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熱吐息 dolce~やさしく~4

 「だいぶ柔らかくなってるから大丈夫だとは思うが…。痛かったら言えよ」
 宗は起ち上がってる自身を瑞希に宛がいながら言った。
 そんな事いいのに。
 「はっ……ああぁっ!」
 指とは全然違う質感の宗が瑞希の中に入ってきた。
 宗が…。
 瑞希に歓喜が沸き起こる。
 こんな身体でも宗は萎える事なく瑞希の中に進んでくる。
 ローションのぬめりと宗の指によって柔らかくほぐされた瑞希の後孔は悲鳴を上げながらも宗を飲み込んでいく。
 「瑞希…」
 瑞希の背が反ってくる。
 それでも宗が自分の中に入ってると思えば嬉しくて。
 「宗…」
 「…痛くないか?」
 圧倒的な圧迫は感じるけれど痛いというほどではない。
 「…たくない……」
 宗の手が瑞希の頬を撫でて来た。
 「いい、…宗…がよけれ、ば…好き、…して……ぁう、んっ」
 「明日は瑞希は休みだろ…するさ」
 宗が抽送を始めた。
 「こうしたかった。瑞希…」
 そう思ってくれるならよかった…。
 瑞希は飢えてる。
 人に。愛情に。
 それこそ本当に一人だった。
 親にさえ捨てられたのだから。
 こんな自分を必要としてくれる人なんているはずない。
 金で買われたにしたって今、ここで宗が瑞希を求めてくれるならばそれでよかった。

 それなのに、寂しい。
 それなのに、足りない。

 そんな事思うのでさえもおこがましい事なのに。
 それでも訴えてくる心を止められなかった。

 テーブルに置かれた紙袋が瑞希の視界に映った。
 見たくない。
 自分は金のせいで宗に抱かれるわけじゃない。
 でも宗は違う。
 突きつけられているようだった。

 
 翌日もバイトは休みで何度も宗に貫かされた。
 朝も昼も関係なく。
 疲れて眠って。
 その度に身体は綺麗にされてた。
 宗が買ってくれてたテイクアウトの料理を食べて、また宗は瑞希を抱く。
 宗にしがみつきながら瑞希は泣いた。

 まさか自分が金で買われて、なんて絶対ない事だった。
 そんな事最低だと思っていた。
 苦しくたって、何だって人に蔑まされるような事はしない、と散々小さな頃から穿った目で見られることに極度に嫌悪していたのに。

 堕ちた…。
 目の前の欲望に。
 金じゃなくて、擬似の優しさと愛の欲しさに。
 だって誰も瑞希の内側に入ってきた人などいなかった。
 入れなかった。
 なんでこんな風になってしまったのだろう。
 どうして宗は優しくするのだろう。
 錯覚してしまう。
 瑞希を気遣って、丁寧に、優しく瑞希に触れる。
 瑞希の身体で宗を知らない所はもう一つもない。
 全部、全部宗のものだった。

 宗は飽く事はないのか、何度も瑞希を抱く。
 抱いていない時でもどこかに触れている。
 言葉をかけてくれる。
 でもむなしかった。
 テーブルに置かれたままの紙袋。
 見たくない。触りたくない。
 それがなかったら…。
 それがなかったら愛されていると思えるような宗の態度。
 それがあるから違う。

 瑞希は宗のきっと新しい、珍しいおもちゃ。
 名前を呼べ、と言われれば呼ぶ。
 本当は自分からそうしたいけれど、抑制しないと瑞希の心の全部が宗に向かってしまう。
 違うんだから。
 飽きるんだから。
 女にだって苦労してないだろう宗が自分なんかをいつまでも欲しがるはずはないんだから。
 物珍しいだけだから。
 金で人を買える人なんだから。
 割り切って貰えばいい。
 従順になればいい。
 どうせ今だけなんだから。

 違う!
 自分はそんなつもりなんかない。
 宗だから、なのに。
 車で怪我させてしまって、それなのに優しくする人。
 瑞希の境遇を聞いても一つも態度の変わらない人。それどころかかえって甘やかす人。
 金だって瑞希が自分から買ってと言ったのだ。
 それに乗っただけ。
 それなのに優しくする
 …残酷な人。
 きっとそのうち飽きて捨てられる。
 当たり前だ。
 どうみたってぽんと1千万を出す人がこんな所にいていいはずなどない。
 世界が違いすぎる。
 今は気に入ってくれているらしいけど、そんなのいつ終わるかなんて知らない。
 ある日突然いなくなってるかもしれないのだ。
 だって知っているのは名前と携帯と家族構成位。
 住所も仕事も年も知らない。
 
 

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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