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約束。 49

 「高宮…いいのか?」
 戸田が小さな声で聞いて来た。
 「何が」
 「だってあいつ……中学校の時の…だろ?恨みはらしてやったら?」
 「……やだよ。それでまた恨まれたらどうすればいいのさ…。もうこのまま何も関わらないならその方いいもん。二度とこんな事のないように指導してくれるって言うし」

 「そんなの聞くかね?」
 「…………さぁ」
 「しっかしなんで高宮をそんなに…?こんなに可愛いのに」
 「…………意味分かんない。…キモイって言われてたけど?」
 「はぁ?ねぇだろ。女子よりずっと可愛いって」
 「……だからキモイんでしょっ!」
 「……ガキって事なんじゃねぇの?」

 自分達のクラスに戻りながら小さく会話して歩いた。もう授業が始まっていて廊下もしんとして響いてくるのは授業している先生の声だけだ。
 「授業中なのに堂々と歩けるって気持ちいいな!」
 「え~…僕は落ち着かない…」
 静かな廊下を歩いて行くのが日和は落ち着かないのに戸田は楽しいらしい。

 ホント自分は臆病で小さいな…と思ってしまう。
 気持ちも小さいから体も小さいのかな…?
 ……いや、遺伝か。
 お父さんもお母さんも大きい方じゃないからな…と諦める。

 「戸田のお父さんとお母さんって身長高い?」
 「まぁ、普通よりは大きいかな」
 …やっぱ遺伝だ。
 「何?気にしちゃうの?いいってば!高宮はそのサイズで!……可愛いって言ってくれるだろ?」
 誰がとは言わないで、しかもちゃんと声は日和にだけ聞こえるように囁く位。
 「い、い、……」
 …言われる、けど…。

 思わず日和がかぁっと顔を赤くしてしまうと戸田が呆れてる。
 「…分かりやす…」
 「だ、だ、だってっ!」
 「しぃ~!」
 「あ…」
 戸田に注意され、日和は慌てて口を押さえそそくさと自分達の教室に戻った。
 だって!戸田があんな事言うから!
 
 あとは何事もなく学校を終えて家に帰った。
 今日は戸田も来ないという。怪我してるし大人しくしてろなんてお母さんや瑛貴くんと同じ事を言われた。
 そんなに皆に言われて…よっぽど自分は小さい子だと思われてるのだろうか?
 心配してくれて言ってくれてるのは分かるけど別に大丈夫なのに、とちょっと不貞腐れてしまいたくなる。

 仕方ないので大人しくしてようと本を取り出して読み始めた。
 一回読んだ事のある本だったけど、見落としていた所もあって夢中で読みふけっていた。
 はっと部屋が暗くなってると思って電気をつけカーテンを閉めようとして外を見たら誰か家の前に立っている。
 誰だろう?
 目を凝らして見た後、日和は青くなって慌ててカーテンを閉めた。

 大村だ!
 ど、どうしよう……!
 心臓が緊張で大きく鳴ってきて口を押さえて震えてきた体を抑えようとした。
 電話…。
 震える手で携帯を持ち瑛貴くんに電話した。

 『もしもし?』
 「え…き…くん…」
 『どうした!?』
 「そ、そと……に…大村…いる…みたい…」
 『何!?今帰る所だからそのまますぐ向かう!ひよのお母さんは?』
 「まだ……帰って…ない」
 『玄関は?締めてるな?』
 「う、…ん…」

 『電話このままにしとけ。大丈夫だ。ひよ。すぐ行くから。今車出した』
 「携帯…持ったまま…ダメ…」
 『………お前冷静だな…大丈夫だ。ハンズフリーにしてる』
 なんだ…と瑛貴くんと繋がったままの電話に安心した。
 よかった…。
 電話はそのままで瑛貴くんが今どこを通ったと説明しながら段々と近づいてきてくれるのにさらに安心してきて体の震えも止まってくる。

 『着いた。…もういないみたいだぞ?二階から見てみろ』
 そっとカーテンの隙間から下を覗くと瑛貴くんの車が見えて、そして大村が立っていた所には誰もいなかった。
 階段を下りて玄関を開ければ瑛貴くんが目の前にいて、日和は思わず首に抱きついて縋ると瑛貴くんが抱き返してくれる。
 「もう大丈夫だ」
 「んっ」
 怖かった…。

 外から何か罵声でも浴びせられるのか玄関のドアでも蹴られるのかと身構えてたけど何もなくて変わりに瑛貴くんの姿が現れれば心底ほっとしてしまう。
 「大丈夫だ…ひよ」
 「うん…」
 玄関で瑛貴くんに抱きついたままでしばらくいるとまた玄関が開いたのに二人でぎょっとした。

 「ただい……何してるの?」
 お母さんが抱きあっていた日和と瑛貴くんをきょとんとして見て不思議そうに見て聞いて来たのに妙にあせってしまう!!!
 「え、え、え、え……」
 「さっきひよから電話来て…大村くんが外にいたらしくて」
 「え!?」

 お母さんが眉間に皺をよせる。
 それはいいんだけど!
 瑛貴くんの手が日和を抱きしめたまま離してくれない。
 …ちょっとさすがにお母さんの前で抱き合ったままって恥かしいんですけど!

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