はのんのBL部屋

　学校を出て車に乗り込むと瑛貴は自宅へと向かった。
　ひよが…伝えにきてくれた。
　ちゃんと言葉を交わしたのは何年ぶりだろう？
　…大きくなった…。
　瑛貴が逃げるようにして大学を理由に自宅を出た時、日和はまだ小学校3年から4年になる頃だ。

　後から日和が毎日泣いてたと聞いて何度帰ろうかと思ったか…。
　でもそれじゃダメだと無理して帰らず、結局そのまま地元に帰ってきても一人暮らしして自宅にはほとんど帰っていない。

　ひよに会うのが怖かったんだ。

　自宅に戻る時はひよが外に出ないような時間を見計らってこそりと帰ったり。
　それが今年の新入生でひよの名前を見つけたときは驚いた。
　そして入学式でひよを見た時も。
　信号で止まった車の中でハンドルに腕をかけて頭を抱える。
　毎日毎日ひよが中心だった。
　可愛くて…。

　中高生で幼稚園小学校の子の相手なんてよくしてたもんだと思うけど、ひよが特別だった。
　ダチには弟でもないのに、と笑われたりしたけどバカにされてもひよが待ってるのを思えばさっさと帰ったもんだった。
　このままじゃ自分はおかしくなりそうだと思ったのはひよが小学校に入った位の頃か？
　結婚出来ないと泣いたりしてたひよがどうして？と、好きなのに、と…。
　子供の言葉なのに…。

　ひよは我儘も言わないし、おとなしいし瑛貴のいう事を素直に聞くし、本当に食べたい位可愛かった。
　多分実の弟がいたとしてもきっとひよの方が可愛いと思ったはずだ。
　そのひよが大きくなって、高校生になって…瑛貴の前に現れた。
　……でも相変わらずちっさいけど。
　思わずくすと笑ってしまう。
　可愛いのも変わらない。

　目をくりっとさせてじっと瑛貴を見ている。
　ひよは小さかったし瑛貴の事を忘れているんじゃないかと思ったけど…忘れてなかったらしい。
　ひよ、と呼んだら泣きそうな顔になった。
　そのひよの表情を思い出してぐっと拳を握る。

　もう高校生だ。…ちょっと背は小さいけど。
　自分なんかといるより友達とかといた方がいいだろう。
　それにあの時の約束なんてひよはもうとっくに忘れているはずだ。
　なにしろまだ小学校1年の頃だ。
　自分だって小学校の頃の記憶なんて断片的にしか覚えていないんだ。

　信号が変わって瑛貴はアクセルを踏んだ。

　「やっと来たわね！」
　玄関を開けると母親が待機していた。
　「大事な話って？」
　「まったく！こっちが電話してもメールしても出ないくせに！ひよちゃんに言ってもらえば一発で来るし！」
　「………帰るぞ」
　「ダメダメ！あんたにお見合いの話が…」
　「いらねぇ。結婚なんかする気もない」

　「だから～～～！それじゃダメでしょ」
　「ダメじゃない。ないものはない。じゃ、帰る」
　「もう！ご飯位食べていけば」
　「お見合いの話なんかしないならな」
　「……まぁ、あんたがそう言うのは分かってたけど」
　分かってるならするな！…と言いたいとこだ。

　「ひよちゃん可愛いよねぇ」
　「………まぁ」
　「今日お友達来てたみたいよ！初めて見た！ひよちゃんがお友達といるとこ！…ほんとよかった…」
　母親がしみじみ言うのに瑛貴は頭を傾げた。
　「友達ってどんなヤツ？」
　「背高くて、スポーツ少年！って感じの爽やかな子かな」

　…戸田か。日和とは席が前後で仲がいいみたいだが…。

　「中学校の頃の事考えれば…ほんとよかった。あんたちゃんと学校でひよちゃんの事見ててよ？ひよちゃんのお母さんもあんたが学校にいるって知っててすっごい安心してるから」
　「………？……なんで？」
　「あら…？言ってなかったっけ？ひよちゃん中学校の時ちょっとイジメにあってたから…」
　「………なに？」

　いじめ？

　思わず瑛貴が眉間に皺を寄せた。
　「…けっこうね…ひよちゃん…学校行きたくないって登校拒否になりかかったりして…。それでも一部の子だけで他の子とかはひよちゃん庇ってくれたりしてどうにか行ってたみたいだけど。ひよちゃんのお母さんも色々悩んでたもの。…それがお友達連れてこられる位に……ってあの子は大丈夫なのかな？ひよちゃんに比べて随分身体も大きかったけど」
　「…多分大丈夫だと思うが…」

　ひよにそんな事が…？
　自分が逃げている間に…。
　「…ちょっとひよのとこ行って来る」
　「どうぞ～」
　会ってどうするんだ？
　今更…。
　でも…。

　……自分がいればひよを守ってやったのに。

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続きに拍手コメお返事です^^