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約束。 51

 ひよの顔色がよくない。
 それなのに何も言わないなんて…。
 ひよの家に行きたい所だが仕事が溜まりすぎていた。学校の先生なんか授業だけしてりゃいいってもんじゃなく雑用が多すぎる!

 仕事が溜まっていたおかげでやる事を終わる時間がここの所ずっと遅い。
 おまけに土曜も完璧に休むつもりで詰め込まなきゃないんだ。
 土曜出るならいくらか早くは終われるけどそれよりも土曜日はひよにずっとついていた方がいいだろう。
 しかし何でひよは何も言ってこない?
 何でも言っていいと言ってるのに。あんなに顔色を悪くして絶対何かあるはずだ。心が不安なのか何かあったのか、電話で聞いてもひよは何もないと言うし…。

 すっかり遅くなった帰りの車の中でくそ!と雑言が口をついてくる。
 遅くなってからまさかひよの家に行くなんてさすがにそう何度も何度もは失礼だろう。隣に住んでいればそれでもちょっとは顔出すのもおかしくはないだろうが、家を出ている今はそんなわけにもいかない。
 ひよが自分の手元にいれば…。
 その時電話が鳴った。見知らぬ番号だと思いながらも電話を取った。

 「もしもし?」
 『瑛貴くん?あの…日和の母です』
 ひよの!?
 『あの瑛貴くんのお母さんに番号聞いたのだけれど…ごめんなさい』
 「いえ!全然。おばさん、ひよどうしたんです?聞いても答えなくて。毎日行きたい所でしたけど仕事溜まってて」

 『ええ。日和も瑛貴くん大変みたいだからって…自分の所為でって…』
 「ひよの所為じゃないです!」
 …そんな事言ってたのか?やっぱり遅い時間でも行くべきだった!
 『あの…日和には止められてたんですけど…』
 「やっぱり何か!?」
 『…毎日…あの大村くんが…外に来ているみたいで…』

 「何!?」
 思わず大きな声で怒鳴ってしまう。
 「あ、すみません!…それで?」
 『別に何もないんです。ただ毎日来てるだけ…ただ日和がかなり参っちゃってるみたいで…自分の部屋のカーテンも閉めっぱなしで部屋の隅で震えているような感じで…私にも見せないけど…大丈夫って言うんだけど…瑛貴くんに相談したらと言っても大丈夫って…』

 大丈夫じゃないだろう!
 心を落ち着かせる為に何度も瑛貴は深呼吸を繰り返した。
 「…毎日?」
 『ええ、多分。私も早く帰るようにしてたんだけど…私の車見るとすぐ帰っちゃいますけど…こっちも何されてるわけじゃないですし…』

 「立派なストーカーになるでしょう!…でも確かに何もされたわけじゃないなら…」
 『そうなの…だから日和も大丈夫って…』
 大丈夫なわけないだろうが!
 「おばさん、今俺帰り道なんですけど、時間遅いですがちょっと行っていいですか?」
 『ええ!勿論!…日和…瑛貴くんにだったら…』
 「ではすみません、すぐ行きます」
 ひよのお母さんもかなり困惑しているらしい。
 ストーカーで訴えればいいのか…?いや何もされていないんじゃ無理だ。

 くそ!とハンドルを叩く。
 何が大丈夫だ!何がなんでもない、だ。
 全然大丈夫じゃないだろうが!
 それに守ると言っておきながら自分は何してるんだ!?
 ひよの顔色がよくないのも分かっていたのに!
 少々乱暴な運転でひよの家に着くと待っていてくれたのかインターホンも押さないのに玄関を開けて待っていてくれた。

 「瑛貴くん…すまないね」
 「いえ…ちょっとひよの部屋に行ってきます」
 ひよのお父さんもすでに帰宅していた。
 「瑛貴くん…お願いね」
 ひよのお母さんに頷いて勝手知ったる他人の家でひよの部屋に向かう。
 コン、とドアをノックするとはぁい、と可愛いひよの声。

 「何?ど……え、瑛貴くん!」
 ドアを開けると驚いた顔でひよが目を丸くした。
 「……説明してもらおうか?何がどう大丈夫なんだ?」
 「な、何の事…?」
 「何の事じゃないだろう。お母さんに全部聞いた」
 ふいとひよが顔を俯けた。

 「ひよ」
 ドアを閉めてひよの部屋に入りひよを抱き締めた。
 「…そんなに俺は頼りないのか?」
 「ち、ちがう!」
 「じゃあ…信用ないんだ?」
 「それも…違うもん…」
 「じゃあどうして何もいわないんだ!?何かあったらすぐ言えと言っただろう!?」
 「だって!…瑛貴くん忙しそうだった…僕の事で二日も潰しちゃって…僕…瑛貴くんの迷惑なりたくない…嫌われたくない…」

 「嫌うか!」
 「だって…毎日…呼ぶなんて…出来ないよ!それに…別に大村は何するわけでもなかったし…」
 「…ヤツが何もしなくたってひよの心に傷を負わせてるだろう!今だってそれが負担になってるんだろうが。…なぜ言わない…」
 声を絞り出した。
 あんなに震えて縋ってきたひよが毎日一人で耐えてたんだ。
 きっと中学校の時もこうして一人で耐えて我慢していたんだ…。

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