はのんのBL部屋

　ふわ、と千聖が欠伸を漏らしたところで時計を見ればもう夜中の一時だった。
　「彰吾！明日も仕事あるんだろう？寝ないと」
　「………ああ、そうですね」
　「……あんまり急に根つめるなよ？」
　「とはいっても締め切り言われたので」
　「……………どうだ？出来そう？」
　「まぁ。今までも自分で勝手に仮想してとか…作ってたので多分大丈夫かな」

　それならよかった、と千聖もほっとした。
　「…眼鏡…似合ってますね」
　「あ？…そう？ＰＣ長く向かうなら彰吾もした方いいかも」
　「目の疲れ具合違いますか？」
　「うーん…多分？」
　くすっと笑いを漏らして彰吾が椅子から立ち上がり手を上げて伸びをした。

　「千聖もそろそろ終わりにしたら？」
　「…………まだいいよ」
　ふいと千聖は彰吾から視線を逸らし、ＰＣに顔を近づけると彰吾が千聖の傍にやってきて千聖から眼鏡を取り上げた。
　「閉じますよ」
　「ちょ！」
　「もう今日は終わりです」
　そう言いながら彰吾が千聖のパソコンを閉じてしまう。

　「…………」
　「昨夜…。あなたは飽きたんじゃないと言った。契約不履行でもない、と…。俺が嫌になった？出て行った方がいい？」
　「違う！」
　彰吾が千聖の座っていた椅子を引っ張り、千聖の前に膝を折った。

　「あなたは…今日の事でも分かるように…俺とは違う次元の人だ」
　「なんだ！？それは！？どういう意味だ！？」
　「そのままですけど…？こんな所にいるような人でもない。……それなのに何故俺なんかにこんなに…？しかも契約も…」
　「契約は破棄だ！」

　契約契約って！
　そんなつもり千聖はなかったのに！
　「……出て行けという事ですね？」
　「違うっ！」
　「しかし……千聖…？」
　千聖の顔が歪む。

　「…どうしてそんな顔を…？」
　「…出て行かなくていい…いて…いい……」
　いて欲しいんだ。
　「…彰吾が嫌じゃなけれ、ば…」
　「俺が？嫌？どうして？」
　「どうして、って！…好きでもない男を抱いてなんて…いいはずないだろう！」

　「好きですけど？」
　「………何？」
　「俺はあなたの事が好きです。千聖。あなたはそうじゃないでしょうけど」
　………彰吾は今…なんて言った？
　「……昨夜…あなたが外に出て行ったのにすぐ気付きました。ドアの開く音でね。驚いて窺いながらすぐに追いかけましたよ…。ずっと俺は拒否されてて…あなたは別な相手を探しに行くんじゃないかと思って…」

　「…そんな事しない」
　「ええ…ガゼボに向かったのにほっとしました。俺は捨てられるのかと」
　「捨てない！折角…拾ったのに…」
　誰が離すか…。
　「折角……？千聖……？」
　そっと彰吾が千聖に手を伸ばし頬に触れた。

　「触れても？」
　嫌なはずない。触れる彰吾の手に千聖も触れた。
　「千聖は…俺が触れても嫌じゃない？」
　「……ない。嫌なんて…そんな事あるはずない。それより…今…さっき…彰吾はなんて言った？」
　「どれの事です？」
　「その………俺の…事」
　こくりと千聖は生唾を飲み込んだ。あれは空耳じゃないのか…？

　「ああ…好きです。こんな事言われてもあなたには迷惑でしょうけれど…」
　「そんな…事、ない…けど………でもそれは…嘘だ」　
　「嘘？どうして？……好きじゃなきゃ男なんか抱けませんけど？…あなたに触れたい…キスしたい…」
　「嘘…だ…」
　「嘘じゃない」
　彰吾の顔が段々と近づいてくる。
　「……千聖は…？嫌じゃない…？俺に飽きたんじゃ…？」
　「ちが…う……。彰吾が……欲しかったんだ…」

　「だったらどうして…？契約破棄するなんて…？契約で縛り付けておいてくれればいいのに」
　くすりと彰吾が笑った。
　「違う！……彰吾の…全部が…ほしか…た…」
　「全部？………全部千聖のものでいいですけど？」
　「ちがう！…ちがう…っ！」
　絶対彰吾が言っているのと千聖の言いたい意味は違うはず！

　「何が違うんです？」
　彰吾の唇が触れそうな位近くにあった。
　「身体だけ…じゃなく…て…契約…じゃなく…て…」
　「………………どういう意味？」
　「好きなんだ！…彰吾が…だから…契約でなんか…」
　「契約の為だけに俺があなたを抱いてると思ってた…？…まさか！」

　くすと笑って彰吾が千聖に軽くキスした。
　「契約だけでキスしたいなんて思いませんけど？」
　キスが優しいと思っていたのは間違いじゃなかった…？
　「…彰吾」
　千聖が目の前の彰吾の首に腕を回してがばりと抱きつくと彰吾が貪るように激しくキスを求めて来た。

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続きに拍手コメお返事です^^