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約束。 67

 瑛貴くんから部屋に着いたらメール入れとけと言われてたので着いたよ、と瑛貴くんにメール。
 4日ぶり位の瑛貴くんの部屋だ…。
 あ、置いていた日和の着替えはそのままになってるかな…?とウォークインクローゼットの方を覗いて見るとちゃんと日和が置いていったままになっている。…瑛貴くん気付いてないかも。

 ふふ、と日和は一人で満足してリビングのテーブルの所にちょこんと座った。
 なんか落ち着かなくて浮かれてる気がする…。
 浮かれすぎて母親に持たされたおかずをまだしまってなかった!と慌ててバッグから出し、冷蔵庫の中へと片付ける。
 部屋…掃除機かけとこうかな…。

 落ち着かなくてじっとしていられないので掃除機をかけお風呂場も洗っておく。部屋が散らかっているわけじゃないけど、余計な物には手を触れないでおく。
 あと何しよう?と落ち着かない自分を紛らわすものを探すけど、なさそうだ。
 どうしようかな…と思ったら電話が鳴って飛びついた。

 『ひよ、今学校出た』
 「うんっ」
 思わず声が弾んでしまう。
 「気をつけて帰ってきてね!」
 『…ああ。じゃちょっと待ってろな?』
 「…うん」
 もうすぐ瑛貴くんが帰ってくる。

 日和はドキドキそわそわしながら瑛貴くんの帰りを待つ。落ち着かなくて部屋の中を行ったり来たり。
 だって自分の家に帰ってから瑛貴くんには全然くっついてなかったんだもん!
 「あ!」
 がちゃっとドアの鍵の開く音がしてぱたぱたと玄関に向かった。
 「おかえりなさい!」
 瑛貴くんに勢いよく抱きついた。

 「…ただいま…ひよ」
 瑛貴くんが優しい声で呼んでくれて頭を撫でてくれたのに心が温かくなる。
 やっぱり一緒にいられるのがいい!
 「……やっぱいいな、ひよにおかえり言ってもらえるの」
 ……瑛貴くんにそう言ってもらえるのが嬉しい。そして同じ気持ちなのが嬉しい。
 ぎゅうっと瑛貴くんに抱きつく力を強くすると瑛貴くんも抱き返してくれた。

 「ひよ」
 呼ばれて顔を上げると軽くキスされる。
 足りなかった分が補充されていくみたいに気持ちが舞い上がってくる。
 「あのね!お母さんにおかず貰ってきた!………泊まってもいい?」
 「………」
 困ったような顔をしてる瑛貴くんにさらに日和が言葉を足す。

 「お母さんには泊まってくるからって言ってきた!……瑛貴くんが嫌だ…って言うなら…帰る…」
 瑛貴くんは嫌、というのと違うはず!…そう自分に言い聞かせながら日和は瑛貴くんの顔を窺った。
 日和が子供だから困る、が正解であってほしい…。
 「……お前…着替えわざと置いてっただろ?」
 「………………うん」
 あ、やっぱり気づいてたか…。へへ、と笑うと瑛貴くんも苦笑していた。

 「…ダメだ…って言ったほうがいいんだろうが…」
 「よくない!だって!…僕、一緒いたいのに…」
 「俺だって…そりゃ…」
 「どうしてダメなの?……やっぱり…僕…迷惑…」
 「違う…」
 はぁと瑛貴くんが溜息を吐き出す。
 日和は自分でもなるべく子供っぽい感じになるようにと心がけた。だって瑛貴くんにダメだ、って言われたら終了だ。

 「仕方ないな」
 「やった!」
 自分で図々しい、と思いながらも許可が出て瑛貴くんの首に飛びついた。
 …よかった。
 でも…いいのだろうか…?誘って、なんて事日和には難しいけど、出来るかどうか分からないけど…それで嫌われたりしない…?
 何する、って瑛貴くん怒ったりしない…?

 「ひよ?どうした?…お前が嫌だって言ってるんじゃないぞ?」
 日和が黙ったのに瑛貴くんがちょっと焦っているようにした。
 「…うん…。でも…ホントに…瑛貴くんがダメなら…」
 「ダメでも嫌でもないんだ。ひよ…俺の問題だ」
 「瑛貴くんの?」
 「そ。なかなか自分を信じきられない…」
 「?」
 自分を信じる?
 瑛貴くんがまた苦笑してた。

 「いい。…ほら、こい」
 玄関先でずっと抱き合ってた腕を解いて瑛貴くんが日和の腕を引っ張ってリビングの方に行く。
 「着替えてくる」
 「うん」
 スーツを脱いで着替えに行っている間にお母さんにメールで瑛貴くんちに泊まる、と入れといて完了。

 ……なんかずるい気がするけど…。
 図々しくて、ずるい。おまけに瑛貴くんを試すような真似をするんだ。
 …でも、それでもやっぱり瑛貴くんが欲しい。
 瑛貴くんが子供だって思っている事は分かっているけど、勿論瑛貴くんに比べたら子供だって分かっているけど。それでも気持ちはもうこの先も変わらない。絶対に。
 

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