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月・雪・花 おまけ

 『え~?口に出しては言わないけど~。誰でも怪しいって思ってるよ~』

 彼氏が出来て何故か知らないが彰吾によりも千聖にメールや電話が多くなった彰吾の妹エリカちゃんにちょっと疑問だった事を聞いてみた。
 「…怪しい?」
 『だってもう何年もお兄ちゃんと男二人暮らしで~、おまけに千聖さん綺麗だし~!そりゃあねぇ~。いくら田舎だってアレ?っと思うと思うよ~。お父さんもいつだったか酔っ払ってそんな事言ってたもん』

 「え!……」
 『え…って』
 あはははと電話口でエリカちゃんが笑っている。
 『お見合いだなんだってお兄ちゃんも言われないでしょ?』
 「…らしいね」
 『だってお兄ちゃんわりとあからさまだよね。千聖さんがちょっとけ躓いたってすぐ抱きとめてるし!妊婦でもないのに!』

 ちょっと待て、と千聖はかぁっと顔が赤らんでくる。
 『千聖さんはあんまり外出ないからね~。そこまで知られてるってほどでもないと思うけど』
 「…………どうしよう…」
 『え~…別にいいんじゃない?ビジュアル的にキモかったら見るのもヤだけどぉ…知らんふりしてれば?』
 「でも彰吾のお父さんにも…」
 『あ~…まぁ、でもいいんじゃない?跡取りは私が作るから気にしないで。って…ああ、お兄ちゃんは別に血繋がってないし関係ないか』

 ………あの一時期の千聖に向けての嫉妬はなんだったのだろうか、と言わんばかりのあっけらかんぶりだ。やっぱり女という生き物は…信用ならない。
 『千聖さん、もちょっと外にお兄ちゃんと出かければ?千聖さん見れば納得されると思うけど?』
 「納得?」

 『だって!ありえない位綺麗なんだもん!あ、そうそう!お兄ちゃんもてるよ?近辺の結婚してない独身女は皆お兄ちゃん狙ってると思って間違いないよ?』
 「何!?」
 ぴき、っと千聖が眉間に皺を寄せた。
 『正式なお見合い話はないけど、その前段階のお伺いの話はいっぱい来てるよ?』
 「………………」

 そうなのか?
 「………情報ありがとう」
 『どういたしまして~!千聖さんがんばってね~』
 じゃ、と電話が切れた。
 

 「彰吾、買い物一緒行く」
 「……どうしました?珍しい!いいですよ!いきましょ!」
 家にばっかり引きこもっている千聖に彰吾はいつも誘ってくるけど滅多に一緒には出かけなかったが、確かめる必要がある。
 スーパーになんか行った事なかったがそれも彰吾と並んで買い物。大体は朝起きるのが遅いので朝昼兼のブランチが多く、それは彰吾がささっと用意してくれていた。夜ご飯は彰吾の分も一緒に家政婦さんが来る時は頼んでいる。

 「いっつも俺適当に買ってましたけどよかった?」
 「うん、別に食べ物にこだわりはないからそれはいい。ただ……彰吾、ちょっと甘いものが食べたいな」
 久しぶりに来たスーパーで千聖の目に入ったのはスイーツの棚だ。
 「…スイーツ?」
 「………うん」
 くっくっと彰吾が笑い出す。
 「どれ?」

 「…チョコケーキ」
 「………千聖……やばい…かわい………知らなかった…」 
 そういや全然甘いものも食べてなかったんだ。
 「千聖は甘いものは好きじゃないのかな?と思ってたんですけど」
 「………どちらかといえば好き…かも…。自分で買いにくるほどじゃないが…」
 彰吾が肩を揺らして笑っている。

 そして周囲をちらっと千聖が確認すればちらちらと視線が向けられ、見られているのは分かった。
 うっすらと笑みを浮べながら千聖が頭を下げるとキャーと小さな悲鳴が起きる。
 「…千聖、何してるの?」
 「偵察」
 「……………偵察?」
 彰吾が頭を傾げている。

 「それより彰吾…」
 わざと彰吾の袖を掴んで彰吾の顔に千聖が顔を近付けるとまた悲鳴。
 「千聖?」
 「………これから買い物一緒来る事にする」
 「そりゃいいですけど…」
 レジでも千聖は笑みを巻き散らかす。

 「………一体何がどうしたんですか?」
 車に戻って彰吾が面白くなさそうに聞いて来た。
 「だって!エリカちゃんに聞いたんだ!」
 「何を?」
 「………近辺の女が皆彰吾狙ってるって」
 きょとんと彰吾が目を見開いた。 
 「………は?………もしかして…牽制だったんですか?」
 「そう」
 そしてまた彰吾が笑い出した。

 「一体どうしたのかと思ったら…俺は気が気じゃなかったのに!あんまり女性に愛想ないあなたがどうしたのかと思って!鞍替えされるのかと」
 「そんな事は一切ない!」
 「……俺もないんですけどね。千聖は少しでも外に出て一緒に…とも思うけど…うーん…今日の見て複雑な気も……絶対あなたを好きになっちゃう人出てくる」

 「ない」
 「いえ、なくないと思いますけど…ま、いっか…俺が一緒いればいい事だし」
 「ん…」
 それだったら彰吾に近づいてくる女もいないはず。
 「………ほんと可愛い」
 くっくっと彰吾は家に着くまでの車の中でもずっと笑いっぱなしだった。


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お疲れ様でした~^^
これでおしまいです~
明日からまた新作に入ります^^;
88pです~
いつもありがとうございますm(__)m
そして明日からもよろしくお願い致します^^/
 

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