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約束。 45

 「俺は一回学校に報告しに戻ります。後からもう一度来ます…いいですか?」
 「勿論よ。瑛貴くん、ありがとう。日和の事よろしくお願いしますね」
 「当然です」
 お母さんに瑛貴くんが許可を求めているのに今日はもう一回来てくれるんだ!と日和は喜んでしまう。
 「ひよ、おとなしくしてろよ?」
 「…うん」

 玄関で瑛貴くんが靴を履きながら笑って注意するけど、ひよがうるさいことないのは分かってるけど心配して言ってくれてるんだ。
 瑛貴くんが靴を履き終えて玄関を出ようとしたらインターホンがなり、瑛貴くんが体を避けお母さんがドアに手をかけた。
 「っ!」
 お母さんが玄関を開けるとそこに立っていたのは大村と大村のお母さんと思われる人だった。

 やだ!と日和はすぐに瑛貴くんの後ろに隠れて瑛貴くんの袖を掴んだ。
 瑛貴くんが大丈夫だと日和の背中に手をまわしてくれるのにほっとする。
 「申し訳ありませんでした」
 大村のお母さんだろう人が頭を深く下げているけれど、その後ろで大村は顔を背け日和の顔も見ない。
 見られても怖いし緊張するしだからいいけど、そこにいるだけでも身構えてしまう。

 「治療費は家のほうでお支払い致しますので…」
 「…治療したって…傷は残ってしまいます」
 「お母さん…いいよ…」
 瑛貴くんの影から小さく言う。
 「……怪我なんか…させるつもり…なかった」
 大村が顔を顰めながら静かに呟いたけど日和はその声にびくっとしてしまう。

 瑛貴くんが優しく背中を叩いてくれると落ち着いてきて小さく溜息を吐き出した。
 瑛貴くんが傍にいてくれるだけで自分が保てられるなんて…それじゃダメだろと自分でも思うけど、でも瑛貴くんの広い背中が日和の前にあって大村から隔ててくれているのにやっぱり安心してしまう。
 玄関先でお母さん同士が話をしているのを日和はどこか関係ないように意識は大村の方に向けない。向きたくないと思っているんだと思う。

 話を聞いてないままお母さん同士の話が終わって大村は小さく頭を下げて帰って行った。
 瑛貴くんはその間もずっと日和の前に立ってくれてて日和はずっと背中にくっ付いていた。
 「ひよ…見送りいいから家入ってろ。学校に報告終わってやる事やったらまた来るから。何かあればすぐ電話。いいな?」
 「…うん」
 「あと、戸田が心配してるだろうから電話してやれ」
 「…うん」

 瑛貴くんの言葉はすんなり日和の耳に入ってくる。
 「じゃあ、おばさん、後でまた来ます」
 「瑛貴くん、ありがとう」
 お母さんもさっきまでの固い表情が崩れているのに瑛貴くんがまた苦笑してた。


 「もしもし?」
 『高宮!大丈夫か!?』
 「うん」
 大人しくして寝てなさいとお母さんに言われて大丈夫だけど、と思いながらも自分の部屋で横になりながら戸田に電話すると戸田がすぐに出た。
 『傷は?』
 「二針縫った」
 『…傷、残るかな…』
 「多分ね。でも別にそれ位は…女の子でもないし、額だから髪で隠れるし」

 『でも!二度とあんな事するなよ!前に飛び出してくるなんて!あぶねぇだろ!……月村、怒ってなかった?』
 「え?怒ってないよ?どうして瑛貴くんが怒るの?」
 『高宮に怪我させたから』
 「だって!戸田のせいじゃないでしょ!……戸田いてくれてよかった」
 『……アイツなに?』

 「……戸田はその…何となく分かってると思うけど…中学校の時僕ちょっとイジメに合ってて…あ、全然ひどいものじゃなかったんだけど。学校で庇ってくれる友達だって一応いたし。でも戸田みたいにここまで仲いい友達じゃなかったけど…。あ、そこはまぁいいんだけど、個人的にさっきの…大村っていうんだけど…が一番僕に突っかかってきて…手を上げるとかそういうのはなかったよ?言葉だけ…でも今の戸田みたいに何でも話せる友達いなかったし…瑛貴くんもいなかったから…結構どん底な感じで…」
 …話しながら自分が淡々と話せる事が驚く。思い出すのも口にするのも嫌だったのに…。 

 『そうか…』
 「うん…でも今は平気。戸田が庇ってくれようとしたのもちゃんと分かってるし、瑛貴くんもいてくれるから…。戸田…ありがとう」
 『と、当然だろっ!怪我までしてるのに礼なんか言うな!…俺は高宮に怪我させちゃったの反省してんのに』

 「だから!それは戸田の所為じゃないってば!」
 ほら…戸田は変わらないでいてくれる…。
 瑛貴くんもいてくれて戸田も気にしてくれて…。
 それだけでもう怪我なんかどうでもいい事だ。

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