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2014.04.09(水)
ひよが何度も泣く…。
泣きやんではまた顔を歪めて。瑛貴が名前を呼ぶたびに目を潤ませて。
……そんなに…待ってた…?
寂しかったと、待ってた、とひよが言うのに自分がひよから逃げていたのを悔やむ。
ひよから逃げ出して……一回逃げ出したら怖くなって戻れなくなった。
そのくせ大学を終えて戻ってきたのは地元で、気になったのはひよの事だった。
ひよはもう自分なんかいらないはず。
そう思っていたのに…。
待ってたと、ずっと…。
高校も無理してって…もしかして俺が戻ってきて教師でいたからなのだろうか?
追いかけて…?
ひよと向き合ったらもう離せなくなるだろうとは思っていた。
だから学校でも頑なにひよの事を見ないようにしていたのに、…こんな風に泣かれたら…。
ひよがぎゅうっと瑛貴のシャツを掴んで離さない。離したらいなくなるとでも思っているかのように。
「ひよ…」
泣きじゃくるひよの耳元で何度も名前を呼んだ。
ずっとひよは一人で泣いていたのだろうか…?
まさか中学校で登校拒否になりそうなくらいの事になってるなんて…。
今日それをはじめて知ってひよから逃げた自分を呪った。
泣き虫のひよは毎日一人で泣いて我慢してたのだろうか…?
ひよは小さい頃から大人しくて身体も小さくてよく身体の大きい子に意地悪されたりしていて幼稚園や学校から帰ってくると泣いてた。
その度に抱いてよしよししてやってたけど、まさかそれがエスカレートしてるとは思ってもなかった。
仲のいい友達もいてきっと自分の事なんて忘れてるはず。…そう思っていたのに。
置いてかない?いなくならない?…なんて言われたら…。
……ひよと向き合ってしまったら離せなくなるのは自分でも分かってたはずだ。ずっと小さい頃から可愛くて仕方なかったのに。だから避けていたのに。
それなのにひよから近づいてくるんだから…。
ひよはただ小さい頃の感覚で甘えたがってるだけだ。
小さいひよにも疚しい思いを抱いた自分とは違うんだ。
必死に自分に言い聞かせて全部を我慢するしかない。
高校生になったといっても3月生まれのひよはまだ15歳だ。
4月生まれの自分とは10歳も年が違う事になる。
それでも…小さい子供だったひよが大きくなった…。
もうキスの意味も結婚の意味も知ってるはず。
瑛貴がしたキスは覚えていないだろうとは思うけれど…。
いくら女と付き合っても、寝てもひよの事がいつでも頭の片隅にあった。
これからはひよが…辛い思いをしないように見守っていけばいい。
待ってた、と言ったひよが…泣いて縋ってくれるならそれでいいだろう。
今までひよについていてやれなかった分これからのひよを守ってやればいい。……甘やかしてやりたい。ひよが必要と思ってくれるなら。
何度も泣くたびにひよの大きくなった身体を抱きしめ頭を撫で名前を呼んでやる。
ひよの手がぎっしりと瑛貴のシャツを掴んで頭を擦りつけ存在を確かめるようにしているのに不埒な事を瑛貴が思っているなんてひよは考えてもいないだろう。
小さい子供の時にも我慢出来なくなってキスしたのに育ったひよにどれ位我慢が利くのか…。
…ひよが怖くなって逃げた罰だ。
「ひよ…ずっといるから…なにかあったらすぐに言えよ?」
「……なんでも?」
「ああ。なんでも。俺はいつでもひよの味方だから」
今まで放置してたのになんて都合のいい事を言っているんだ。自分でもそう思うのにひよは泣き笑いを浮べる。
「嬉しい……瑛貴くん……」
ぐりぐりとひよが瑛貴の胸に頭をこすり付けてくれば離したくなる自分ともっと抱きしめたくなる自分がいる。
ひよは子供の時の延長なんだ!と必死に瑛貴は自分に言い聞かせる。
きっと小学校4年に上がるころからひよの中では瑛貴の存在は変わっていないのだろうから。
離れていた分瑛貴に対しての感情も態度もそこでひよは止まっているはずだ。
おいおいにこういう事はもうしちゃだめだと言い聞かせていかないと瑛貴が大変な事になりそうだ。
今日は今までひよが我慢していた分を受け止めてやらないといけない。…いやこれは言い訳だろうか…?
「ひよ…ひぃ…」
よしよしと何度もひよの頭を撫で背中を摩ってやる。
…ほら、もう離せないだろう。腕の中にひよの存在を感じれば独占欲が沸いてくる。
だから離れていたのに…。もうダメだ。
いや…隣に越してきた時からずっとひよに掴まっていたのかもしれない。瑛貴は足掻いて一回逃げ出したけど…。
どうしたらいい?ひよを捕まえてもいいのか?それともひよを逃がしたらいいのか…?