それから何日か過ぎた。
宗と一緒にアパートを出て帰ってくる。
帰って来て瑞希が簡単にご飯作って食べて、寝て。
朝、隣が出かけた後に宗が毎日のように瑞希に手をかけ、しかけてきて、喘がされ、出され、ほぐされ…が何日か。
でも宗はそれ以上はしてこなくて、瑞希は戸惑っていた。
いつもされるのは瑞希だけで宗はする気がないらしい。
そう思えばむなしくて、でも買われた身では何も言えない。
「瑞希、俺、今日から出かけなくてもいいんだ、けど…どうする…?」
「…どうする、って?」
今日、仕事、休みなのだろうか…?
「お前いないのに俺いても…」
「べ、別にいていいけど…でもつまんない…?何もないし」
「…掃除でもしててやるか?年越し近いし。掃除ならできるぞ?…多分」
「え…?い、いいよ…」
「だってお前忙しいから…。それとよかったらお前のミニで送り迎えしてやる」
「えっ?」
「折角の車のってやらねぇと」
いいのだろうか…?
宗にぶつかった車なのに。
「お前が嫌ならしないけど」
「やじゃないっ」
宗が笑った。
「じゃ、送って迎えに行ってやる。買い物もしとく。いるものあるか?」
それはいい。
瑞希は首を振った。
「じゃあ適当に買ってくる。あとで文句言うなよ」
「……行かなくていいよ」
「いいから、ほら、出るぞ」
「あ、じゃあ鍵渡しとく」
「…ああ……」
宗は瑞希から鍵を受け取った。
「……お前さ、…車も家の鍵もこんな簡単に渡しちゃだめだろうが」
宗が難しい顔して言うのに瑞希が笑った。
「それ受け取る宗が言うの?……宗じゃなきゃ渡さないよ」
宗の大きな手が瑞希の髪を撫でた。
「わりと慎重に運転するんだね」
「そりゃ、人の車だし」
宗の運転でコンビニまで向かった。
身体人より大きいのにミニに小さく乗っているのがおかしくて瑞希はずっと笑ってしまう。
「……笑いすぎだろ」
「だって!ミニ合わない!」
「…まぁそれは誰が見たってそう思うだろうけど」
宗も頷いている。
「じゃ、帰りもくるから」
「ん。気をつけてね?」
「ああ」
手を振って宗が小さい車で帰るのを見送った。
やっぱりおかしすぎる。
宗は今日はスーツじゃなくてパーカーにジーンズ。着替えを持ってきたらしい。
宗の物が増えていく。
その分宗がいてくれるような気がして瑞希は嬉しいとしか思えないのだ。
バイトが終わる時間、外に瑞希のミニが停まってた。それに思わず瑞希の顔が綻ぶ。
「今日は彼は来ないのかい?」
「え…?あ、外で…その、車に…」
店長がにこにこと笑って聞いてきたのに恐る恐る答える。どうしたって彼が何を指しているのか問えない。
「じゃ、あがります」
「おつかれさま。明日休みでしょ?ゆっくり休んで」
「はい。お先します」
明日は休み。
宗も出かけなくていいって言ってた。
もしかして一日一緒にいられる…?
車を覗くと宗は助手席に乗ってたので瑞希は運転席に乗った。
「運転…」
「自分で運転したいでしょ。もう浮かれてないから大丈夫だろう?」
くくっと宗が笑う。
「……ん」
瑞希はシートベルトを締めた。
「…今日、宗は何してたの?」
「ん?掃除してたぞ?布団も干したし。えらいだろう?」
宗が何故かご機嫌だ。
鼻歌でも出てきそうな感じだった。
「ご機嫌だね?」
「おう。ちょーご機嫌だ。明日、瑞希休みだろ?」
「ん…。休み」
ふふふ、と宗が笑ってる。
何でそんなにご機嫌なんだろう?
瑞希は車を運転しながらそっと隣を見た。
長い足を組んでるけどやっぱり狭そうだ。
頭も天井につきそうだし。
何故か知らないけど宗がご機嫌な事はいい事だ。
瑞希も顔に笑みが浮かんでくる。
「車、いいね。歩かなくていいから寒くない……あ!ガソリン満タンになってる」
「おう。入れといた。俺明日からも出かけなくていいから送り迎えに行ってやるよ」
「………うん…。でもガソリン、いいよ」
「いいって。じゃ、その代わりに買い物とかに使っていいか?それなら文句ないだろ?」
「……いい、けど」
宗は先に回って瑞希が負担に思わないようにしてくれているのだ。
瑞希は顔を俯けようとしたけど運転中なのでやめて前を向いた。
また誰かにぶつかったりしたら大変だ…。
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