はのんのBL部屋

　「え、瑛貴くんは…？もう寝る…？」
　『いいや、まだだな。テストの問題考えないと。…教えないぞ？』
　「教えてって言ってないもん！」
　電話口で瑛貴くんが笑ってる。
　瑛貴くんの声だ。

　『ひよは寝るとこだろう？ちゃんと寝ないと大きくなれないぞ？……いや、うーん…ひよのお父さんもお母さんも大きくないから…大きくは無理か…？』
　「ひどいっ！」
　また笑ってる。
　『いいよ。ひよはそのまんまで。十分大きくなった…』
　そりゃ子供の頃から思えば確かにいくらか大きくなったけど。

　「子供の時から比べたらそうだけど…」
　『うん。可愛いまんまは変わらないけどな』
　可愛い言われてもどう返せばいいか分からなくてただ日和は顔がかぁっと赤くなってくる。
　だってそんな事…言われたら…。
　『じゃ、おやすみ。ひよ』
　「……おやすみなさい。瑛貴くんもちゃんと寝てね？」
　『ああ』

　電話がきれてツーと無機質な音が出るのがちょっとだけ寂しい。
　でも瑛貴くんから電話をくれた。
　もしかしたら日和からはかけられないのを瑛貴くんは分かっているのかもしれない。
　ずっと一緒にいたから性格なんてもう知ってるはず。小学校高学年から中学校までの日和の事は瑛貴くんは知らないだろうけどでも変わってないと自分でも思う。

　引っ込み思案ではっきり物事言えなくて積極的という言葉から程遠くていつも受身だ。
　それでも瑛貴くんや戸田にはいくらかちゃんと言えてるほうだ。
　慣れればいくらかいいけど、初対面の人になんて絶対自分から話しかけるなんて出来ない。
　話しかけられればいくらかいいけど、それでもうまく返事することは出来ないと思う。

　戸田にも最初は警戒してかなりおずおずとだったはずだけど、それでも戸田が日和の態度を気にしないで話しかけてくれたから今は普通になったんだ。
　もし戸田が最初の日和の態度で苛立って話しかけてくれるのをやめてたら今みたいには絶対なってない。
　でもやっぱり戸田は友達として大事だけど、瑛貴くんとは全然違う。
　瑛貴くんの事をちょっと思い出しただけでも心が苦しいし、電話も嬉しいし、ちょっとの声でもこんなにドキドキする。

　ただの幼馴染のおにいちゃんに普通こんなふうにならないよね？
　「好き…」
　子供の時は簡単に好きって言えたのに！
　きっと今言ったら瑛貴くんには迷惑だ。
　はぁ、と小さく溜息を吐き出し、でも電話で話せたのが嬉しくてと複雑な心が入り乱れる。
　「……難しい…」
　ベッドに入って電気を消し、瑛貴くんの声を思い出しながら目を閉じた。


　「よっす！」
　戸田が借りていた本を返しに学校から一度家に帰ってから自転車で日和の家までやってきた。
　「自転車で何分位？」
　「15分位。近い！」
　「ホントだね！…けどそれかなり早くない？」
　「飛ばしてきたからな！」
　朝も帰りも一緒でここ最近さらに戸田との距離が縮まった感じがする。

　「いやー！まじで面白かった！また借して！って言いたいとこだけどテスト近いしなぁ…現実逃避しそうだからやめといた方いいかな…」
　日和の部屋に階段を上がっていきながら戸田が言うのに日和も笑った。
　「…うん。現実逃避しちゃうよ」
　ぽそりと日和が言うと前を上がっていた戸田がくるりと振り返った。

　「………現実逃避…したくて本がいっぱい？」
　「……そう」
　「…今は？」
　小さく日和は首を振った。
　「今はそれほどでもないよ。でも本は好きだけどね」
　「ならよかった！」
　ぱっと戸田が笑ってくれて日和も笑顔を見せた。
　きっと何かは察しただろうけど戸田は余計な事を聞いて来ない。

　「なんか言いたい事とか、言いたくなったとかあればいつでも聞くぞ？」
　「…ありがと…」
　部屋に入って戸田が日和の本棚に本を戻していく。
　「…これも面白そうだな…いや！ダメダメ！」
　返しに来たついでに勉強もしようと言ってたので小さいテーブルで教科書ノートを広げる。
　日和はいいけど、身体の大きい戸田は窮屈そうに見えてしまう。

　「狭くてごめんね？リビング行った方いいかな？」
　「いや！落ち着かねぇから高宮の部屋でいいよ。高宮は何が得意？理系？文系？」
　「得意ってほどじゃないけど…どちらかと言えば文系かな」
　「だよな！本好きなくらいだし！」
　話しながら勉強し始めたけど、戸田って頭いいみたいだ。日和が分からない所もすらすらと問題を解いて教えてくれる。
　……戸田って別に勉強必要なくない？って位だった。日和が悩んでいるとすぐに戸田が気づいて教えてくれて日和はかなり助かったけど、これじゃ戸田の勉強になってないような…？

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続きに拍手コメお返事です～^^