【 宗視点 】
どうしてダメだと言われなければならないのか?
そう瑞希に問われて宗は答えられなかった。
なんで?
さぁ?
コンビニはまぁいい。
だけどホストはだめだろう。
そう、ダメだ。
それしか言えなかった。
何故…?
とにかく、ダメだ。
男なんて興味なかったはずなのに、瑞希のイイ声に思わず抱いてしまった。
…思わず、だ。
早く、なんていわれて思わず先走って解すのもほどほどに早急に無理に挿入してしまって瑞希は動けなくている。
初めてだという。
確かに全然慣れてなくて、搔きだす意味も知らなくて。
それでこいつは男の方が好きなのだろうか?
絶対そうだと思ったんだが…どうも違う。
さて1千万か。
あることはあるが、稼がないと。
「コンビニは?」
「え?明日もあるけど?」
「11時~7時?」
「うん。休み中はずっとその時間」
「…分かった。じゃあ俺もそれに合わせる」
「合わせる?」
瑞希が怪訝な顔をしていた。
「お前車で行くの?」
「…………どうしよう…」
宗にぶつけてしまったからか逡巡が見える。
「駅まで乗せてって。瑞希コンビニはどこの?」
「3つ先駅」
ああ、大学の近くか。
「分かった。じゃあ帰り時間に合わせてコンビニに行くから」
「……え?あ、うん…」
「ホストは辞めとけよ?」
「…分かった」
瑞希が素直に頷いたのに思わず笑みが出た。
「洗濯、しとくか?」
「あ、うん…出来る、の?」
「ボタン押すだけだろうが」
馬鹿にしてるのか。
「料理は出来ないけどその他は出来る」
「あ、そうなの…?」
へぇと瑞希の口端が上がっている。
白い肌だ。
髪も茶色い。
似てるかも、と思ったが、でも抱いてる最中も全然桐生の事など思い出しもしなかった。
あちこち嘗め回したい衝動にかられた。
山猫は慣れたふりして買われる事を選んだ。
そう、慣れたふりだ。
まだ信用しきっているわけじゃない。
ゆっくり飼いならさないと手を引っかかれて逃げていってしまう。
それでも従順なふりをするんだ。
そして本当にたまに甘えてくる。
あの声はヤバイだろう。
男の喘ぎ声なんて気持ち悪いだけだと思っていたが下半身に熱が集中して暴発しそうになった。
壁が薄くて声が気になるらしい。
買ったんだから勿論抱くつもりだが、隣のいる時間帯を気にしなければならないだろう。
それも坂下に頼んでマンションを探してもらう事にしたからすぐに問題は解決する。
どうせ大学からは家を出てマンションで一人で暮らすつもりだったし丁度いい。
ここの駅近辺で、という所がやや引っかかるが。
怜や桐生といつ会うか分からない。
だが奴らはあんまり出かけないらしいから大丈夫だろうし、どうせそのうち紹介するつもりだ。
紹介?
なんて?
買ったと…?
なんか違う…。
恋人?
怜と桐生は恋人かと聞いて桐生が頷いた。
だが宗と瑞希は違う。
好き?
いや、好きじゃない、だろう…?
なにしろ昨日知り合ったばかりだ。
そのままなしくずしに抱いてしまっただけで。
そう、嫌悪も何も浮かばなくて、もっと啼かせたくて…。
どういう事だ?
瑞希もどういうつもりで抱かれたのだろうか?
男が欲しかったのか?
いや、知らなかったんだから…。
でも敏感な身体で自分から宗にねだってきた。
早く、と。
瑞希をそっとみた。
ダルそうにベッドに横になっている。
宗の足の腫れは大分引いたしやはり酷くはなかった。
今は瑞希よりも宗の方が元気だ。
それでも瑞希は詰ることがない。
「…何?」
眦を仄かに染めて瑞希がむっとした表情を見せた。
可愛い…。
素直にそう思ってしまった。
桐生にも可愛いなと思った事はあったが、それは怜に向けて出された表情の時だ。
瑞希は自分を見ている。
特別な感じがする。
自分は瑞希にとって初めての男だ。絶対忘れられるはずはない。
その思いが宗に笑みを作った。
「いや?可愛いな」
とても4歳上には見えない。
「可愛いは言われた事ないけど」
「何なら言われた?綺麗か?」
「まぁ。綺麗が多い」
瑞希は自覚しているらしい。
自信たっぷりに笑みを浮べた。
テーマ : 自作BL小説
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