はのんのBL部屋

　戸田と一緒に帰り道を歩くのは変な気がする。
　日和はバス通学で乗り換え。聞けば戸田も同じだった。
　「なんだよ、同じかよ」
　「…びっくり」
　今まで戸田は朝は早くに学校に着いてて日和は遅めだったので会わなかっただけらしい。放課後も日和は先生の顔を一目見るまで帰らなかったので時間がずれていたのだろう。
　「どうぞ」
　「おじゃましまーす」
　「誰もいないよ」
　「ま！一応な！」

　玄関で靴を脱ぎながら戸田が挨拶するのがえらい。
　そして階段を上がって戸田を日和の部屋に案内する。
　「うわ、まじで本棚に本ばっか！」
　「でしょ？見てて。なんか飲み物もってくるよ」
　「へ～い」
　部屋に戸田を置いて階下へ。
　コップに飲み物を入れてもう一度二階へ上がっていく。

　「なぁ、高宮、これは？面白い？」
　「え？あ、それは映画化されたやつの原作だから面白いよ」
　「じゃコレ貸して」
　「いいよ」
　「…こっちも気になるけど」
　「ああ！それも一気読みする位面白かったよ？重くないなら持っていっていいよ？」
　「まじ？じゃ借りる！……しっかしホント本ばっかだな」
　「うん…僕あんまゲーム得意じゃなくて…」

　現実逃避するのに本を読んでたんだ。
　特に中学校時代は…。
　「高宮？」
　「え？あ、なんでもないよ。ああ、他にも読みたいようなのあったらチェックして？いつでもいいよ？」
　「お、サンキュ！小説ばっかだな？漫画読まねぇの？俺漫画なら持ってるぞ？貸す？」
　「…うん」
　漫画はすぐに読み終わっちゃうから長く逃避できる小説が多くなってたんだけど。
　今は逃避する事もないのでいいかな…。

　「家覚えたから今度はチャリで来られそうだ」
　「…僕は自転車は無理かも…」
　「高宮は体力なさそうだもんな！」
　「戸田は背も高いし…運動部入らないの？」
　「中学ん時はサッカーしてたけど俺そこまで上手くねぇし。高校のサッカー部キツイって！」
　「……そっか。勿体無い気もするけど」

　狭い自分の部屋に友達といるってなんか変な感じ。
　ここに入った事あるのはおにいちゃんだけだったのに…。
　「あの…僕…ホントに戸田と友達になれてよかった…って思ってる…」
　「ん？ああ、今日学校で言ってた？」
　「そう…。あんまり友達っていないから…」
　「高宮おとなしいからな…。俺ウザくね？」
　「全然」
　自分でウザイという戸田に思わず笑ってしまう。

　「ならいっけど！」
　そこから飲み物すすりながら他愛もない話。もうすぐテストだから範囲がどうとか、色々ななんて事ない些細な事。
　話しているうちに時間があっという間に過ぎた。
　戸田が色々話題をふってくれるから気まずいこともなくてずっと笑いっぱなしだった。
　「高宮の親ってまだ帰ってこないの？」
　「もうそろそろだと思う」
　「じゃ、俺帰るよ。…また来ていい？」
　「勿論」
　階段を下りていくとちょうど母親が帰ってきた。

　「あ、お邪魔してます！同じクラスの戸田です」
　「…お友達？」
　「そう」
　日和が笑って頷くと母親が安心した顔をした。
　「戸田くんまた遊びに来てね」
　「はい」
　「僕途中まで送ってくるね」
　一緒に家を出て、そういえば先生に先生のお母さんに分かったと言っておいて、と言われた事を思い出した。

　「あ、戸田、ちょっと待って！隣に用事あったんだ！」
　慌てて隣の家のインターホンを押してちゃんと先生に伝えて分かったと言ってた、と伝える。
　「ひよちゃん、ありがとう」
　玄関で先生のお母さんが手を振っていた。
　戸田の所に戻るとぷぷっと戸田が笑ってる。

　「ひよちゃん……。……可愛い…」
　「…………」
　ぷっと日和が口を尖らせる。
　「ひよちゃん、ひよ…」
　「ダメ！」
　「え？」
　思わず強い口調で日和は戸田を制止した。ひよって呼んでいいのは先生だけだ！

　「名前…好きじゃないから…」
　「名前も日和って可愛いもんな」
　「………可愛いって嬉しくない」
　「高宮も一応男の子なんだ？」
　「一応もなにも！男ですけど！？」
　「ああ！だよな！わりわり！」
　戸田がくすくすと笑ってる。

　「戸田に比べられたらそりゃちっさいし！わかってるけど！」
　「うん。かわいいよ？」
　「だから！嬉しくない！」
　「誉めてんのにぃ」
　「誉めてない！」
　可愛いは嬉しくないけどでもそんな軽い感じで言われるのも遠慮がないようで嬉しいと思えるんだから、初めてのちゃんとした友達に日和は浮かれているのかもしれない。

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続きに拍手コメお返事です^^