はのんのBL部屋

　「学校は？楽しいか？勉強は？」
　「楽しいよ…。勉強はちょっとキツイ…。僕無理して入ったから…」
　「無理？」
　「うん…ぎりぎりで受かるか分からないって言われてた…」
　でもせんせがいたからそれでも凄く頑張ったんだ。

　「高校位なら理系でも俺もわかるかな…キツイ時は言えよ」
　「…………うん」
　言ったら教えてくれるの？特別に？
　「せんせ…」
　「………やっぱセンセやめにしないか？なんかな…」
　「…おにいちゃん」

　「いや、だからそうじゃなくて。瑛貴だろ」
　分かってるよ！そんなの！
　「…瑛貴…くん…」
　「くん…ってのも…でもまぁひよのお母さんもそれだからいいかな。もっかい」
　「…瑛貴くん」
　小さくなって聞こえるか聞こえないか位の声で日和が言えばせんせが頷いてる。

　「…瑛貴さん…？」
　年がずっと上なのにくんはおかしい。
　「さんも他人行儀だな…ひよはずっとひよだけど。うーん…」
　「瑛貴くん…」
　「…やっぱそれでいっか…。おにいちゃんとせんせはなし」
　「…慣れない…」
　「慣れる位呼べば？」

　いいの？
　ぱっと日和が顔を上げるとせんせ…じゃなくて！瑛貴くんがくすっと笑った。
　「瑛貴くん…」
　「…今日友達来てたって？うちの母親が言ってた」
　「うん。戸田が…来てた。本貸してって」
　「………随分小説あるな？」
　「うん」
　瑛貴くんがいた時にはなかった本たちで、日和の現実逃避先だ。

　「……ひよ…大きくなったな……背はまだ平均より小さいけど」
　「……うん」

　もう分かるよ？
　好きもキスも。
　やっぱり…好きだ。だって今日戸田といた時は全然なんてことなかったのに、今はこんなに落ち着かないし、心臓うるさいし、頭の中もおかしいけど、顔が熱くなったり体も熱くなったり色々忙しい事になっている。
　ただの緊張じゃないよね…？

　「……もう」
　瑛貴くんが日和を見ながら口を開いた。
　「どこもいかないから…」
　「…………ホントに…？」
　また日和の顔が歪んでくる。
　「置いてかない…？…僕…ずっと、ずっと…待って、た…」
　「…また泣く」
　「だって…」

　「ああ…俺が悪かった。ひよ…」
　また泣き出してしまった日和を瑛貴くんはよしよしと頭を撫でてくれる。
　「ひよ…ひぃ……泣くな…」
　日和の頭を抱えて優しく名前を呼んでくれるのに離れたくなくて抱きつく。
　「やだ…いなくなるの…やだ…見てくれないの…呼んでくれないのも…」
　「………一緒いたの…何年も前の事なのに」

　せんせ…瑛貴くんは嫌だった？だから…いなくなった？
　でも聞けない。
　「もういなくならないから、ひよ」
　…今こう言ってくれて頭も撫でてくれて名前も呼んでくれればそれでいいや…。
　「…うん」

　嬉しい…。
　朝、おばさんに伝えてって言ってもらえてよかった。学校で話かけられてよかった。

　「瑛貴くん…」
　…好き。
　大人になっても日和がまだ好きだったら考えるって言ってくれたの覚えてる？
　でもそれを言って、もし瑛貴くんが嫌だと思ったら…またいなくなっちゃう？
　ううん、いなくなんなくても昨日までの日和を見てくれない瑛貴くんに戻っちゃう？

　……だったら言わない方がいい。
　こうして名前を呼んでくれてよしよししてもらえるなら。
　きっと瑛貴くんにとっては日和は小さい頃と何一つ変わってない子供のままなんだと思う。
　だから高校生にもなってるのにこんな小さい子にするような事もしてくれるんだ。
　…だったらそれでいい。
　置いていかれるより、いなくなるより、名前呼ばれなくなるより、ずっとこのままでいい。

　「泣きべそはそのままか？」
　「……違うもん…。瑛貴くんの前だけだもん…」
　ぎゅっと瑛貴くんの腕が日和の身体を包んでくれるのにすごく安心した。
　優しい腕も声も手も前とどこも変わらない。
　ただものすごく大人で大きかった瑛貴くんが今は普通に大きい位に感じるのに自分がそれだけ育ったんだ、と思う。

　瑛貴くんに言わせれば背はちっさいけど！
　でも子供のサイズでは一応なくなってる。
　背は瑛貴くんの足とか腰とかまでのサイズしかなかったはず。
　今は頭一つ分位？

　「ひよ…」
　何度も日和を安心させてくれる為なのか名前を呼んでくれる。
　ずっと寂しくて寂しくて泣きっぱなしだった日和の心の中がほんわりと温まった。
　こんな思いを与えてくれるのも瑛貴くんだけなんだ。

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続きに拍手コメお返事です^^