はのんのBL部屋

　3時間目。
　落ち着かなくてそわそわしてしまう。
　授業はちゃんと聞いて！ノートも取って！
　…でも気がそぞろだ。
　心臓の音がますます大きくなってきて授業中に何度も何度も深呼吸を繰り返した。
　唇が渇いてくるしなんかもう倒れそうかも。

　授業終了のチャイムがなってこくんと日和は息を飲み込んだ。
　誰も先生のとこに行かない。
　よし！
　先生が教科書とか持って教室から出て行こうとしたのを後ろから自分の教科書を手にして質問するふりをして日和が追いかけた。

　「つ、月村…先生…あのっ…ちょっと……いいです、かっ…？」
　教室を出たばかりの廊下で声をかけたら先生が振り返って日和を見ると大きく目を瞠った。
　「………質問？」
　「…いえ…あの……ちが…う……あの…先生の…お母さん…から…」
　小さく声を絞り出すように日和が言うと先生が一歩日和の方に近づいて日和の質問のふりのカモフラージュの教科書を手に取った。
　「あの…大切な話…あるから…今日…来なさい…って……伝えてって…朝…家出る時…に会って…だから…その…」

　ドキドキがっ！
　先生が顔を近づけてきて日和の顔をじっと見つめたのに心臓がもう口から飛び出しそうになっている。
　「メールも返してなかったからな…」
　先生が苦笑を浮べた。
　「ありがとな…ひよ」
　ぎゅうっと日和の心臓が掴まれた様に苦しくなった。

　ひよって！呼んでくれた！
　小さい小さい声で！誰にも聞こえないように！
　………泣きそう…。
　「分かったって言っといて」
　「………うん」

　声が近い！顔も近い！
　先生がぱたんと教科書を閉じて日和に返してくれて会話は終了し、そのまま先生が日和に背中を向けて廊下を行ってしまう。
　日和はその先生に返してもらった教科書を胸にぎゅっと抱きしめて先生の声を噛み締めながら教室の自分の席に戻った。

　よかった…。
　話しかけるな、とも言われなかった！
　ひよって…呼んでくれた。
　心臓が苦しい！
　さっきまでは緊張でずっと息苦しい感じだったのに今はもう全然違う感じで舞い上がってしまいそうになって、そして心臓が鷲掴みされているように苦しいんだ。
　こんな風になるのも先生だからだ！

　「高宮？……月村に…質問？」
　「え？あ…う、うん…」
　どうしよう？まだきっと顔が赤くなってるかも。心臓もまだ落ち着いてない。
　だって先生が近かった。距離も声も！
　戸田が不思議そうに日和を見ているのにちょっとうろたえてしまいそうになる。

　「…高宮って…」
　「な…何？」
　「…あ、いや…なんでもない…。なぁ、高宮、本いっぱい持ってるって言ってただろ？どんなの？俺でも面白そうなのとかあるかな？今度貸して？」
　「僕は色んなの読むよ。いっぱいあるし貸すのはいいけど…戸田の家どこ？遠いのかな？遠くないなら家に来て戸田が面白そうなの選んでもらった方いいかも…」
　「え！？高宮んち？行く！」
　戸田が即答した。

　「今日は！？俺暇だし！」
　「僕もいいけど…」
　そういえば友達を家に呼ぶのも初めてかも…。
　「やった！」
　そして住所を聞けば意外と家が近かったのに驚いた。
　「なんだ！自転車で行ける距離じゃん！」
　「そうだね…。ビックリした」

　学区がちがったから中学校が別だったのか。もし、中学校で戸田が一緒だったらもっと違ったかな…とちょっとだけ思ってしまう。
　でもこうして高校で友達になれたんだからいいや！
　「じゃ今日高宮んち、いい？」
　「いいよ」
　「へへ～！楽しみ～！じゃあ今度は俺んち来いよ」
　「……うん」

　小中学校の時だって友達は一応いたけど家を行き来するような仲のいい友達は出来なかった。
　どうしても日和は自分から話せないし言いたい事も引っ込めてしまうのでそこまで仲良くなれなかったんだと思う。
　戸田は自分から言ってくれて日和はそれに合わせているだけなんだけど、押し付けがましくないのに上手く戸田は日和が話しやすいようにしてくれてると思う。
　「…戸田と友達になれてよかった」
　「お？ホントにそう思う？」
　「思ってるよ？」

　「よし！しょうがないな！遊びに行ってやるよ！」
　「別に頼んでないけど…」
　「何？戸田、高宮んち行くの？俺も～！」
　「だめだめ！テメーはいいんだよ！」
　ほら、こんな風に声かけられるのも戸田のおかげだ。
　今日はすご～～～～～くいい日みたいだ。

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続きに拍手コメお返事です～^^