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約束。 66

 そのまま何事もなく週末になった。
 家に帰るとやっぱり瑛貴くんが足りないと思う。小さい頃と違って瑛貴くんが傍にいてくれるわけじゃないのがちょっと寂しい。それに少しの間一緒にいた事で瑛貴くんが足りない、に拍車がかかった気がする。

 毎日瑛貴くんはまた10時に電話をくれるようになった。もちろん瑛貴くんの声を聞けるだけでも嬉しいけど、ちょっとしたキスも出来ないのも寂しい。瑛貴くんの家にいた時は寝る時だって瑛貴くんを感じられたのに…。
 戸田がえっちしたって変わらないんじゃないのか、と言っていた事があったけど…もしかしてもっと寂しく感じてしまうかもしれないかも、とは思う。だって抱っこで足らなくなって、キスで足らなくなって…もらってももらっても足りなくなっていくんだ…。

 「……我儘…」
 ぺちと自分の頬を叩く。
 でも今日は土曜日で瑛貴くんは学校に行ってるけどでも瑛貴くんの部屋で待ってて今日は会えるんだ。
 「瑛貴くんち行ってくるね~。あ、泊まってくるかも」
 「瑛貴くんの迷惑じゃない?そんなにそんなに」
 「ううん。いいよ、って言ってくれてる」
 ……そんな事言われてないけど。

 「…小さい頃から一緒にいるから気を遣ったり気兼ねしてないだろうとは思うけど」
 「うん。瑛貴くんダメな時はダメってはっきり言うもん」
 「瑛貴くんの迷惑じゃないならいいけど…」
 すっかり瑛貴くんは信用されちゃってるから泊まるのも楽勝だ。
 「小さい頃結婚する!って泣いてたのにねぇ」
 「そ、そ、それは!今言わなくてもいいでしょっ」

 かっと顔が赤くなるけど、からかわれてるのに動揺してると思われるはず。本当は今も気持ちはそのままで照れちゃってるだけなんだけど。
 「ちょっと待ってて。冷凍庫に作り置きで入ってるの持っていきなさい。瑛貴くん一人暮らしであんまり手料理って食べてないでしょ?」
 「簡単なのは瑛貴くん作るけどね。……僕料理覚えて作ってあげよっかな…」

 ぷ、っとお母さんに笑われる。
 ……言いたい事は分かってる…。
 「…今度教えてあげようか?」
 「…うん」
 恥かしいけど、やっぱりそこは頷いておく。お母さんは何も疑ってそうにないから…ま、いっか。
 冷凍されたおかずを貰っていってきますとうきうきとしながら日和は家を出た。

 泊まるかも、と予防線を張っておけばもし泊まってよくてもダメでも家は大丈夫だ。
 …問題は瑛貴くんだ…。帰れ、って言われちゃうかな…?送ってく、って…言われちゃうかな…?
 ドキドキする。
 誘うってどうしたらいいんだろう?戸田に言われたようにお風呂上りに裸?……でも日和の身体じゃ…。

 バス停に並んでバスを待ちながらじっと自分の身体を見下ろした。
 ペタンコの胸。…当たり前だけど。そういえば本間先生と噂があったって…。グラマラスな身体のラインを思い出せばぶんと日和は首を振った。
 だって!瑛貴くん好きって言ってくれるし、大事って言ってくれてる。…言われたからって自分の自信に繋がるわけじゃないけど…。

 一回瑛貴くんの手が日和の肌を撫でた時の事を思い出した。
 キスしながら背筋を辿られて瑛貴くんの手がTシャツの中に入ってきて…。
 思い出してかぁ~っと顔が赤くなってくる。
 今までなるべく思い出さないように。小さい頃のようにを心がけていたけど…今日は…。
 身体の奥が熱い。
 もうずっと瑛貴くんの事を考えるとどこか身体の芯が麻痺してくるように思えてくる。

 まだだめ…。
 瑛貴くんに泊まっていいと言われるまでこんなやらしい気持ちは隠しておかないと。
 …きっとこんな気持ちを表に出したら送って行く、帰れ、って言われるはず。瑛貴くんが日和をまだ子供と思って、手を出す気がないのはなんとなく感じていた。キスもあくまでも子供の頃の延長だ。そこに情欲はない。…あったのは深いキスの時だけだ。

 瑛貴くんの視線が熱くで焦がれそうになったのもその時だけ。あとはいつも情愛だけだ。
 泊まっていいと言われるまでは隠しておかないと…。
 …最終的にどうさるかなんてよく分かってもないのに自分がこんな事考えてるなんて…瑛貴くんにばれないようにしなきゃ。
 だって…して欲しい…なんて…やらしい子だって思われちゃう…。

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コメントやメール等お返事なかなかできなくてすみませんm(__)m

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