「千聖…」
「…………ん…?」
耳元に声が聞こえたけど目が開かない。
彰吾の優しい低い声だ…。
温かい体温が傍らにあったのに千聖は擦り寄った。
「俺は仕事あるから起きるけど…千聖は寝てていいから…」
ちゅ、と耳元にキスされたのを感じた。
………なんか…声が甘く感じるんですけど…?
そう思いながらも千聖の意識はまた沈んでいった。
はっと目覚めればもう外からは鋏の音が聞こえてきていた。
…夢じゃないよな?
がばっと布団を捲くって自分の身体を確認した。裸のままはいつもの事だが、後ろに違和感が残っているのにほっとした。
いいけど…腹が調子悪い…。身体は綺麗にしてくれ、中も彰吾がしてくれたけどいくらか残っていたのか…?
千聖はガウンを着て起きだし着替えを手にそのままシャワーに向かう事にした。
のろのろと重い体でシャワーに向かう。洗面所で彰吾が唇を這わせた首の辺りや鎖骨や胸を鏡で確認すればそこには鬱血の痕が残っていて千聖はその点々と残る痕に手を這わせた。
……した、んだ…。
彰吾の熱を思い出せば千聖の身体はそれだけで疼きそうになってくる。
思い出すだけで顔が火照ってきそうだ…。
何度も…キスも…朝も耳に声が囁きかけキスしていった。
まるで恋人同士みたいじゃないか。
…違うのに…。
小さく首を振って千聖は風呂場に入る。
熱いシャワーを浴び、残滓もかき出し、すっきりとすればようやく頭も目覚めてきて一息ついてちゃんと服を着こんでから風呂場を出るとおばちゃんが掃除中だった。
「おはようございます」
「…おはようございます、ご苦労様…」
飯の支度…彰吾の分も…頼んでおいた方いいのか…?
本当に家から出てくるのか…?…確認した後でもいいか、と千聖は二階の寝室に戻って気だるい身体でベッドに腰かけた。
身体が久しぶりの激しいセックスにだるさを訴えるが心地いいものでしかない。なんといっても彰吾が激しく千聖を欲しているかのように抱いた結果だ。
コン、とノックの音がすると彰吾が顔を出した。一休みの時間になったらしく外の鋏の音は止んでいた。
「あ、起きてましたか」
「…おはよう…ああ、起きてた」
「………大丈夫…?」
そっと彰吾が近づいてきて千聖の頬に手を触れ聞いて来たのに千聖は小さく頷く。
「ああ。…腹の調子は悪かったけど仕方ない」
「?」
「中に…」
「あっ………!……そう、なんですか?」
「……そう。でも彰吾は気にしなくていい」
「分かりました。今度は中までちゃんと綺麗にしますね」
…今度があるのか?
思わず千聖は千聖の前に立っている背が高い彰吾を見上げた。
「………やっぱり…彰吾は家を出る…?」
「ええ。もう無理ですから…。今日仕事終わってからお父さんに話してきます」
「………うん」
そっと千聖はいいのかな?と思いつつ手を伸ばすと彰吾の腕に触れた。
「千聖」
そして彰吾が前かがみになって千聖の肩を抱いてきた。
「…………本当に…千聖はいい?」
よくない。本当は。
いや、彰吾が住むのはもちろん歓迎だ。ただ契約の関係と言うのがよくはない。…けれど、仕方ないだろう。
…でもじゃあなぜ彰吾はこんな優しい事をする?
「……………彰吾がいいなら…」
「では契約で」
千聖が顔を俯けながら小さく言えば彰吾が小さく頷き、千聖に軽くキスした。
好きなんだ…こんなに…。それなのにそれを告げる事は出来ず、そして契約で身体は結ぶのか…。
それでいいじゃないか。心なんて…と思っても苦しくなるだけだ。身体だけの関係でよかったはずだったのにどうしても彰吾が相手だとそれだけでは足りないと思ってしまう。
「仕事戻ります。千聖?お昼どうしますか?何か買ってくる?」
「いい。おばちゃんに頼んでみる。彰吾の分も…だから昼も…来ていい」
「………お客様の家で昼って…変ですけど…」
「……ただの客じゃない…」
「……………ええ」
ぎゅっと彰吾の腕が千聖を抱きしめ、そして軽くもう一度キスしてから千聖を離すとでは、と部屋を出て行った。
…なんだ?あれは?…どういう事?何故彰吾はあんなに優しく抱きしめる?キスする?たったそれだけの事に千聖の心の中は嬉しいと悲鳴を上げていた。
彰吾は男の身体である千聖の事が嫌じゃないのだと。
嫌だったら触れもしないだろう。
それとも住まうのに千聖の機嫌をとっているのか?
でもいい!とにかくもう彰吾は家を出るつもりで千聖の傍にくるのだ。契約でもなんでもいいんだ。彰吾を手に入れられるなら。まさか彰吾から自分の手の中に飛び込んでくるなんて思ってもいなかったのだから。
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坂崎若様宅にてけもみみシリーズうpしてます。
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これでプロローグ終了かな?(笑)…多分^^;
何も考えてないので(いつもの事ですが 笑)
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