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約束。 56

 「…おじゃましまぁす」
 「どうぞ。荷物そっちに狭いけどウォークインクローゼットあるから置いとくぞ」
 「…うん、…はい」
 瑛貴くんの部屋に来るのは初めてじゃないのになんか緊張しちゃって顔は熱いしドキドキが治まらない。
 ちょこんとテーブルの前に座って小さくなる。

 「ひよ、風呂は?」 
 「は、入ってきたっ」
 うわぁ、なんかなんか…心臓がすっごいうるさいんですけど!
 「じゃあ俺シャワーしてくるからお前はテレビでも見てろ」
 「……う、うん」

 瑛貴くんは全然普通みたいだ…。
 だって!ほら!戸田が…あんな事言うから…。
 テレビをつけて見るけど全然何も聞こえない。聞こえるのは自分の心臓のドキドキする音だ。
 なんか大村の事なんてこれっぽっちも全然考えてないのが自分でもおかしい。あんなに気にしていたのに今は瑛貴くんでいっぱいだ。

 そういえば瑛貴くんちで寝るのに…布団ってあるの?
 それとも…い、い、…一緒…?
 うわぁうわぁ、と目が回りそうになってくる。
 ヤバイ!どうしよう!…なんか倒れちゃうそう…。
 小さい頃は一緒に並んでお昼寝とか別に普通にしてたけど!だって今とじゃ全然気持ちが違う!

 好きは一緒で変わりないけど、でもそういう意味が分かる位一応は育ってるわけで!…でもちゃんとはよくは分かってないけど…。
 …一体さっきから何考えてんだろう!
 自分がテンバってる!

 「ひよ?なんか飲むか?って茶位しかないな…明日は買い物いかないと」 
 日和が一人でぐるぐる目を回してる間にシャワーから出てきたのだろう瑛貴くんの声の声が聞こえてびくん!と過剰に反応してしまう。
 「うん…の、む…」

 きゃー!ちょ!…なんで~!
 声のした方を振り返ったら瑛貴くんは半裸状態!暑いからか上半身裸で下だけパジャマのズボンを穿いてる。
 ドキドキがますます大きくなりながらも冷蔵庫を開けている瑛貴くんの背中に見入ってしまう。
 だってなんか自分の裸と全然違うんだもん…。

 「ほら」
 「あ、あ、ありがと…」
 「勝手に冷蔵庫とかも開けて飲んでいいぞ」
 「う、う、うん…わか、った…」
 瑛貴くんは半裸でビール片手。日和の為ににお茶をコップに入れて持ってきてくれたのを受け取り、くいと日和は緊張でカピカピになっていた喉を潤した。
 「布団敷くか?それとも一緒に寝る?」
 ひゃー!と悲鳴を上げたくなる!

 「い、い、い、い、……一緒が…いい…」
 コップを口に当てながら小さくなって、声も小さくしながらもお願いしてみる。
 「え?……あ…うーん……」
 瑛貴くんが苦笑してる。
 「……まさかそう返事がくるとは…」
 え…?
 あ、…もしかして瑛貴くんはやだ…?

 「え!あ!…の…別で…いい……」
 バカだ!
 恥かしくてかっと顔が赤くなってくる。瑛貴くんはふざけて聞いただけなんだ!最初から一緒なんて考えてもなかったんだ!

 「ひよ?」
 「……ごめ…なさい…」
 「……なんで謝る?」
 恥かしくて瑛貴くんの顔が見られない!
 目をぎゅっと閉じて顔を俯けなんでもないと首を横に振った。
 「ひよ…?」
 瑛貴くんが日和の隣に座ったのが分かったけど恥かしくて目を開けられない。

 「ひよ、こっち向いて」
 瑛貴くんの手が日和の頬に触れてくいと顔を上げさせられて思わず目を開けてしまった。
 目の前には瑛貴くんのかっこいい顔。
 「なんで謝った?」
 「だ、…って……瑛貴くん…やなの…に…」
 「あのな…いつ俺が嫌だって言った?」
 「だ、って…まさか…って…」

 「まさかだろうが。ひよから一緒に寝たいなんて言われると思ってなかった」
 「ど…うして?」
 「………〝寝る〟の意味ひよ分かってる…?」
 「わ、わ、…か…って……る…」
 …多分。ちゃんと全部じゃないけど。
 「いや、分かってない」
 はぁ、と瑛貴くんが溜息を吐き出した。

 「まぁいいや…。どうせまだひよには早いだろうしな」
 ………え?
 瑛貴くんが日和の頬を離してTシャツを着て、そしてまたビールをぐびりと飲んでいる。
 「ひよ。いいか?自分が悪いなら謝ってもいい。でも自分が悪くもないのに謝るな」
 瑛貴くんが日和の目をじっと見て言った。

 「……ひよから一緒がいいって言われて俺は嬉しいけど?」
 「………ホント…?」
 「嘘言ってどうするんだよ…バカだな…ひよ」
 瑛貴くんが軽くキスしてくれる。
 もうこれだけで来てよかったって日和は思ってしまう。

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