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約束。 55

 もう!
 戸田があんな事言うから!
 もうずっと頭の中にえっちい事ばっかり浮かんでしまう。
 だって…キスも!…大人のちゅーされたし…。

 学校が終わって迎えに来てもらって病院で消毒をしてもらい家で瑛貴くんちに行く為の荷物を詰めながらどうしても戸田に言われた事がくるくる頭の中を回ってしまう。
 なんか今日は帰って来てからも大村の事が全然気にならなくて瑛貴くんの事で頭がいっぱいだ。
 きっと瑛貴くんが来てくれると分かってるから…だからこんなに気にしないでいられるのかもしれない。

 考えるのは瑛貴くんとどうするかって事で…イマイチ日和は分かってないけど…でも裸で…抱き合って…?
 …………想像するだけで顔が熱い。
 もう!さっきから何ずっと考えてるんだよ!
 自分に突っ込んでおく。
 そんな事考えたって瑛貴くんはそんな事する気なんてないかもだろうし。
 ……あるのかな?

 あってもきっと日和は頭がパニックおこしそうだけど、でも…なかったら…?
 なんかそれはそれで…凹みそうな気がする…。
 …バカな事ばっかり考えてないで用意!

 大きなバッグに着替えと学校の準備をつめていく。とりあえずそれさえあればいいはずだ。
 お母さんが外を気にして見ていたけど今日は大村は来ないらしい。用事でもあったのだろうか…?
 日和には関係ないことだけど!
 今日来なかったからってじゃあ日和を連れて行くのやめる、なんて瑛貴くん言わないよね?
 そっちの方が心配になってきてしまう。
 

 でもそんな心配は杞憂で夜に瑛貴くんが迎えに来てくれた。
 ご飯を日和の家で一緒に食べて少ししてから瑛貴くんの車に。
 「じゃ日和はお預かりします」
 運転席から瑛貴くんが親に挨拶するけど日和の顔が赤くなってるはず。夜だったのが救いだ。

 「瑛貴くん…ごめんなさいね…」
 「いえ。全然…何かあれば俺の携帯に。こちらからも報告入れますので」
 「じゃ、日和…迷惑かけないようにね…」
 「うん…」
 親に見送られながら瑛貴くんの部屋に行くって変。
 でも嬉しい。

 「いってきます」
 「もう…嬉しそうなんだから」
 呆れたように言われちゃうけど、だって安心で嬉しいもん。
 「おばさん、もし大村くんに話しかけられるようだったら日和は家にいないと言ってみてください。それでもし学校の方に姿を見せるようだったら俺の方で対処しますので。…そうなってくれた方がいんだが…」
 「ええ、分かったわ」

 …そっか…、なるほど、と日和は納得した。
 家にいなければ学校に、と普通思うか。そうすれば瑛貴くんが近くにいるから…。
 ちらとお母さんと話す瑛貴くんを見た。
 …色々考えてくれてるんだ…。それがまた分かって面映くなってしまう。
 だって、すごく日和の事を考えてくれてる感じだ。

 「それでは…」
 瑛貴くんが頭を軽く下げて車を出した。
 「瑛貴くん……」
 車が出て、家からちょっと離れてから瑛貴くんに声をかけた。
 「ありがとうございます…ごめんね…」

 「ばか。当然だろう。言ったはずだ。ひよが何よりも大事だと。やってることが学校側にバレたって後悔しない」
 やっぱりこういうこと…しちゃいけないのかな…?
 「…俺が…ひよを手元に置いておいた方が安心なんだ」
 「僕だって!…瑛貴くんの傍のほう…がいい」
 瑛貴くんが手を伸ばして日和の頭を撫でてくれる。

 「傷は?どうだった?」
 「うん。来週抜糸」
 「そうか…。よかった…。いいけど、ひよ」
 「うん?なぁに?」
 「いいか、何かあったらすぐに言いなさい。小さい事だっていい。我慢もしなくていい。いいな?」
 「………」
 でも…。

 「ひよ。お前が本当に我儘なただのガキだったら俺はこんな風にひよを離せなくなるほど好きになることなどない。ひよがひよだからだから大事だし守ってやりたいと思う。中学校の頃のひよを守れなかった分も…。絶対にひよを守ってやる。だから…ひよも我儘なんて思わなくていい。それを言ったら俺の方がよほど我儘だろう?わざわざ親元から離してまで連れて来るんだから」

 「そんな事!…僕だって…だって…瑛貴くんの傍がいい…もん…。今日もね!いっつも家に帰ってくると…大村が来るんじゃないかって…ずっと嫌な風にドキドキして外も見られなくて…でも今日は違った!いつ瑛貴くん来るんだろうって…不謹慎なんだけど…楽しみにしてたんだ…だって明日も明後日もずっと瑛貴くんと一緒なんだって…思ったら…」

 「…一緒にいる」
 瑛貴くんが優しく微笑んで日和の頬を撫でてくれたのにきゅうっとまた心臓が苦しくなってドキドキが増した。
 だってこれから瑛貴くんちで夜二人きりなんだもん!当然だ!
 

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