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2014.05.01(木)
「すみません…遅い時間にお邪魔して…」
「いいえこちらこそ…わざわざ呼び立ててしまったみたいで…」
「…言っていただいてよかったです。ひよ…じゃ明日な?」
「……うん」
玄関で瑛貴くんが帰るのに靴を履きながら親に挨拶するけどどうしても日和の顔は緩んでしまう。
「………あんなに真っ青になってずっと震えてたのに…」
嬉しそうにしている日和を見てお母さんが苦笑している。
「別に!家がヤダって言ってるんじゃないよ?」
ただ瑛貴くんが日和を気にしてくれて、日和の事を考えてくれているから嬉しいんだ。
「わかってます」
「それじゃ失礼します」
「…瑛貴くん…ごめんなさい…ありがとう」
お母さんとお父さんが瑛貴くんに向かって頭を下げていた。
「いえ!やめてください!…ほんの少しの間だけでしょうから」
瑛貴くんがそう言って帰って行った。
すごく!すごく!…ほっとした…。
ずっと我慢してたけど…。怖かったけど…。
「日和…よかったの?」
「…うん…。瑛貴くんは迷惑かもだけど…まさか瑛貴くんのアパートまで知らないだろうし…ごめんね…僕、よわっちくて…」
「ばかね」
お母さんとお父さんが苦笑してる。
背が両親とも似たり寄ったりで瑛貴くんが可愛い言うのも自分でも頷けてしまう。
「日和がもうちょっと背が高くて瑛貴くんみたいだったらこんな事もないんでしょうけど」
「………背は…遺伝だよね」
「ごめんねぇ」
「別にいいよ!」
だって瑛貴くんには可愛いって言われるし。戸田みたいになってたら絶対言われてないとは思う。
「今は友達も出来たし…瑛貴くんもいてくれるし…全然平気だよ?」
「瑛貴くんは…本当に…先生でもあるのに日和にだけこんなにしてもらって申し訳ないけど…」
そうなんだ…。学校では先生なんだから…。でも学校じゃなかったら、とは言っても先生である事には変わらないから…瑛貴くんの為にも日和も気をつけなきゃいけない。
日和は自分の部屋に戻ってベッドに入った。
瑛貴くんちにいける…。明日から…。
くすぐったくて嬉しい。
なんか…怪我もそうだけど…悪い事ばかりじゃない…。
瑛貴くんが来るまでは真っ暗な気持ちだったのに…。
それに…さっきの…大人のキス…。
思い出すだけでかぁっと顔も体も熱くなってくる。
さっきは気持ちが興奮して瑛貴くんに嫌われてまたいなくなられるんじゃないかと思ってたけど…そうじゃないって…。
自分の唇を触って確かめてしまう。
だってっ!
……瑛貴くんち行ったら…もっとしてもらえないかな…。
思わずそんな事まで考えてしまって首を振る。
何考えてんだよ!と自分の頬を叩いた。
でもキス、気持ちよかった…。いっぱい瑛貴くんの思いが詰まってるみたいだった…。
「………とかって!」
うきゃー!と自分で照れてしまう!
でも、だって…好きなんだもん…。
嫌いにならないって言ってくれるけど、信じられないわけじゃないんだけど…自分の我儘だけ言ってちゃダメなのは分かる事だ。
でも…瑛貴くんが守ってくれるといって…日和を連れ出してくれる。
ずっとここ最近は寝る時も怖かった気持ちが今はもうそれだけで早く明日になってほしいなんて思ってしまうんだ。
「…ゲンキンなやつ」
自分で呟いて怪我している額を押さえた。
右の眉の上。痛みはもうないし来週は抜糸。怪我は全然平気だ。
大村が毎日いるらしいのに恐怖も感じてたけど、それも瑛貴くんのおかげでもう弱まった。
本当は瑛貴くんを頼らずに自分が強くなれれば一番なんだろうけど…。
どうしても中学校の時の気持ちがフィードバックしてきてしまって暗い気持ちになってしまうのが自分でも抑えられない。
それでも…今は違うと思えているんだから…。
頼ってるばかりじゃなくて、自分でもどうにかしなくちゃ。
逃げてるばかりじゃダメだと思う。思うけど…もうちょっとだけ瑛貴くんに頼らせて…。
日和はベッドで横になりながら思いを交錯させた。
瑛貴くんへの思い、親、戸田、過去、大村、未来。
先がどうなっているかなんて日和に分かるはずもない。でも今、後悔しないようにしたい。
そして逃げる事ばかりを考えていた自分がそんな風に思えるようになったのも瑛貴くんのおかげだ。
瑛貴くんがいてくれるから…だからこそ今そんな風に思えるようになったんだと思う。大村からの恐怖があってもそれでも明日になれば瑛貴くんと会える。中学校の時は明日が来なければいいと思っていたのに、今それはないんだ。