「あなた達は親子よねぇ。可愛いもの好きで…。…あ、譲くん、答えは出た?」
突然譲に話題を振られて譲はびくんと身体を竦めた。
「メリット、デメリットって……そんな事の…」
「あの!」
世那が言葉を続けようとするのを譲が遮った。
世那と世那のお母さんが譲を凝視する。
「正直…あの…世那が僕といてもメリットはないかなぁ、と思うんですけど…」
「譲っ」
「でも!……でも、ごめんなさい…世那の事…好き、です」
照れながらも世那のお母さんの顔を見てちゃんと言った。
これは本当だから。
顔を俯けたくない。
別に反対されたってなんだっていいんだ。だって、それはもう変えられないから。
「世那が…世那…だから…」
譲が譲だから、と言ってくれたように譲だって世那だからだ。
「世那がもし後ろ指さされる様な事しても何しても、全世界敵になっても…僕、世那だけいれば…いい…んです…」
「……あなたのお母さんにばれたら?泣かれたら?」
「それでもいい。そんなのはもう最初から覚悟してます。…あの…言っていい、のか分からないけど…うちのお母さんと世那のお父さんが結婚して…世那のお父さんもすごく優しいし…幸せだな…って思うんですけど…それでも…世那だけいればいい、と思ってる…んです…。メリットはないですけど…世那の邪魔はしたくない、です。世那にいらない、って言われたら消えます。……それじゃダメです、か?」
「いわねぇよ」
「………以外にただ流されてるだけじゃないのね」
「それだけでヤローなんか相手しねぇよ。俺だって譲が譲だからだ。別にアンタに反対されたって関係ねぇし」
「つまらないわね」
世那のお母さんはコーヒーを飲み干すと席を立ちさっさといなくなってしまう。
「え、と…?」
「興味なくしたんだろ。あの人ドライだから」
いいの…かな…?
「怒った…かな?」
「いいや。怒るもねぇよ。全部客観的なんだ。だからメリットデメリットなんか言うんだろ。好きにメリットもなんもねぇだろうが。仕事じゃねぇんだから。親父とうまくいくはずねぇだろ?」
世那のお父さんは感情表現豊かだと思う。譲にも可愛いとか言ってくれるし。
「感情的もないから譲の事も言ったんだけど。だいたいおかしいだろ?メリットデメリットの前に普通はモラルとしてどうなんだ?が先じゃねぇ?それはすっ飛ばしてんだからな」
……確かに。普通は自分の息子が男の子ととなったら取り乱してもおかしくないかも、とは思う。
譲の母親も取り乱すだろうか…?
……笑われて納得されそうな気もしないでもないけど。
「でも…譲……」
世那が譲の肩を抱き寄せ頭をつけてきた。
「ちょっと感動した。……そんなに…って思って…。さっきホテル行かないって断られてちょいと凹んでたんだけど…。譲は嫌なんだ、と思って」
「…嫌じゃないって言ったもん」
「うん。頭では分かってるんだけどな…。それが…そんなに…って」
「………言って…大丈夫だった…かな」
「ああ。あの人から言ってきた事だもんよ。譲…やっぱ今からホテル行かない?」
「………いかない」
「ちえっ。仕方ないな…夜まで我慢するか…。いいけど、お前声我慢しろよ?せっかく思い切り出来ると思ってたのおまえが断ったんだから俺我慢しねぇぞ?」
………それはちょっと…。
「感じすぎるエロい身体のくせに…」
「ちょ…そんな事…ここで…」
周りに聞こえないように小声で譲の耳元にだけ囁いてるけど、それだけでも譲は顔を真っ赤にさせる。
「譲の中でイきたいのに…」
「や、や…」
そういう事こんなとこで言わないでってば!
「…したくなってきた?……行く?」
「行かない!」
誘導してたの?
譲がむっとすると世那が苦笑する。
「真面目だからなぁ~…。でもちょっと押せば学校でもさせてくれそうなんだけど…」
「し、しないっ」
「今度保健室でする?冴子に交渉してみるか…」
「しないってば」
「だってシチュ変わったりすると譲も感じるだろ?エロい事言われるのも嫌いじゃないよな?」
「そ、そうじゃなくて……」
嫌いとか好きじゃなくて…。
「世那、が…言うから…」
かぁっと譲が顔を真っ赤にしてれば世那が席から立ち上がった。
「さ、行くか」
あっさりと何事もなかったように世那が譲の腕を引っ張った。
「?」
譲も行くぞと引っ張られたので立ち上がると世那に肩を抱き寄せられ、そして何故か眼鏡を取り上げられた。
「世那!見えないよ?」
「うん。大変!ちゃんとつかまってろな!」
掴まるのはいいけど…。
「さ、行こ」
譲は眼鏡を取り上げられ、世那に抱きかかえられるように誘導されるままついていくしかなかった。
世那の声がうきうきしてるように聞こえるのは…気のせいだ…きっと!
テーマ : 自作BL小説
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