はのんのBL部屋

　まったく！どこの高校生だよ！

　自分に突っ込みを入れて彰吾がいなくなった後千聖はベッドに突っ伏した。

　……キスされるのかと思ってすっげドキドキした…。
　んなわけないって分かってるのに！物欲しそうな顔になってなかっただろうか？なんかなってたような気もするけど…引かれないかな…？ちょっと心配になってくる。
　…だって！触ってくるから！つい…期待してしまいたくなるんだ。
　彰吾はただ熱を確認しただけ！

　はぁ～～～…と大きく息を吐き出し、頭を抱え、そして笑い出した。
　「…マジか…？」
　欲しい。彰吾が。
　つい、いつでも来ていい、なんて言っていた。千聖的には勿論いつでも来ていいしいつでもなんでもＯＫだ。
　…自分が待つだけ…なんて。

　ちょっとゲーム感覚で自分に目を向かせるように、なんてそんな余裕なんかどこにもなく、千聖が一人で動揺してどきどきして翻弄され、あげく自分の方が夢中になってるじゃないか。
　「…何してんだろ」

　別今まで誰も好きになった事も欲しいと思った事もない。欲望さえ吐き出せればそれでよかったのに。それが男相手に、千聖に対してそんな事微塵も思ってもないヤツ相手に何を考えてるんだ。
　男同士なんて子供が出来るわけでもないのに…。
　ここは田舎でも相手探すのだったら隣の町まで行ったっていいし、もっと大きな街に出てもいいのにそうしないで大人しくここにいる。

　今日は体がまだ本調子じゃないけど、もし元気だったとしてもやはりその気は起きないだろうと思う。
　はぁ～…と溜息を吐き出して千聖は顔を覆った。



　千聖が熱を出し彰吾が泊まっていった後、仕事中は長澤さんと一応呼ぶけれど、意識しなければ千聖と呼ぶ位に彰吾とは急速に仲が良くなっていった。
　仕事の後にちょっと飲まないか？と誘えば彰吾は一度帰ってシャワーをして着替えて自分の飲む分を手にして歩いてやってくる。
　飲む場所が彰吾も言っていた通り、スナックか小さい居酒屋しかないので彰吾にとっても千聖の家は都合がいいらしい。

　色々と互いの事を取りとめもなく話したり、綺麗になっていく庭を眺めたり。ただそれだけの健全なお友達付き合いだ。
　まったくもって千聖は自分が信じられないと思うけれど、本当にただの友達のような付き合い。
　どっちかが酒に弱ければ…自分が弱ければ酔いに任せて誘ったり、彰吾が弱けりゃ飲ませてベッドに連れ込むのに、残念ながら二人共揃ってザルで、飲んでもいつもちょっといい気分になる程度だ。
　……本当に上手くいかないもんだ。

　そして知れば知るほど、彰吾が欲しいと思ってくる。キスしたい。それ以上も…。
　だが相変わらず彰吾の目にそんな気配はなくて、千聖はいい友人を演じるしかない。
　もしそんな事を千聖が考えていて引かれてしまったら？……それは嫌なんだ。ちゃんと相手してもらえるならいいけど、引かれて去られるのも嫌でどうにも臆病になっている。

　それでもつい彰吾を誘い、そして彰吾もやってくる。
　でも泊まったのは千聖が熱を出したあの日だけだ。
　それがまた男と同じベッドなんて泊まれるか、と言われているようで微妙に凹んでしまいそうになる。そういうわけでもないのだろうが…。
　話が弾んで時間が遅くなっても彰吾は帰っていくんだ。

　もう少し家が遠かったらよかったのに…歩いてでも一五分で着く距離が恨めしい。
　泊まったからといってどうしようという気も今は臆病になっていて出来そうもないのだから意味はないのだが…。
　いくらかでも彰吾にそんな気が見えたならすぐにでも誘うのに全然見えない。
　不毛だ、と思いつつもまた誘ってしまうんだから…。そして彰吾が嫌な顔しないで来るのに気をよくしてしまうんだ。
　彰吾はただ単に千聖を新しい同じ年の友人としか思っていないんだ。まさか千聖が抱いて欲しいと思っているなんて思いもよらないだろう。

　抱いて欲しい…。
　だが今の関係が崩れるのも怖いと少しだけ思ってしまう。ノーマルの男にしたら男を抱くなんて考えられない事だろう。
　「バカだ…」
　そう思ってもやっぱり彰吾を見れば心が跳ね上がるんだから仕方ない。
　ちょっとした事でも嬉しいと思うし少しずつ彰吾を知られるのも嬉しい。

　嫌なヤツだったらよかったのに…。姿形だけでよければ一度寝るだけでもよかったのに、知れば知るほどそんな関係になどしたくないと思ってしまうんだ。
　今まで誰にもそんな事思った事などなかったのに…。
　一人で勝手に色々思っても彰吾にそんな気などないならば諦めればいいのにそれも出来ない…。まったくなんてバカな…。
　……恋愛なんて…。

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続きに拍手コメお返事です^^

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学