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月に酔って 4

 連絡が来ない。
 イライラと千聖は足を踏み鳴らしていた。
 すでに日は暮れ、ハウスクリーニング業者が真面目に仕事をしていってくれた結果、風呂場も使えるようになってベッドの部屋も綺麗になった。
 ここまでは順調だったのに…。
 千聖は不動産屋に電話を入れた。

 「もしもし?造園業者から連絡入らないけど?……ああ早急にな」
 すぐ入れさせるようにします、と不動産屋が慌てるのにちょっと自分もキツく言いすぎていたか?とほんの少しだけ反省する。全部事が済んだら不動産屋に挨拶にでも行くか?自分が無理難題を言ったのは一応自覚している。…ただし千聖が忘れてなければ、だが。
 携帯が手の中で震えたのにすぐに出た。

 「もしもし」
 『小笠原造園です。申し訳ありません。うちの者が折り返しご連絡をというのを聞き逃してしまっていたみたいで…』
 いい声だ。…まだ若い?
 素直に謝られればこっちも子供じゃないのでまぁいいだろう。
 「長澤と申します。ウチの庭をお願いしたいのですが」
 『はい。是非、やらせていただきたいと思っております。それで打ち合わせにお伺いしたいのですが…』

 「打ち合わせ?」
 『はい。どういった感じがよいのかと』
 「うーん……どういった感じとか、そういう事の前に人が通れるようにして欲しいんだけど?」
 『…………あの、時間がちょっと…夜ですが今から少しお伺いしてみてもよろしいでしょうか?長澤さんは外に出られることありませんので。私が外からどんな具合か見てみたいのですが』
 仕事が早いのは大歓迎だ。

 「どうぞ」
 『では今から少しお伺い致します。それを見てまたご連絡入れますので』
 「よろしく」
 なかなかいい!
 低い声も柔らかな口調も!さてどんなヤツが現れるのだろうか?外に出なくていいと言っていたが出るでしょう。ま、きっと実物見てがっくり、だとは思うが、と勝手な事を思いながら二階の寝室の窓から外を眺めた。
 外は真っ暗で車が通ればすぐにライトで分かる。10分もしないで外に車が停まったのでいそいそと期待に胸を膨らませながら千聖は一階に降り外に出た。

 身体を屈めながら茨の道を通っていくと門扉の外に人影がある。背が高いしガタイもいいらしい。
 「…長澤さんですか?」
 向こうから声をかけられた。
 「はい。よろしければ中もどうぞ。…って言っても夜じゃあんまり見えませんけど、中に入ってきてもらえれば分かります」
 「それじゃ、すみませんが…」

 「あ、頭、気をつけて薔薇の棘が…一応今朝いくらか切ったんだけど」
 「……切った」
 「危なくて」
 千聖の後ろを千聖よりも背の高い造園業者が頭を下げながらついてくる。まだ顔はよく見えないが、体も声も好みだ。そしてやっぱり若い。
 「…………かなり伸び放題ですね」

 「だろう?明日引越しの荷物が届くはずなんだが…これじゃ通れない」
 「………明日…まずここを通れるようにだけしましょうか?午前中あればそれくらいなら…庭はまたあとで打ち合わせでもよろしいですか?とにかく庭に手をつける前に伸びきっている枝や草をどうにかしないと…」
 「お願いできるのなら是非」
 「分かりました」

 話が早い!
 そのまま玄関先に出ればやっと一息つける感じだ。
 「枝をお切りになった?」
 「ああ」
 「…折角の薔薇を…勿体無い」
 千聖は思わずむっとした。
 「怪我するだろう。ハウスクリーニングだなんだと人が出入りするのに!」

 「…そうですね。あ、ちょっといいですか?」
 背の高い男が千聖の前に立つと千聖の手を取り、携帯を出すとライトで照らして千聖の手を確認している。
 「怪我はされてますけど…大丈夫そうですね。消毒は?」
 「してないよ。そんな物もないし平気だ」
 千聖も一緒に自分の手を見ていたがふっと顔を上げると男の顔が目の前にあった。

 「小笠原 彰吾(おがさわら しょうご)と申します。こちらの庭の担当させていただきますのでどうぞよろしくお願い致します」
 「……ご丁寧にどうも。長澤 千聖(ながさわ ちさと)です。……よろしく」
 若いいい男だ。
 かなり好みだ…。姿形は。

 ……だが残念なことにノーマルだ…。千聖の顔を見て目が合い、お?という顔はしたが至ってその後も普通。少しでも自分に性的興味をもつ者の目は千聖は感づく。
 …なのに残念ながらこの男からそれを感じ取る事は微塵もなかった。性的対象に見ていない、という事だ。そこは少しばかりガックリしてしまうが庭の担当ということはしばらくこの男とは付き合いが続くのだろうか?どうせ少しでも長く見られるならいい男の方が目の保養に決まっている。

 楽しみが出来た、とくすと千聖は仄かに笑みを浮べた。

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昨日の記事にもちょっと書きましたが
おきわさんからせなゆずに出てきた会長いただきました(^m^)
まだの方はこちらから→ haku*nibi
ありがとうございます~~~m(__)m

テーマ : 自作BL小説
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