はのんのBL部屋

　「ここの庭の仕事を元に自分でやってみろ、と…」
　「………ふぅん…？」
　「こんな田舎じゃ誰が頼む？って感じですけど…」
　はは、と彰吾が苦笑を漏らすが千聖は箸を進めるのを止め思案した。

　「なぁ？俺は専門外だから分からないけれど…デザイン？設計？それだけっていうのもアリではないのか？」
　「ありますね。大きい公園とかでもありますでしょうしね。企業や個人宅でもあるでしょうが…」
　「それならネット受注もアリだろう？…俺は自分がネット中心だからそっちですぐ物を考えるけど…それなら別にどこに住んでいようが関係ない。まぁ、彰吾にしたら自分で手がけたいのだろうけど」

　「…出来ればね…。でもさすがに一人では難しい」
　「だろうな…。ウチの見てても分かったが……ホームページ作ってやる。特別に。俺が。…あとは…ここの庭の時に出したようにシミュレイトの画像とか作れるよな…？」
　「まぁ、それは…写真とかあれば…」
　彰吾が戸惑ったように返事する。

　「…声をかけてみよう」
　「…？」
　「こういうのは俺の専門だ。任せてもらっても？」
　「ええと…？」
　「彰吾が一人でやっていくための手助けをしよう。俺にホームページ作成頼むのは結構高いんだぞ？」
　「そう、なんですか…？」

　「そう。あと色々決めて欲しい事とかあるけど…それはあとで書き出しておく。……って…勝手に進める気でいたけど…迷惑か？」
　「いいえ。庭のデザイン…なんて考えた事もなかった…」
　「それが仕事になるかどうかは彰吾のセンスだろうけど。俺から見たら絶対出来る。畑は違ってもデザインや人に魅せるという点で俺はプロだと思っている。彰吾の物は目を惹く」

　「…そうです、か…？」
　「俺が文句言った事ないだろう？」
　「でも木々に関して千聖はあまり詳しくないから…」
　「詳しくなくたって色の配置やデザインの作り方でセンスは分かる」
　「………ありがとうございます。あの、でも…なんでそこまでしてくれようと…？」
　「……………俺が……彰吾を拾ったんだろう？」

　彰吾が目を見開き、そして笑い出した。　
　「ええ！拾われました。途方もなくなってどうしたらいいかと闇の世界に放り出された気分でしたよ？…それが…ここに来て〝おかえり〟と…。引き上げられた。そして光りの道を作ってくれようとしてるんですね…」
　「…それは誉めすぎ」
　仰々しい彰吾の言葉に聞いているほうが照れくさくなってくる。

　「成功するしないは彰吾次第だ」
　「それでも…ありがとうございます」
　「それ！その彰吾の言葉遣いはいただけない。同い年なのにそれじゃあ俺の方が年上みたいじゃないか」
　「…なんとなく…。やっぱりお客様なので」
　「硬いぞ」
　くすくすと彰吾が笑ったのに千聖も笑みを浮べた。　

　「善処します」
　「全然してない」
　契約なんて本当はどうでもいいんだ…。彰吾が手に入れば…。
　でも…今は契約があれば彰吾はここにいる。そして色々雁字搦めにして離さないように…なんて事を千聖が考えているなどと知ったら彰吾は逃げ出すに決まっているだろう。

　本当は彰吾の逃げ道を全部塞ぎ自分だけに依存すればいいのにと思っているなんて…。
　でも彰吾は千聖を抱いたにも関わらず…その態度に今日も変わりがない。かえって気遣いや…朝からキスとか…。
　契約で抱いただけのヤツに…？
　今も彰吾は嫌悪を浮かべるわけでもなくさっきもきてすぐに千聖を抱きしめたのだ。

　それにどれほど千聖がほっとしたかなんて彰吾は分からないだろう。
　彰吾が自分の事を話してくれた事が嬉しいとか。
　…本当に今までの自分に当てはまらない。今までは身体の相性さえよければよかったのに…。精神的にもなんて…。
　「千聖？」
　「うん？」
　「いえ、箸進んでないですけど…？」

　「あ？ああ…」
　考えに耽って手がずっと止まっていたらしい。
　「彰吾の部屋、二階の空いてる部屋ならどこでもどうぞ。ああ、パソコンは？デスクトップなら俺の所に並べるか…」
　「なんか…色々すみませんね…」
　「別にいい」
　顔は無表情を心がけたが内心は浮かれている。

　…でもそういえば…ベッドは…？
　そっと彰吾を窺う様に視線を向けた。
　「…寝場所は千聖の隣でも？」
　「……………いい」
　こくりと息を飲み込み千聖は頷いた。彰吾の方からそんな事を言うなんて…彰吾は一体どう思っているのだろうか…？いい…のか？それとも契約だから仕方なく…？　
　…怖くてとても聞けるそうになかった…。聞かなければ彰吾も望んでるんだ、なんて甘い事を思えるから…。
　
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続きに拍手コメお返事です^^