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2014.04.18(金)
「せんせ…ちょっといい…?」
朝のホームルームを終わって教室を出ようとしたら戸田が寄ってきた。
「なんだ?」
「ちょっとさ…相談したい事あんだけど…あんま人にきかれたくねぇなぁ…」
…相談?戸田が?
身長が瑛貴と変わらない位にデカイ。ひよがこんなに育ってたらさすがに可愛い、とは言えなかっただろうか…?
「昼休みでいいか?生徒指導室借りておくから」
「はい」
戸田が計るように瑛貴を見ていた。
その戸田の視線を避けひよにちらと視線を向けるとひよがこっちを見ていた。
…今日もひよは可愛い。
ずっとひよを見ないようにしていた事が嘘のようにひよが気になって仕方ない。
「…じゃ、昼休みな」
戸田の肩をぽんと叩いて教室を出た。
戸田が相談ってなんだろうか?
戸田は学年でも目立つ方で女子にも人気があるらしいが…。
だからといって浮ついてもなくひよと一緒にいるのが多くてひよは初めての友達なんて言ってたけど…。
朝もひよと一緒のバスで一緒だし、帰りも一緒らしい。それにひよの家にもちょこちょこ遊びにも来るみたいだけど…。
「なんの相談だ?勉強?進路?」
「んにゃ。恋愛」
「…………そっちかよ」
昼休みにちゃんと生徒指導室まで来た戸田に話をふればがくりとくる返答だ。
高校生の恋愛事情なんか知るか!…といいたい所だけどわざわざ自分に相談というのが解せない。
戸田だったら自分でなんとかしそうな気がするが…。
「経験豊富そうな先生なら答えてくれるかなぁ?と思って」
テーブルを挟んで座った戸田が挑戦的な態度だ。
…なんだ?
相談と言ったわりには戸田の態度は悩んでる風ではない。
「好きなやつ出来たんだけど~」
戸田がじっと瑛貴を見ていた。
「そいつ別に好きなやついるんだよね」
……一瞬ひよの事を言っているのかと思ったが違うのか。
「戸田なら振り向かせられるんじゃないのか?」
「うーん…ちょっと難しいかなぁ…普通と違うから」
「…普通と違う?」
「そ」
戸田が頬杖ついてじっと瑛貴を見ている。…なんだ?
「そいつ…好きなやつの事、見てるだけでいいんだって…」
「あぁ?なんだ?その相手の好きなやつの事も知ってるのか?」
「そう。…知ってる。ちょっと手ごわいかなぁって…」
…コイツは何が言いたい?…やっぱりひよの事か?
ひよに好きな子がいるのか?……違うのか…?
いや…普通に考えたらひよだって男の子なんだから。…でも戸田は普通と違うと言った…。
「俺の事見てくんねぇかなぁっても思うんだけど…ちょっとした事でも嬉しそうな顔してると何も言えなくなって…」
「…自信家に見えるお前が?」
「俺も普通だったら押せ押せで行くとこなんだけど…。純粋っていうか…可愛いんだよな…」
…やっぱりひよの事か!?
ひよに好きな子がいるのか?
瑛貴まで難しい顔になる。
「せんせだったらどうする?」
「どうするって…お前の説明じゃイマイチ分からないが…それに俺が高校の時と一応大人になった今とじゃ考え方とかも違うしな…」
「俺、真剣だ」
戸田が強い意思を見せる目で瑛貴を見た。
「…自分が後悔するような選択はするな。…俺は今になって後悔している事がある…」
……ひよから逃げた事だ…。
「自分の事しか考えてなかった…ずっとずっと大事にしてきたのにな…」
思わず苦笑が漏れてしまう。なにを高校生相手に言ってるんだか…。でも戸田はじっと瑛貴を見ていた。
「……今は?」
「今…?今も大事だ。今度は後悔しないように…と思っている」
「…ずっとその人の事が好きだったって事?」
「…多分な」
「……ふぅん。…後悔…。………」
「まぁ高校生の時にそれ言ったって中々難しいけどな…。大人になって気付く事だってあるし。俺だってその時は後悔するつもりはなかったんだが…」
今になってやっぱりひよが誰よりも大事だと思うんだ…。守ってやりたいと思う…。
戸田の言う好きなやつがひよの事なのか、そうでないのか…。
もしひよの事だったらひよが好きな子というのは誰だ…?
それを知ったところで瑛貴には何も言う権利などないのは分かってはいるが…。
「うーん…そっか…がんばろっかな…せんせにも大事な人っているんだ?」
「当たり前だ」
「…ちょっと安心したな」
にっと戸田が笑った。
「せんせその人と付き合ってんの?」
「いいや」
「……そうなんだ?せんせも頑張ってね」
「……上から目線だな」
戸田が満足そうにして生徒指導室を出て行った後姿を瑛貴は難しい表情を浮かべて見送った。