宗…。
名前を呼びたいのに…。
心が素直になれない。
買われたっていい。ずっといられるなら。
そう思っても心が悲しいと泣きたくなってくる。
宗の手が瑞希の服を脱がしていく。
もう毎日のように触られてながら、今まではやだ、とか言ってたけど、今はもう言えない。
買われた身では宗のいいように身を任せるしかないのだ。
「あぁ……」
どうしても出てしまう声を抑えようと瑞希は口を押さえた。宗にとったら男の声で喘ぐ声なんて聞きたくないだろう…。瑞希の声は嫌じゃないって言ったけど宗がいつ正気に戻るか分からない。
「瑞希…?抑えなくていい」
宗が瑞希の手を外そうとした。首を振ろうとしたがそれもやめて宗の手が瑞希の手を離させるのに任せた。
「瑞希?」
何でもないと瑞希は首をふった。
「痛くないようにするから」
身体が痛いのなんてどうでもいいのに。痛いのは心だ。
「んんっ……!」
宗の手が瑞希の乳首を捏ねるように摘めば甘い声が漏れてしまう。
宗の舌に転がされ宗の手が瑞希の下肢に這っていく。
もう瑞希のそこは宗の手に与えられる快感にすっかり起ち上がっている。
だって何度も宗が瑞希にそれを与えてるから。
そしてその後に来る後ろへの刺激ももう苦しいものじゃなくなっていて宗を待ち構えているような感覚になっている。
歯を食いしばって声が漏れないように、涙が出ないようにと瑞希は堪えた。
「瑞希…?……嫌、なのか…?」
違う…。
瑞希は首を振った。
「や、じゃない、から…」
「じゃ、声出せよ…。隣はいないから大丈夫だって…」
宗…名前を呼びたい。
「んんっ」
瑞希は違う、と首を振った。
「いい、から…宗の好きなように、して…」
宗がいいなら、だけど…。
「瑞希」
「あ、ぁっ!」
宗の手が瑞希の前にかかって瑞希は身体がひくんと反応して思わず声が出てしまった。
「瑞希…もっと声聞かせろ…」
宗が瑞希の耳元に囁いた。
こんな自分でもいいのならいくらでも。
宗の手が瑞希を追い上げてくると自然に腰が揺れてくる。
「瑞希…」
「あ、あぁっ…」
「いい…?」
こくこくと瑞希は頷いた。誰も知らなかったのに。キスも、こんな快感も。ううん、それだけじゃない。寂しいという気持ちだって、誰かといるのが幸せなんて気持ちも知らなかった。
宗だから、なのに。
好きだ。
好きなんだ。
たった何日かだけなのに。
「瑞希」
宗の声が、響く声が好きだ。
かっこいい姿も。宗が瑞希に対して何とも思ってもないのは買うって言っただけでも分かってる。
それでもいいから…。
今だけでいいから宗が欲しい。
金なんていらない。
一緒にいられればそれだけでいいのに。
「瑞希…?名前呼んでくれないのか…?」
「呼んで…いい、の…?」
「当たり前だろ」
そんな同等のように呼んでいいの?
だって宗は買ったんだよ?瑞希を自由にどうしたって、何したっていいのに。
それなのに宗は今も瑞希にだけ快感を与え、自分はまだなのだ。
「宗、は…?今日もし、ない…?」
「隣もいないのにするに決まってる」
「じゃ、俺、いいから…して…早く…」
宗が嫌にならない内に宗を感じたい。
「…分かった。ちょっと待て」
宗が瑞希から手を離すと枕の下からローションを取り出す。
「ひ…ぁ…」
冷たくて声が漏れたけどすぐに宗の指を中に感じた。
ぞくりと背中が粟立つ。
「…一緒に、な」
宗が瑞希にキスしながら囁いた。
なんでキスしてくれるの?
なんでそんなに優しくしてくれるの?
もっと好きになってしまう。
一緒に、なんて愛し合ってるみたいじゃないか。
今まで宗以外誰も知らないけれど、宗以外の誰かとこんな事するなんて考えられない。
宗だから、なんだ。
でもそんな事言えるはずない。
いいんだ、これは瑞希の心の中だけの事だ。
宗は違うんだから。
「宗っ」
呼んでいいと言ってくれた宗を呼ぶ。
「瑞希」
宗は指を瑞希の中でかき回しながら瑞希を呼び、そしてキスしてくれる。
舌を絡めて吸い上げて、指を増やして穿つ。
毎日解され、慣れさせられたそこはもう宗を待っている。
「ひくひくしてる…欲しい、か?」
「欲し、い…宗っ」
瑞希は自分からねだった。早く、宗が欲しい。
テーマ : BL小説
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