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約束。 64

 「高宮…」
 大村が手を伸ばしてきて日和は体を竦ませ、戸田の陰に隠れ自分の体を抱きしめて震えた。
 目の前にいるのが耐えられない。またあの日和を貶める言葉を吐かれるのだろうか?ここで?日和の学校の前で?やめて…っ!

 「高宮!戸田!」
 瑛貴くんの声!
 はぁ、っと日和は浅い息を繰り返す。
 そして瑛貴くんが日和の肩を掴んでくれてさらに安堵が増した。
 「…もう大丈夫だ」
 小さく瑛貴くんが日和の耳にだけ聞こえるように囁かれ日和はこくんと頷いた。

 「……喧嘩腰ではないようだな…ここでは目立つ。…来なさい。大村くんも」
 校門の前には生徒の人だかりが出来ていた。
 これじゃ確かに目立ちすぎる!日和なんて目立つなんて事なかったのに!
 瑛貴くんの手が日和を守るように肩に置かれているのに安心する。

 そして戸田が大村を警戒しながら職員入り口の方から学校に戻った。大村も静かに後ろからついてくる。
 他校生が入ってきたのに学校の中の生徒もどうした?と伺っているのがわかって恥かしくなってきた。でもすぐに瑛貴くんは会議室に入り、戸田も大村もついてくる。
 瑛貴くんに任せておけば大丈夫…そう思いながらも体は小刻みに震えていた。

 「高宮…大丈夫だ」
 ひよ、じゃなくて高宮だけど、日和を守るように方を抱いてくれながら耳元に聞こえる瑛貴くんの声に日和はこくこくと小さく頷く。
 「……キミは一体どうしたいんだ?」
 会議室に入るとドアを閉め立ったままで瑛貴くんが大村に声をかけた。瑛貴くんは日和を離し、日和の前に立ってくれ、戸田も日和の隣に立っていた。
 「……高宮と話がしたいだけだ」

 「話?…高宮がこんな状態なのに?」
 大村が顔を上げて日和を見たのに日和は体を縮こませる。
 すると大村が顔を歪めた。
 「…違う…。そんなつもりじゃ…」
 「きみがそんなつもりじゃなくとも……高宮は実際に怪我もしているし、…それ以前の事もあるだろう?」

 「知って…るのか?」
 瑛貴くんの言葉に大村が顔を上げた。
 「聞いた」
 瑛貴くんが大村と話すのを日和も戸田も黙って聞いていた。日和は口を開けないだけだったけど。。
 「それも…そんなつもりは…」

 「軽々しくそんなつもりじゃなかったなんて一言で終わらせるのか?人に深い傷を負わせて?震えさせているのに?」
 瑛貴くんの声が硬い。
 ……怒ってる…?
 瑛貴くんが怒ったとこなんて見た事なかったけど…。
 日和は顔をあげ斜め後ろから瑛貴くんを見上げた。険しい表情だ。
 「でも!本当に!…本当は…あんな事思ってなかった!高宮は…」
 「…………」

 戸田と瑛貴くんが顔を合わせ、そして溜息を吐き出した。
 「そんなつもりはなくとも高宮に傷は残っている。額の傷も心の傷もだ。お前が姿を見せるだけで震えて真っ青になるんだ。高宮の事を少しでも考えるなら二度と姿を見せないことだな」
 「……謝りたかった…んだ…ずっと…。高宮…すまない…。怪我の事も…その前の事も……俺…」
 「高宮?こう言ってるけど?」
 大村の言葉を途中で止めて瑛貴くんが日和のほうを振り向いて視線を向けてきた。

 「…怖いんだ…。思い出したくない…」
 日和が小さく呟くように言うと大村が泣きそうに顔を歪めた。
 「すまな…かった…謝っても…消えないけど…二度とあんな事は言わないし…傷つけることもしない…」
 「…………うん……」
 「……いいのか?」
 瑛貴くんが日和に確かめるのに小さく頷く。
 「…戸田。大村を校門まで送って来い」

 戸田が手を上げて了解と意思表示して会議室のドアを開けた。
 「高宮…っ!…本当にすまなかった…」
 大村が謝るのにも日和は顔をあげる事は出来なかった。謝られても苦痛だった時間が消えるわけじゃないんだ。
 「…ガキがっ」
 ドアが閉まるとチッと舌打ちしながら瑛貴くんが言い捨てた。

 「ひよ…もう大丈夫だ…な?」
 今の言い捨てた口調とは大違いの優しい瑛貴くんの声に日和はくすっと笑ってしまった。
 「大丈夫だよ?」
 「よし、戸田戻ってくるの待って送っていこう」
 「え?」
 「学校に説明してくるからひよはそのままここで待ってろ」
 「…うん」

 「今日は動揺してるから送っていくって事にしておくから…。お母さんにも帰ったら連絡。…どうする?家帰るか?」
 「……今日は瑛貴くんちに泊まってもいい?」
 「…ああ」
 瑛貴くんが優しく日和の頬を摩った。
 「…抱っこされたい」
 「甘ったれだな。…待ってろ」
 瑛貴くんが出て行くと変わりに大村を送って行った戸田が戻ってきた。

 「あれ?月村は?」
 「家まで送ってくれるって…。今説明と送ってくれるの…言ってくるって…」
 「………ゲロアマ」
 戸田がべっと舌を出していた。
 「そんで俺は隠れ蓑だもんな…月村にしたら俺なんかいらないんだろうけど」
 やれやれと戸田が肩を竦めた。
 「…でもよかったな?一応一件落着じゃん?」
 「……うん。…戸田もありがとう」
 「別に?俺はなんもしてねぇし!」
 でも…本当に…よかった。
 

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