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約束。 65

 「ひよ」
 一緒に瑛貴くんの車に乗った戸田を先に家まで送ってから瑛貴くんのアパートに。
 ドアを閉めた途端に瑛貴くんが抱きしめてくれた。
 そしてキスを何回も交わす。

 「瑛貴くん…ありがと」
 「俺は別になんもしちゃねぇ。…でも一件落着だ…一応な」
 「……うん」
 「あと俺は学校に一回戻るけどなるべく早く帰ってくる。…傷も痕は残っているが治ったんだ…。傷も俺がいれば……」
 瑛貴くんは日和の傷にそっと触れながら眉根を寄せて呟くのを見て日和は首を横に振った。
 「瑛貴くんも戸田も自分の所為って言いすぎ!どうして?瑛貴くんの所為でも戸田の所為でもないのに!」

 「…戸田も?」
 「そ!この傷、自分の所為だって」
 「それは戸田のせいじゃねぇよ!それは俺の所為だ」
 「どうして!?瑛貴くんの所為でも戸田の所為でもないのに…」
 「どうしても!……だから責任を俺が取ってやらなきゃないんだ」
 じっと瑛貴くんが日和を見つめる。
 …………。それって…。

 かぁっと日和は顔が熱くなってきて俯いた。
 「……じゃ、じゃあ…瑛貴くんの所為でいい…」
 「だろ?」
 くっと瑛貴くんが笑って傷にある額に軽くキスしてくれる。
 「ひよはお母さんに電話して報告しとけ。お母さんも心配だろうから」 
 「うん」

 瑛貴くんが学校に戻って行って着替えをして落ち着いてから日和は母親に電話をして報告した。大村が学校に来てちゃんと話をした事、もう大丈夫、と。それと帰るのは明日にするとも伝えた。
 でもそうすると帰らなきゃいけないんだ…。
 もっと瑛貴くんと一緒にいたいけど…。
 少し着替えを置いていってもいいかな?また来てもいい?

 …うん。忘れたふりして置いていっちゃおう!
 だって…瑛貴くんが責任って…。怪我させました、責任とって…結婚って事?
 ばか!何考えてんだよ!と自分に突っ込む。男同士なのに結婚とか無理でしょ!…ホント小さい頃から日和は何も変わってないんだから…。
 でも…どこかの国…アメリカ、フランスだっけ?同性でも結婚って…

 「…バカ」
 何を真面目に考えているんだ…。自分で慌ててしまう。こんな余計な情報は知ってるくらい大人になっているけど、まだ子供。でも瑛貴くんは責任とるって…言ってくれたもん…。
 それが嬉しくて…。つい日和の顔が緩んできてしまう。
 そして…早く瑛貴くんが帰ってきてくれれば今日はもう安心してくっ付いていられる。
 今日はまだただくっつくだけでいい。瑛貴くんがお母さんに言った言葉があるから…。
 でも今度は………くす、といたずらっ子のように日和は笑いを浮べた。

 学校の仕事を早く終わらせて帰ってきた瑛貴くんの背中にへばりついてその日はそのまま一緒に寝て、そして次の日も普通に学校に行ってそして夜には瑛貴くんに送られて自宅に帰った。
 よかった…とお母さんが安心したように笑って瑛貴くんと話していたけど日和が思っていたのは瑛貴くんとの事だった。

 まだ瑛貴くんの所にいって一週間も経っていないのになんでうちがこんなに懐かしい感じがするのだろう?
 それ位瑛貴くんの部屋にもう慣れていたんだ。
 送ってきてくれた瑛貴くんが帰るのが嫌で瑛貴くんに来て、と日和は自分の部屋に瑛貴くんを連れ込んで抱きつく。
 …瑛貴くんと離れたくない。こんなに自分は我儘なんだ。

 「ひよ…俺の部屋の鍵、そのまま持ってていい」
 「え!……ほ、ほんと…?」
 「ああ」
 そういえばずっと持ったままだったけど…そのまま…?
 瑛貴くんに鍵は渡されていたけど結局まだ一回も日和はつかっていなかった。土日も一緒だったし、今日も送ってきてもらったから…。でも返さないで持ってていい…?ホント…?

 「…うんっ……あの、また瑛貴くんの部屋…行っていい?」
 「いいから鍵持っとけって言ってるんだろ」
 「……うん」
 着替えを瑛貴くんの部屋に置いてきたのは内緒。瑛貴くんが帰る用意したか?とアパートに帰ってきてすぐ聞かれ、日和はそれに頷いてそのまま荷物を持って帰ってきたから。
 瑛貴くんは気付くかな…?

 一つずつ日和の中で確信が増えていく。瑛貴くんが言ってくれた責任と鍵も…。
 小さい頃の約束がこんな風になっていくなんて…。
 「…瑛貴くん、土曜日ってお休み?」
 「休みたいとこだが、昨日今日で時間潰した分少し出ないと間にあわねぇかな…夏休み近いし。でも夕方までもかかんねぇ…かな」

 「じゃ僕…あの…行ってて…いい?」
 「……いいよ」
 「うん…あのね…うち帰ってきたの…ちょっと寂しい…朝起きた時きっともっと寂しい…瑛貴くん…いないのが…」
 毎日目が覚めると瑛貴くんの腕と顔が合ったのが今日からまたなくなるんだ…。
 「…俺も…ひよのおかえりがなくなるのが残念かな…」
 「じゃあ僕行く?」
 毎日だって日和はいいんだ!

 「ばぁか。お前はまだ高校生だ。攫っていくわけにいかねぇよ」
 攫ってくれていいのに…。
 「これから先毎日一緒にいられる日が来るんだから焦る事ない。そうなったらひよが嫌だって言っても離してやらないし?」
 「……嫌なんて言わないもん」
 言うはずない。
 でも今日は我儘はいい。何も言わない!瑛貴くんがお母さんに言った責任を持って預かりますを終わりにさせなきゃないから。
 「ひよ」
 瑛貴くんが手を広げてハグしてくれるのに日和は身を任せた。

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