2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

月に酔って 14

 家政婦のおばちゃんが作っていってくれたらしい雑炊を彰吾が温めなおしてくれそれを食べ終えるとまた千聖はとろりと眠くなってきた。
 本当に具合が悪くて、まだ熱があるんだ…と千聖ははぁ、と小さく溜息を吐き出した。

 そのまま意識を離そうとしたが、はたと千聖は彰吾が泊まるといっても寝る場所がないじゃないか!と思い当たった。
 余っている部屋はある。場所はあるが、予備の布団も何もないのだ。寝られるソファはあるけど、そのソファで寝てしまった千聖の結果が今の状態なのだ。それに一日外で働いた彰吾にソファで、なんてまさか…。
 そうなると、この無駄に広いベッドに?

 自分はいいけど…むしろその方が…嬉しい位だが…。普通の男は男と同じベッドは嫌だろう。
 …嬉しいといったってさすがにこうだるい体じゃいう事も利かないから意味ないけど。
 半分うつらうつらと眠りながらあまり働かない脳で考えているとすぐに彰吾が部屋の戻ってきた気配を感じた。
 「…千聖?…寝てる…?」
 「ん…寝て、…ない」
 ぎしと彰吾がベッドに腰かけたのが分かる。
 「額にまた冷却シート貼りますよ?」
 「…ん」

 ひやりと冷たい感触に千聖は顔を顰めた。さらに彰吾の手が千聖の頬から首にかけて触れるのに縋りたくなってくる。
 「熱…下がりませんね。…風呂なんて入ってるから!」
 「…大丈夫だ…。だるいだけだ…それはいいんだけど…ここんち、部屋はあるけど布団とかないんだ」
 「いいですよ。ソファあるでしょ」
 「ダメだ。…それで俺がこんな事なってるんだから。…彰吾が嫌じゃなければ隣入っていい…。いや、風邪うつるか…」

 「頑丈ですからうつる事ないと思いますけど…」
 「………すまない…」
 だめだ…。意識が沈みそう…。
 「俺の事は気にしないで寝てください…。ついてますから」

 …なんで彰吾はこんな事言うのだろうか?
 でもこう具合が悪いのに誰かがいてくれる事にほっとしてしまう。そんな事思った事もなかったのに…。
 自分でも気を張っていたのだろうか?誰かに縋りたいと思う位?
 …まさか…。
 今までだって誰を当てにもした事などないのに…。
 でも触れてくれる人肌にほっとする。思わず自分の手をそろりと布団から出し、千聖に触れる彰吾の手に触れるときゅっと掴んだ。

 さらに願うなら身体に触れて欲しいものだが、さすがにいくら欲求不満の千聖でも今は相手するのは無理だ。
 だが、彰吾の様子に少しばかり希望的観測が見える。触れても彰吾は逃げないし嫌そうではない。
 ……ただ単に千聖が具合悪いので無碍に出来ないだけかもしれないが…でも具合悪いといってもいい年した大人で男なんだからお大事に、位が普通なはず…。あ、いや…そういえば…。

 「……家に居辛いって…?」
 重い瞼をようやっと開けて薄目でベッドの端に座る彰吾を見た。
 「ええ…。ちょっとね…。家族の仲が悪いとかそういうのではないですけれど」
 「………言葉…タメでいい、って…」
 「ああ、ついクセで」
 くすりと彰吾が笑った気配を感じるとほっとしてしまう。
 「いいから千聖は寝て…。戸締りや電気もちゃんとしておきますから」

 「………わるい…」
 「いいえ。俺だってちょっと嬉しいので」
 「……嬉しい…?」
 何が嬉しいのか?千聖といられるから…なんて事はないと思うけど…ほんの少しまた期待してしまう。
 「庭を朝から見る事できますしね」

 ……そこかよ、と千聖はがっくりする。何度も庭の案を見せられて随分と熱心だとは思っていたけど、どうやら彰吾の中では千聖ではなく庭の方が上位らしい。……まぁ、当然だとは思うが。仕事を見ていれば熱心なのも分かる。でも庭以下…それでも男の自分の為にこうして面倒見てくれる位なのだからよしとしなきゃないだろう。
 「ほら…いいですから寝てください。明日もし熱下がらなかったら病院行きますか」
 「…いいよ…大丈夫…。………も…寝そう…」
 「寝ていいです」
 「彰吾も……寝て…」
 「はい。勝手に寝ますから大丈夫です」

 なんで何も知らない男を信用して泊まらせているのだろう?自分に有り得ない事だけど、彰吾がこの庭を誰より好きなのは分かった。千聖よりもずっと入れ込んでいると言っていい位なのだからその家主の千聖を裏切る事はないはず。
 だめだ…。
 薄く開けていた目が閉じていき意識が朦朧としてきた。それでも彰吾の手を離したくなくてずっと千聖は彰吾の手を握ったままだった。
 
----------------
春コミ最終お知らせ更新しました。
ご興味ある方はお知らせ用ブログの方で
ご確認くださいませm(__)m

続きに拍手コメお返事です^^
hrk様
 お姫様抱っこしすぎ~(笑)
 あ、やはり?そのまま住めと?(^m^)
 でも帰っちゃいます~^^;
 大原気に入っていただけて嬉しいです^^
 ありがとうございます~^^

tsr様
 まだ何もなってないのに甘いです!(笑)
 千聖色々反応見ながら~ですwwww
 そしてやはり住め、と…?(^m^)
 たまらんありがとうございます~^^
 エロエロ学院もありがとうございます~(大笑)
 そうなんですね~!お泊り会!書くのも楽しかったですwwww
 お知らせも早速ありがとうございます~^^
 泣くかもって~(爆笑)
 翼もそんなに…^^;
 嬉しいです~^^ありがとうございます~^^

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

電子書籍

サイトはこちら

バナークリック↓ banner.jpg

Twitter

いらっしゃいませ~♪

リンク