はのんのBL部屋

　「うーん…」
　やっぱりひよが可愛い…。
　車で学校に向かいながら瑛貴は呻った。　
　ずっとひよと話もしないでいたのに一回ひよに話しかけられてからはもう止めようもなくなってきていた。

　こうならないように、と思っていたのだが…。
　ひよのお母さんに向けられる、頼りにしてると言わんばかりの視線が少々後ろめたい。
　ひよが大きくなってるのもマズイ気がする。
　子供の頃でさえ可愛くてキスなんかしちまったのに…。　

　いや、それでもまだひよは子供だ。
　頭では分かっちゃいるが、部屋に連れて来て顔を真っ赤にして緊張してるひよを見てどうにも止まれなくなりそうになった。
　なにしろひよはまるで初めて彼氏の家に遊びに来たような緊張ぶりだった。それが可愛くて…。

　いやいや、ダメだろ、って。それに彼氏って…と自分の考えがおかしすぎる。
　どうにも昔からひよの事が可愛くてしょうがないもんだからそんな風に見えてしまうんだ。
　ひよは何年か離れててただ緊張してただけなのに。
　小さい頃は膝にすぽっと納まる感じだったのに大きくなった…と瑛貴はしみじみと自分の手を見た。

　戸田みたいに立派な男子高校生に育ったのならこんなに可愛い、可愛いも思わなかったのかもしれないが、高校生になってもひよは相変わらず可愛い。
　むさい男子高校生とは全然違う。
　やっぱりどうしても可愛いに見えてしまって仕方ない。

　小さい子！小さい子！ひよはまだ子供！
　勿論瑛貴に比べればまだ子供だ。でも本当に小さい頃を知っている瑛貴にしたら確実に育っているわけで…。
　こめかみを押さえて自分を落ち着かせる。
　「…可愛いのが悪い！」

　寂しかったて泣くし、甘えてくるし、目が好きって言ってるし、…ずっと瑛貴は日和を無視するような態度を取っていたのにひよは変わらないんだ。
　そこに苦しくなる。
　一番多感な時に離れていたのに…。その間にどうやらイジメなんかも受けていたらしいのに…。
　一言もひよは何も言わない。
　寂しかった、と言っただけだ。
　どうしていなくなった？とも何も聞いて来ないんだ。

　日和が我慢する子なのは分かっている。それに瑛貴のほうが甘えているんだ。
　自分の都合で離れたりまた元通りにひよを独り占めしようとしてみたり。
　それなのにひよは何も言わないで昨日もただ嬉しそうにしていた。
　ひよが自分を好きなのは分かる。
　なにしろ小さい頃から向けられる目が変わらない。
　なんでそんなに…と瑛貴が思う位ひよが全幅の信頼を寄せてくれているのは分かる。

　そのくせちょっと大人になって緊張したりとか、抱っこするのに恥かしそうにするとか、顔を赤くしながらも縋ってくるとか。
　「……やべぇ…か…」
　昨日もひよが緊張してるのにそういやよく抱っこしてやってたな、と軽く思っただけだったのに抱きしめたらひよを離したくなくなった。
　「……だめだろ」
　はぁ、と溜息を吐き出す。

　このままエスカレートしないようにしないと…。
　学校に近づくと戸田と一緒に歩いているひよを見つけた。
　身長差がかなりある。
　「うん…？」
　じっと二人を見ていると戸田が随分とひよに触っている気がする。
　頭触ったり肩触ったり。ひよは何とも思ってないのかただ笑顔を浮かべてるだけだが…。
　そういやひよの家にも遊びに来たって言ってた…。

　学校でもいつもひよといるな…。
　いや、友達…なら…でも…。
　ひよは絶対可愛い。
　まさか…？
　いや、戸田は女子達にももててるしまさかな…。
　自分が日和を特別に想っているから、きっとそんな余計な事を考えてしまうんだ。

　でも、万が一って事もあるかも…。
　気をつけて見ておくにこしたことはないか…。
　すっと二人の横を車で通り過ぎ、バックミラーで確認するとひよがじっと後ろから視線を瑛貴の方に向けていた。
　それに満足してしまう。
　ちゃんとひよは瑛貴の車だと分かったんだ。
　ひよはホームルームでも授業中でもじっと瑛貴を見ている。いつもそれを感じて瑛貴は安心するんだ。
　ひよを無視するような形を取っていた時だってひよの視線は勿論分かっていた。

　だが、今はもうダメ。
　ひよは瑛貴のものだ。
　…瑛貴の中では。
　こんな事瑛貴が思ってるなんてひよが知ったらどうするんだろう？
　「…さすがに嫌われるか…？」
　いいお兄ちゃんのふりをしておかないと。
　でもひよに邪まな思いで近寄ってくるヤツがいたら排除してやらなければならないだろう。
　
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続きに拍手コメお返事です～^^