はのんのBL部屋

　「そろそろ行くよ」
　もう！？
　瑛貴くんが日和の身体を離したのに離れたくない！と思ってしまう。いなくならないって言ったけど…でもまたひよって呼んでくれるかどうか分からないじゃないか。
　学校でだって瑛貴くん、だなんて呼べるはずないし、こんな風に近くにいられることだって出来ないのに。

　「ひよ、携帯持ってる？」
　「え……あ、あ、あるっ！」
　瑛貴くんに聞かれて日和は慌てて携帯を取り出した。
　「俺の番号言うから」
　瑛貴くんの！？
　「う、う、うんっ」
　言われる番号を入れて、メアドも入れて。反対に今度は日和から電話をかけて空メールを送る。

　「いつでもかけてきていい。メールも。」
　「…ホントに…？」
　「ああ」
　繋がった！
　今までは学校で見てるしか出来なかったのに！

　「嬉しい！」
　「……………相変わらずひよは可愛いな」
　可愛い？
　戸田に可愛いって言われた時は面白くなかったけど瑛貴くんに言われるのは嬉しい！やっぱりずっと瑛貴くんは日和の小さい頃から知ってるしどうしたって日和の方が子供なのも分かってるから可愛いと言われたって仕方ない。それに子供の頃から言われてたし…戸田に言われるのは面白くないけど瑛貴くんに言われるのは嬉しいにしか感じない。

　「瑛貴くん…自分のアパートに帰る、の…？」
　「ああ」
　なんだそっか…。お隣にはやっぱりいないのか…。
　ちょっとしゅんとしてしまう。隣に住んでたなら学校帰ってきてからだって会えるのに…。
　「今度来るか？」
　「え？…瑛貴くん…の部屋…に？……いいの…？」
　「いいよ」

　何がどうしてどうなったんだろう？
　今日の学校までは全然顔も見てくれない位だったのに、なんで今はこんなに？
　だったら今まで話しかけるの我慢しないで話かければよかった！
　「今度な」
　「……うん」

　嬉しい。
　日和が笑うと瑛貴くんが日和の頭を撫でてそして座ってたベッドから立ち上がった。
　「目、冷やしとけよ？」
　「……………うん」
　明日も学校で会える。
　日和の部屋を出て行く瑛貴くんの後ろを追いかけて日和も階段を降りていく。
　来てくれたのが嬉しいけど…帰っていくのが寂しい。

　「夜分にすみませんでした」
　玄関で靴を履きながら見送りに出てきた母親に瑛貴くんが挨拶していた。
　「いいえ！いいのよ。いつでも来てちょうだいね！それと日和の事お願いします」
　「勿論です」
　瑛貴くんが頷いたのを見て母親がほっとしたような顔をした。
　中学校の時は随分心配かけてしまったから…それも分かる。

　「じゃ、ひよ、明日学校でな」
　「うん」
　ばいばい、と玄関で手を振って瑛貴くんは帰っていった。
　そのままばたばたと二階にあがって日和はベッドにダイブする。

　来てくれた！ひよって呼んでくれた！部屋にもいっていいって！携帯も！
　嬉しくてどうにかなってしまいそうだ。
　ずっとずっと学校でも見てるしかなかったのに今日一日でこんなにまた近くなった！
　前みたいに一緒にいられるかな…？
　毎日一緒は無理かもしれないけど、でも昨日までとは絶対違うよね？

　携帯を出して入れたばかりの瑛貴くんの番号を眺めた。
　名前で入れたけど、万が一誰かに見られたらまずいのかな…？
　どうなんだろう…？
　一応…変えてたほうがいい？
　名前を消しておにいちゃん、で入れておく。これだったら誰も分からないはず。

　見られる事なんてないとは思うけど。
　学校の先生をしてる瑛貴くんに迷惑になるような事になってもいけないし。
　日和だけが分かっていればいい事だ。
　でも呼ぶのはおにいちゃんじゃなくて、先生じゃなくて、名前で…って。

　「瑛貴…くん…」
　慣れないけど…、慣れるくらい呼べば？って！
　慣れる位呼んでいいってことだよね？
　ホントに今日はどうしちゃったんだろう！？
　どうして急に！？
　いなくなったのも急なら接近も急だ！
　ここについさっきまでいたんだ。ひよって呼んでくれて頭撫でてくれた。
　日和は一人でベッドで悶える。

　おにいちゃんは相変わらずやっぱり大きかった。優しかった。
　そして日和の事は可愛いって。
　相変わらずって事はずっと可愛いって思っててくれたって事だよね？
　嫌われてたんじゃない？
　…よかった。

　顔がどうしても締まらなくてふにゃっと弛んでしまう。だって…。嬉しいから。
　どこもかしこも嬉しくて、夢じゃないよな？と自分のほっぺを叩いた。
　「あ、目…冷やしておかないと…」
　大泣きしてしまって目が腫れぼったい。
　この年で人の前で大泣きとか…恥ずかしいけど…瑛貴くんの前だからだ。

　ひよ、と呼ばれた声と手を思い出し日和はベッドで布団に抱きつきながら一人悶えてしまう。
　だってまさか来てくれるなんて思ってもなかった。いっぱいひよって呼んでくれて抱っこしてくれて頭撫でてもらって、それにアパートにも行っていいって…。
　ちょっと熱くなったままの頬っぺたをもう一度自分でぺちぺちと叩いて確認する。
　やっぱり夢じゃないみたい…。
　しばらく一人でじたばたと日和はベッドで悶えていた。

---------------------
続きに拍手コメお返事です～^^