「おい!」
「え?」
譲は肩をつかまれて後ろを振り向いた。
西高の制服!
「…………誰?」
見た事ない二人組だった。
「お前は知らなくても天間が知ってる」
「………世那?世那ならあっちのお店だよ?」
世那の店からは大分離れていて、譲は駅のほうではなく、世那に教えて貰った裏通りを帰る途中だった。駅も表ではなかった為に人通りは少なかった。駅側の方が西高生と遭遇する率が高いかなと思って裏通りを歩いていたのが悪かったのか…?
「なぁ~にしてんだぁ~?」
さらにもう一人増えて、譲が囲まれた感じになると…ちょっと怖くてさすがに譲はこくんと生唾を飲み込んだ。
でもこの人は分かる。いつも駅で世那に突っかかってきて、学園祭にも来てた。
「あ!石川!お前も天間にはなんか仕返ししたいって言ってただろ?丁度いい!な?」
「ああん?何?メガネちゃん拉致んの?」
拉致!?
「コイツ楯に取れば…」
「なぁ」
最初の二人組みが頷き合っているけど、後からの人は最初からツルんでたのとは違う…?
「いいねぇ。じゃ、メガネちゃん」
世那の知り合い?の人が譲の肩を組んできた。…知り合いだけど、そういえば恨みあるとか言ってた…。
どうしよう…と青くなってくる。
「何にもさせねぇから大人しくしとけ」
え…?
ぼそりと小さな声で囁かれた。
何にもさせない?
んん?どういうこと???
「なぁ、天間がずっとコイツといるんだけど、……マジなのか?」
くくっと馬鹿にしたような笑いを二人組みから譲に向けられる。
譲が笑われるのはいいけど世那が笑われるのはいやだ。
「ああ?メガネちゃん美少女だよ?仮装すれば」
「仮装!?」
ぎゃはは!と笑われてしまう。
「…余計な事は言わなくていいです!」
肩を組んでる人に小さく抗議するとお?という顔をされた。
「なんだ?あんまりビビってねぇな」
「………びびってるけど…」
駅の集団を見ているからか、それとも世那の方が怖そうだからか、この二人を見てもあまり怖い、と譲は思わなかった。
…どうしてだろう?何故か落ち着いている。
前の譲だったら考えられない事だと思う。
きっと何されるか分からなくて、怖くて泣きそうになっててもおかしくないはずなのに…。
それにこの人…。
いつも世那に絡んできてたけど…、何もさせないからって言った。
信用できるのか?と言ったらどうか分からないけれど、会長も卑怯な事はしないヤツだと言ってたのを思い出す。
「で?メガネちゃんどこ連れてくんだ?」
二人組は考えなしなのかどうする?と顔を見合わせている。
……なんか逃げてもいいのかな?と暢気に思ってしまうけど、譲は走るのに自信があるわけじゃない。
「天間に連絡する?それともコイツどこかに閉じ込めてでもおく?」
「女だったらヤってもいいけど…男はやだな」
「……お前らバカだろ。イチぬけた!メガネちゃん、送ってってやる」
「…え?」
ぐいと肩をつかまれたまま石川って人が二人組じゃら離れようとした。
いいの…?
「おい!石川!」
「ああん?だってテメェらの馬鹿さ加減にあきれる!それに大体俺は世那にはどうにか一泡ふかしてやりたいとは思ってるがメガネちゃんを楯にとってまでどうにかしてぇとは思ってもねぇ。…みっともない」
…やっぱり会長の言った通り?
「なぁメガネちゃん…俺の事好きになんねぇ?」
「なんない。………世那…何か……したの?」
「あいつ等はカツアゲしてるとこでも世那が見つけてシめたんだろ」
ちら、と石川って人が二人を見ると否定もしないのでそうなのだろうか?
「俺は女を取られた。…っつっても女が勝手に世那の方がいいって逃げただけだけど」
………また女の人?
「そん時世那は付き合ってる女いたからフラれてたけどな。俺のは逆恨みってヤツだ」
……堂々と逆恨みって言うのはどうなの…?
変な人。
くすと思わず譲が笑うとまたじっと見られた。
「…お前思ってたのと印象ちげぇな。ま、いいや来い」
ぐいと肩を引っ張られていいのかな?と思いつつ二人組みの方から離れていく。
「…え、と…いい、の?」
「ああん?…だってアイツらバカだろ?」
まぁ、確かに…。
「おい!石川!待てよ!」
「そんなんだから世那にヤられるんだろうが。ばぁか!男なら堂々としやがれ!」
……なんか、この人いい人?
駅ではピアスに茶髪にって派手な感じで譲は遠慮したいタイプだったけど…。
思わず助けてくれた人を見上げてしまう。
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