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約束。 18

 あ!来た!
 窓から外を見てたら車が入ってきた。
 なんかお隣が瑛貴くんの家なのにウチに入ってくるのが変な感じもするけど。
 外出て行った方いいのかな?インターホン鳴るまで待ったほういいのかな?
 そわそわとさらに落ち着かなくなる。
 するとすぐにインターホンが鳴って日和は荷物を持って廊下をばたばたと走って玄関に向かった。 

 「はいっ」
 玄関を開ければ瑛貴くんで!いつも学校ではスーツ姿だったけど今日はTシャツジーパンだ!…やっぱかっこいい…。
 「ちゃんと勉強道具持ったか?」
 「持ったよ!」
 「よし。あ…おはようございます。ひよ借りますね」
 「どうぞ。…瑛貴くん、日和の事よろしくね…」
 「…はい」
 玄関に出てきた母親に瑛貴くんが挨拶しているのを聞きながら靴を履いた。

 「よし、じゃ行くか」
 「………うん」
 小さく頷くと瑛貴くんが日和の頭を撫でたのにうわっ!となってしまう。
 どきどきが!顔も赤くなってるかも。……行く前からこんなんで大丈夫かな…?今日はどきどきで一日疲れるかも…。でもそんな事言ったって嬉しくて気持ちは舞い上がってるんだ。
 瑛貴くんの車の助手席に乗って。

 「…っと、ひよ」
 車を出そうとした瑛貴くんがぐっと身を乗り出して日和の方に手を伸ばして身体を寄せてきた。
 な、な、な!何!?
 「シートベルト」
 「…え!?…あっ!…す、すみません…」
 浮かれてたのか緊張してたのか全然気付かなかった。シートベルト、と一言言ってくれればいいのに、わざわざ瑛貴くんがシートベルトをかけてくれる。

 瑛貴くんが近いよぉ!
 顔が目の前なんだけど!
 目をぎゅっと閉じて小さくなってしまう。
 「じゃ、行くぞ」
 日和はこくこくと頷いた。
 「昼、ハンバーガーでも買ってくか…いい?」
 「うん」
 途中ドライブスルーでハンバーガーを買ってそして瑛貴くんのアパートに。

 「狭いぞ?」
 「別に気にしないもん。僕の部屋だって狭いし」
 やっとどうにか瑛貴くんが隣にいるのに慣れてきた頃にアパートに着いた。
 一階の端の部屋で瑛貴くんに案内されて部屋の中に入る。
 狭いって言ったけどワンルームじゃないらしくそれに広いともいえないけど二人がけのダイニングセットもある。
 ドキドキと緊張しながらリビングの方に部屋を横切っていく。
 「適当に座っていいぞ。ああ、先に食っちまおうか」
 「う、うん…」

 緊張する!
 ちょこんとリビングのテーブルの前に固くなって座ってると瑛貴くんがくっと笑った。
 「何そんなに緊張してんだよ」 
 だって!
 カチコチになてたのが瑛貴くんにはばればれだったみたいでちょっと恥ずかしい。
 「ほら」
 がさごそと買ってきたものを広げて瑛貴くんと顔を合わせながらハンバーガーを頬張る。

 変な感じだ…。
 7年前まではずっと毎日一緒にいて、7年間はほとんど会わなくて、そして今は一応ほとんど毎日会っている。
 …とは言っても7年前と違って今はほとんど眺めてるだけの方が多いけど。
 それがこうしてまた近くなった。
 ハンバーガーを食べながらじっと瑛貴くんを見た。

 瑛貴くんはあんまり変わってない感じだけど、日和は子供からどうにか大人に一歩近づいた感じ。今の日和位の年の瑛貴くんと毎日会ってそして好きとか言ってたんだから…。
 高校1年…日和にキスした頃って瑛貴くんが高校1年位だよな?
 自分が小学校1年生だったんだから…そうだ。
 …キス…とか。
 今だったら?
 そんな事考えて動きを止めてしまう。

 「どうした?」
 「え…っ!あ、ううんっ!なんでもないっ」
 慌ててポテトをパクついた。
 高校生だったら…キスが特別って…分かるはず。誰とも付きあった事もないし、好きだと言えるのも瑛貴くん以外ないけど、日和だって分かる。
 …どうして瑛貴くんはキスなんかしたの?

 でもそんな事、瑛貴くんにとっては些細な事だったのかもしれないし、忘れてるかもしれない。
 あんまり日和が瑛貴くんにばっかりくっついてたから、だからふざけてしただけかもしれない。
 日和が好きとか言って、子供だった日和を黙らせる為に大きくなったら考えるとかごまかしたのかもしれないし。
 日和はずっとそれを考えてたのに…。
 ずっと好きなままなのに。
 でもさすがにそんな事今は言えない。
 元通りに話せるようになっただけでも進歩なのに。

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