はのんのBL部屋

　「もうそろそろくるかなぁ？」
　「？」
　石川って人が歩きながら呟いた。

　「譲！」
　世那の声！？
　ばっと後ろを振り向くと、世那がバイトから抜け出してきたのかカフェの格好のままで髪を乱しながら走ってきた。
　「世那？ど、ど、どうしたの？」
　「どうしたの、じゃねぇだろう！石川！」
　世那が大きな声で助けてくれた人の名前を呼んで不穏な声を出したのに譲は慌てた。

　「世那！！！この人が助けてくれたんだ！」
　「………」
　石川って人は譲の肩を離さなくて世那の顔を合わせてにらみ合ってる。
　「譲、来い」
　世那に呼ばれていいのかな？と思いながらも石川って人から離れ、世那の方に足を出せばすんなりと石川って人は譲を離し、代わりに世那が譲の肩をぐっと抱きしめた。

　「……譲を？」
　「そう。最初は別の二人組に声かけられたんだけど…」
　「メガネちゃん。名前は？」
　「え？天間　譲…デス」
　「譲ね」
　「……気安く呼ぶな」
　世那が石川って人を睨みながら低い声で言えば石川って人が笑い出す。

　「世那がマジ！」
　「………」
　世那がチッと舌打ちしていた。
　「あ、れ…？大原さん？」
　よ、っと世那からちょっと離れて大原さんがいたのに譲は首を傾げた。
　「世那ぁ？感謝したら？たまたま大原と通りかかったからよかったけどなぁ～？」

　「………それは助かった」
　世那が声を出せばふふん、と石川って人は満足そう。
　……という事は譲が絡まれてるのを見て大原さんと見てて助けてくれたって事？
　「ええと、石川さん…？ありがとうございます」
　世那の隣でぺこんと頭を下げると石川さんが笑った。
　「コレ、めんこいな！」
　「………やんねぇ」
　世那が低く呟く。

　「世那！バイト戻らないと！」
　「…………そうだけど…」
　嫌そうに世那が顔を歪めている。
　「いいよ。送ってくから。な？譲？」
　大原さんがそう言うと世那がさらに顔を顰めた。
　「なんで大原まで譲を名前呼びなんだ？」
　「もう！いいから！世那！大丈夫だから戻って！」

　譲が世那の背中をぐいぐいと押してやると世那が何回も振り返りながら店に戻っていった。
　石川さんがずっと笑っている。
　「大原、アイツまじで？」
　「マジみたい」
　「ナニあの切羽詰った顔！いっつも飄々としてんのに！」
　何故か大原さんと石川さんの間に入って譲も歩き出す。

　「余裕ねぇ世那初めて見た！おもしれぇ～！譲やるねぇ～。何そんなにいいんだ？」
　「………それは僕も聞いてみたい…」
　「いや！心配ってのは分かるけど！」
　…分かる？
　「いや～！それにしても分かりやすいヤツ～！あんなヤツだったわけ？大原、お前ヤツと小学校からダチなんだろ？」
　「そうだけど…。初めて見るかも。…俺まで睨まれた」
　「ちっせぇヤツ～！」
　なんか…世那が散々言われてる…。

　「かっこわりぃ！」
　「…世那、カッコイイもん」
　譲が小さく言うと石川さんと大原さんが目を丸めて譲の顔を覗き込んでくる。
　そして譲が笑われた。
　「はいはい、そうですね～！ははぁ～！ちゃんちゃらおかしい！あ～！マジおもしれぇ～！あ、そういや譲、宮下と同じ学校だよな？」

　「…はい」
　「あいつ毎日アレ見てんのかぁ？いいな～！おもしれぇ～！」
　……何が面白いんだろう？
　というかあっちもこっちも知り合いとかって世那の交友関係どうなってるの？譲なんて知り合いとか友達とか本当に少ないのに。
　「毎日毎日帰りに譲抱えて…って思ってたけど…そりゃ抱え込むわな。はっはぁ～」

　ず～っと笑ってる…。
　「なぁ譲！今度女の格好しねぇ？デートしようぜ？」
　「…しません。なんでしなきゃないの？」
　女装もデートも！
　「え～？チョー可愛かったけどぉ？」
　「なにそれ？」
　大原さんが石川さんに聞いてる。

　「こいつらの学校の学園祭でコイツ女装してたんだ！まじでそこいらの女よりずっと可愛い！……譲、そのダッセェ眼鏡やめてコンタクトにしたら～？」
　「……なんで皆やめたら？って言うのかな…？」
　「ったりめぇだろ！」
　大原さんも頷いてる。まぁ、確かにそしたらメガネちゃんなんて呼ばれなくなるかも、だけど…。
　「でも…世那はこれでいい、って…眼鏡外しちゃダメって…」
　それに譲は怖くてコンタクト入れられないし。

　「…世那が？」
　「うん…」
　「……譲？それでいいのか？」
　「いいけど？」
　何がダメなんだろう？
　だって世那は譲が譲だからいい、って言ってくれるんだからいいに決まってる。

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続きに拍手コメお返事です～^^

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学