢しろ」

 宗が何度も丁寧に指を入れて自分の注いだものを搔きだすのに瑞希はどうしていいか分からない。
 いいから、と言いたいのに、後ろは痛いし、身体は動かせそうになくて…。
 「…スミマセン…」
 恥かしいっ。
 「俺が出したんだから当然だろ。なんで謝る?」
 だってこの人にこんな事させてるなんて。
 丁寧に身体も拭いて綺麗にしてくれて服も着せてくれるのに、自由にならない身体には嬉しいが恥かしすぎる。
 「……瑞希より俺のほうが動けるな。ところでバイトは…?」
 「………無理に決まってんじゃん。携帯、取って…」
 宗に携帯を取ってもらって電話をかけた。
 バイト休むなんて信じられない。
 でも今まで休んだ事もなかった瑞希が熱があって、と掠れた声で言うとコンビニの店長はいいよ、ゆっくり休んで、一人暮らしなのに大丈夫かいと心配そうにしてくれたのに申し訳なくなる。ヤられて動けません、とは死んでも言えない。
 「…腹へった…」
 「………瑞希、ここの住所教えて、あ、ちょっと待て、書く物」
 宗に言われて瑞希がダルそうにペンの場所と紙、住所を教えた。
 そして宗が何処かに電話していた。
 「俺だ。今から住所言う所に昼と夜の分の食事の用意を持ってきてくれ」
 はい?どこに電話?
 「ん?ああ、そうだな。そうしてくれ。あ、二人分な」
 宗が電話を切った。
 どこに電話…?何かを注文とも違う感じだけど?

 「あと少し待て」 
 「…いいけど」
 そういえばすっかり言葉に迷いがなくタメ語になっていたけど宗は何も言わない。
 「あと何かいるものとかあるか?」
 「いるもの…?とくにないけど?」
 「……金くらいか?」
 「いらないよっ!あ、つ……」
 思わず身体を起こして激痛が走った。
 「いい、俺がいる間は俺が面倒みるから。だからお前はここにいろ」
 「……ええ~…?いる間っていなくなった時バイト先なくなってる…」
 「就職決まってるんだろ?」
 「決まってるけど」
 「じゃ、いいだろ」
 「………働き始めるの来年の四月からだけど?」
 「だろうな」
 …そこまでいる気?
 「…やだよ」
 「なんで?」
 「ヒモみたいじゃん」
 「……じゃあコンビニはいいけどホストはやめろ」
 「だからなんでそんな事言われなきゃないわけ?元々年明けたら辞めるつもりだったけど…。稼ぎ時の昨日、今日が行けないときついんだけど。スーツとかだって買わなきゃないし。せっかく欲しくて車買ったのに売らなきゃなくなる……」
 「だから、いいって」
 「よくない。だから、どうしてそんな事を言われなきゃないの?」
 「………」 
 宗が眉根を寄せた。

 「……さぁ?」
 「さぁ~?」
 なんだそりゃ。
 思わず抱かれてしまったけど、別に好き合ってじゃないし、付き合ってるわけでもないのだ。
 それなのになんでこんな事を言われなければならないのか。
 そう、好きでもなんでもないのに。
 それなのになんで…。
 抱かれてこんなに身体もひどいのに、嫌でもなんでもないのか。
 嫌な所か物足りない。
 身体がじゃなくて心が。
 今ここにいるのにこの人は瑞希のものではないのだ。
 それなのにホストは辞めろと言うのだ。
 どういうつもりなのか。
 …本人さえ分からないのには呆れるけれど。
 
 

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