ぐったりしてリビングのソファで譲は世那の膝枕で横になっていた。
「大丈夫か?」
「ん…」
お風呂場で何回もイタしてしまって譲はのぼせてしまった。
「我慢出来なくて悪い…」
「ううん?嬉しいよ?」
「………こんな俺に付き合ってくれんの譲位じゃねぇか?」
「…そんな事ないと思うけど…。でも…それでいいや…」
世那の手が譲の髪を優しく撫でてくれるのが嬉しい。
「ん?なんだ?もう帰ってきたんじゃねぇか?…早いな…」
外から車の音がするのに世那と顔を合わせた。
「ただいま~!……ってあら?どうしたの?」
あ!世那の膝枕で横になってたんだ!
「譲、風呂場でのぼせて」
「ばかね~!どうせまたぼ~っとしょうもない事考えてたんでしょ?」
……違うけど…まさかえっちしてのぼせました…なんて言えるはずない。
「譲くん!大丈夫かい!?」
「大丈夫…です」
「世那くんいると安心できる~!譲、家事は出来るけどそれ以外がちょっとだからねぇ…」
お母さんはあっけらかんとして笑ってる。いいけどね…。
「…………仲良すぎじゃないか?」
お父さんがじっと世那と譲を見比べながら小さく呟いた。お母さんはキッチンの方に行って聞こえていないけど、お父さんの目が世那を睨んでいる。
「譲放っとけないし?他のヤローの餌食にされたら困るからな」
世那が小さくお父さんに答える。
「……確かに。譲くん恵さんに似て可愛いから。……うーん……」
なんか…会話が変…だと思うけど…。
ちら、と世那がお母さんのほうを確かめてさらに小さい声を出した。
「母親、譲に連絡入れてきた」
「何?………また余計な事か?」
「そう」
はぁ、とお父さんが溜息を吐き出した。
「譲くん、気にしないでね」
「………はぁ」
余計な事って…。
「思い込み激しい人だから」
思い込み、だけじゃなかったと思うけど…。
「世那、ちゃんと譲くん守ってやりなさい」
「そのつもりだけど?…さ、譲、もう大丈夫か?上行く?」
「うん」
譲が起き上がると世那が譲の背中に手を添えてくれる。
「階段でこけるなよ?」
「そう毎日コケてないですけど…」
世那とお父さんが笑ってる。
いいなぁ…。ずっとお母さんと二人きりだったから、なんかすごく幸せな感じがする。
ふにゃっと譲が笑えばお父さんも笑ってくれるんだ。
「おやすみなさい」
「はい。おやすみ」
お父さんがにこやかに答えてくれる。……平和ですごく幸せだ。
「…………なんで譲がコイツラと!?」
世那のバイト先。
譲の前には大原さんと石川さんがいた。
「真っ直ぐ帰る!って言っただろ!」
今日は生徒会の集まりがあったのでバイトがあった世那とは別々に帰ってきたんだけど…。
時間がいつもより遅くなってしまった譲を駅で待っていたのは石川さんと大原さんだった。
待ち伏せ?されて腕を取られて連れて来られたのが世那のバイト先だった。
…譲は来たくはなかったんだけど…。
先輩って人とはなんでもない、と世那から聞いてはいたけど、頭では分かってはいても、だからって一緒にいる所を見たくはない。
先輩って人もいるのかな?と探せばいるし。
チラ、と大原さんを見れば、大原さんはその先輩をずっと目で追っている。
「客だぞ?」
石川さんがにやにやしながら世那に優越感たっぷりで言った。
「イラッシャイマセ!」
がん!と世那がテーブルに水を撒き散らしながら置く。
「譲は危ねぇからちゃんと送っていってやるぞ?」
世那がじろりと石川さんを睨んでいると、そこに先輩って人がくすくすと笑って通り過ぎていく。
「相変わらず純香さんは綺麗だな」
…確かに…。
遠目でも綺麗だって分かったけど…近くで見たらもっと綺麗だった。
じとっと譲が世那を見上げると世那が譲の視線に気付いたのかくっと笑って上機嫌に変わる。
「可愛いのは譲だけだけど?」
こそりと小さく耳元に世那が顔を近づけてきて囁いたのに思わず顔が真っ赤にして俯けた。
なんであの人を前にしてこんな事言えるのか譲には謎だ。
誰がどう見たってあの純香さんって人のほうが綺麗なのに。
どうして世那は別れたんだろう…?
すごく…似合ってる…。
悔しいけど…。
世那がテーブルを離れると譲は顔を伏せた。
「しっかしアイツは分かりやすい奴だなぁ…。あ、譲」
「え?」
石川さんに呼ばれて譲が顔をあげると石川さんが譲の方に手を伸ばしてきた。
…と思ったら、テーブルから離れたはずの世那がすたすたと戻ってきて石川さんの手を払った。
「譲に触るな」
くっくっと石川さんがそれはそれは楽しそうに笑っていた。
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