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2014.04.11(金)
瑛貴くんがどう、じゃなくて!
そう…。自分が…だ。
日和はやっぱり好きだと思う。一緒にいたいと思うし、名前を呼ばれるのも、頭を撫でられるのももっといっぱいして欲しいって思う。
こんなに気になるのも瑛貴くんだけだ。
小さい時から一緒で途中7年も会えなかったのにそれでもやっぱり瑛貴くんが…。だって昨日分かったもん。
名前呼ばれるのが嬉しいなんて。
いいや。とにかく昨日からもっと特別になったんだ。
隣のおにいちゃんじゃなくて…呼ぶのも名前で瑛貴くん、だし。
てれてれと一人で心の中で照れてしまう。
ホームルームが終わって教室を出て行く瑛貴くんの後姿を視線で追った。
ドアを閉めていなくなった瑛貴くんを見送って日和ははぁ、と小さく溜息を吐く。
昨日日和の部屋にいたなんて嘘みたい。
「高宮!」
「え…?あ、な、なに?」
「考え事かぁ?何回も呼んだのに」
「あ、ごめん!」
後ろから戸田に声をかけられてはっとした。瑛貴くんで頭の中がいっぱいになってたみたいだ。
「いいけど~。今度映画とか見にいかねぇ?」
「行く!」
「面白そうなのあればだけどなぁ~」
「そうだね!」
すごい!普通の友達みたいだ。
「高宮、カラオケとかは?行くの?」
「…行った事ない。歌は…ちょっと…」
恥ずかしすぎる!
「ああ、っぽいよなぁ」
「ぽい?」
「結構すかっとするぞ?」
「そう…?」
でも多分無理かも。大きい声で話すのも恥ずかしい位なのに!歌とかなんて!
「珍しいな?今時小さい頃から親に連れられてとかだってあるだろ」
「うち…親もオンチだから…」
「高宮も?筋金入り?」
あはは、と戸田が明るく笑う。
バカにしてるんじゃないのが分かるので日和も頷きながら笑う。
「だからカラオケはちょっと…」
「だよな。高宮だと美術館とか博物館とかそういう方が似合いそう」
カラオケよりはそうかもしれない。
「じゃ映画はそのうち面白そうなのあればな!」
「うん」
高校になると中学校と違って行動範囲が広がるから友達同士で行くのが普通なんだ。
それも友達がいれば、だ。
中学校の時と比べれば考えられない。
それも戸田がこうして誘ってくれたり声かけてくれたりするからだ。
でも学校では瑛貴くんとはせいぜい視線を合わせる事くらいだけ…。
ううん!それだって昨日までは合わせてももらえなかったんだからずっとずっと今日は幸せだ。
無理して頑張って学校に入れてよかった。
あとはテストも頑張らないと。
とくに瑛貴くんの授業で悪い点数なんか取られない。
テストも近いし頑張らないと!
学校から帰ってきて真面目に勉強することにする。
ずっと瑛貴くんの事が気になって仕方なかったけど、またひよって呼んでもらえて安心したのかもしれない。
思いのほかすんなりと勉強がはかどるのが楽しい。
ご飯を食べ終えてからも勉強してたけど、時計を見たら9時を過ぎていた。
そして携帯を手にすると今度は落ち着かなくなる。
電話してもいい?メールしてもいい?
どっちも中学校の時はあまりした事がなくて、もっぱら携帯は家との連絡手段でしかなかったんだけど…。
電話したい…。話したい…。
でもやっぱりやめた方がいい?
だって昨日来て話したばっかりなのに。学校でも話はしてないけど、顔を合わせたのになんだ?って思うだろうか?
ぱたん、と日和は携帯を置いた。
「べんきょ…しよ…」
ちゃんと頑張って担任でもある瑛貴くんに頑張ったな、って言ってもらいたい。
「…よし!」
中学校の時はする事なくて本読むか勉強してるか、仕方なくだったけど、今は自分から進んでだ。こんな所にもいくらか自分は前に進んでいる気がしてくる。
ある程度進めてもう寝ようかな…と思ったら携帯が鳴った。
どきんと心臓が跳ね上がる。
だって電話して来る人なんていない…。
慌てて表示を見ればおにいちゃん、だ。
「も、もしもしっ!」
切れたら大変!と慌てて日和は電話に出た。
『寝てたか?』
「ううん!いま…寝ようかな…って思った…とこ」
瑛貴くんの声だ!
ぎゅっと心が苦しくなる。
『テスト近いし勉強?』
「う、うんっ!ちゃんと、してた」
『ひよは真面目でえらいな。みんなひよみたいな生徒だと俺も楽なんだけどなぁ…』
瑛貴くんが苦笑してる。
「え…みんな僕みたいだったら静かすぎになるよ…?クラス委員も何も決まらないよ?」
『はは…それはいえるな。じゃやっぱ目立ちたがりもいなきゃねぇか…』
ひよって呼んでくれる。やっぱり昨日のは夢じゃなかったんだ。