「で?大原がなんで譲呼び?」
「え?前に会ったって言ったでしょ?」
「聞いた。けど…なんだ?あのツーカーぶり」
むっとしたような世那の声に笑ってしまう。
「ちょっと…色々。でも優しいね。大原さんも石川さんもいい人だ」
「……………」
呆れたように世那が譲を見る。
「……………俺もいい人?」
「世那?どうして?世那は僕の好きな人だもん」
「…くそっ」
「?」
世那がぎゅうっと譲を抱きしめてくる。
「…ホントお前にはヤられる…。………ま、いいや。寝ろ。遅くなっちまった…」
「……うん」
世那の腕の中が気持ちいい。
「…世那の声好き。腕、好き…。体温も好き…。キスも…」
とろんと眠気が襲ってくる。
「…俺も譲のえっちいとこ好き」
「……そこだけ?」
ぷっと世那が笑う。
「んなわけねぇだろ」
世那が優しく譲の髪を梳いて撫でてくれる。
「…好き」
全部…。
「ああ…」
世那が譲の頭にキスも落としてくれる…。世那の傍は安心。
すっと譲の意識が堕ちていった。
「起きる時間よ~!」
お母さんの声にはっとした。
え!?
遅い時間にえっちしちゃったからか、いつも早く目覚めるのに譲もぐっすりと眠ってしまってしまって起きる時間を過ぎてしまったらしい。
わわ!と慌てると世那の腕が譲の身体をぎゅっと抱きしめてくる。
「せ、せ、世那!部屋まで来ちゃったら!」
大変っ!
「お、起きたよっ!!!」
大きな声で世那の腕の中から声を出せば早くしなさ~い、と暢気なお母さんの声が階下から聞こえる。
………まさか二階でこんな事になってるなんて思ってもないはず。
慌ててる譲に世那がくすくすと笑ってる。
なんでこんなに余裕なんだろ?
「慌てるなって。ほら、着替えて来い。身体は平気か?…そういや昨日は後ろだけでイったな?」
「あ、朝からっ!……だ、大丈夫っ!着替えてくるっ」
そんな事を言われて顔を真っ赤にしながら世那の腕から抜け出して自分の部屋へ。
急いで着替えを済ませると世那も着替えを済ませていた。
「時間まじで迫ってる」
「え!?」
譲が慌てて急ごうとしたら世那が譲の身体を担いだ。
「せ、せ、世那っ!?」
「お前慌てると階段あぶねぇから」
「や!平気だってば!」
譲を肩に担いだまま階段を下りていくのに世那にぎゅっと抱きつく。
「こわい~」
「お前が自分で歩くより安全だ」
それは言いすぎだと思う!
「あなた達何してんの?」
お母さんが世那に担がれてる譲に首を傾げた。
「こいつ慌てるとコケるから」
あはは!とお母さんが笑う。いや!笑うんじゃなくて!
「よろしくね!」
「そりゃもう」
世那がにっこりとお母さんに答えてるのにたらたらと冷や汗が流れそう。
「ほら、お前先に洗面台使え」
「あ、うん!」
「同じ年くらいで急に義理の兄弟って…心配したけど…よかった」
お母さんがほっとしたように言っているのが後ろから聞こえた。
「譲可愛いですよ」
世那~!?何言ってんのぉ?
「そうだろう!かわいいよな!」
新聞を見てたお父さんまで入ってくる。
「可愛い~?まぁ……チビだけど」
容赦ないのはおかあさんだけだ。
「でも仲良くなって本当によかった!」
鼻歌でも歌いそうなお母さんにちょっとだけ謝る。
兄弟じゃなくて恋人…なんです。なんて!自分で考えて顔が真っ赤になってきそうだ。
急いで用意して朝ごはんをかき込んでお弁当を持って世那と並んで玄関を出る。
「いってきます」
「は~い!あ、譲!今日はお母さん達外食してくるから~!帰りも遅いから気にしないでね~!」
「あ、じゃあ作るの世那の分と僕の分だけでいい?」
「うん。よろしくね~!いやぁ娘じゃなかったけど、出来る子でよかったわぁ~!」
……自分が楽したいから仕込んだくせに。
まぁ、譲も家事は嫌いじゃないからいいけど。
世那がそれを聞いて携帯を取り出していた。
何してるんだろ?
メールをかちかちと打っている。
「だって!世那夜ご飯何食べたい?」
「ん……ちょっと待て」
急ぎ足で歩きながらもメールをあちこちにしてるみたい。
「………よし!譲、バイトのシフト変わってもらった!」
「え?」
「今日は一緒に風呂入ろ?」
「え?」
にやりと笑いながら世那が言った。
「き、きのう…もした…のに…」
「いつでもしたい。…っと、電車に遅れる!」
世那が譲の腕を引っ張って走り始めた。
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