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約束。 86

 「ん、ぅ…」
 ゆっくりと瑛貴くんの硬くそそり立ったものが日和の中に入ってきた。
 いつも初めはキツくて違和感。でも…。
 「日和」
 ぎゅっと力の入った日和の身体を解すように瑛貴くんがキスを繰り返してくれる。

 「好き…」
 ずっとずっと…もう小さい頃から。なんて一途なんだろうと自分でも呆れるし戸田にも呆れられるけど。
 「ああ、ひよ…日和…俺も日和が好きだ。年10コも違うのにな…」
 「関係…ないもん…」
 年なんて全然好きに関係ない。見た目とかに関係があってても気持ち的にはなにも問題ないんだ。

 ずっと小さい頃から大人になったら瑛貴くんと結婚するんだ、と思っていた。
 花嫁になりたいと思った事はなかったのに結婚するんだ、と。
 女の子ならお嫁さんにして、だろうけど、それも思わなかった。ただ結婚すれば瑛貴くんと一緒にいられる、それだけだった。
 男の子はお嫁さんになれないと言われて別にお嫁さんになりたいわけじゃなくて瑛貴くんと結婚したいんだと駄々捏ねた。

 瑛貴くんに男同士は結婚できないって言われて、泣いて家に帰ってお母さんにも同じ事言われてまた泣いて。
 …思い出してくすと笑ってしまった。
 「日和?余裕すぎるぞ?」
 面白くなさそうに瑛貴くんが呟いたのに笑ってしまった。
 「違うよ…思い出して…瑛貴くんと結婚するんだ、って…ずっと言ってて…別にお嫁さんになりたいって思った事ないのに…瑛貴くんとは結婚したくて…」
 
 「………何回も泣いてたな」
 「だって…僕が言う度に皆して出来ないって言うんだもん」
 それで瑛貴くんが約束してくれたんだ。
 「あの…約束とキスが…ずっと支えだった…大きくなったら考えてくれるって…でもさすがに…高校入って…瑛貴くんと会えたけど…まさか…言えなくて…」
 
 「俺も…まさかひよがちゃんと覚えているとは思ってもなかった…」
 それ位小さいながらも真剣だったんだと思う。
 「…そうだな…結婚はやっぱ無理でも…ずっといる」
 瑛貴くんがそんな事言ってキスした。
 「やだな。瑛貴くん、外国行けば結婚出来るよ?」

 「…………………本気か?」
 「え?瑛貴くんは…そこまでじゃないんだ…」
 「そうじゃないけど…その前に……日和を下さい……言わなきゃないのか?」
 瑛貴くんが眉間に深い皺を刻んだのにまた笑ってしまった。
 「その前にプロポーズ…?」
 「え?…さっきのプロポーズじゃないの?」
 「どれが?」
 「だって…日和の過去も現在も未来も体も心も全部って」 

 「あ~…うん…じゃ、それで」
 「それで!じゃない!なんだ…プロポーズは別にもらえるんだ?」
 「いや。それでいい」
 「……おざなりな返事~」
 「そんな事はない。真面目に。気持ちはそういうつもりだった」
 「………うん」
 瑛貴くんの首に回していた腕に力をこめる。

 そしたら瑛貴くんが笑い出した。
 「日和………面白いなお前…」
 「面白いって!真面目なのに…小さい頃からの夢だよ?瑛貴くんとの結婚って」
 「…そっか…」
 瑛貴くんの目が優しい目になった。きっと小さい頃の日和を思い出してるんだ。
 「瑛貴くんは…違うだろうけど…」

 「まぁな…俺は結婚なんて出来ないってもう分かってたし…。お前と同じ年だったなら一緒に思ったのかもしれないが…いいけどひよ…」
 「うん…?…あっ」
 日和の中に入ったままだった瑛貴くんがぴくんと動いたのにざわっと肌が粟立った。
 「もう動いていい?限界」
 「…ん」

 日和の戯言で中断していたセックスが再開する。
 瑛貴くんが大きく腰を引きまた奥にと抽送を繰り返してきたのに顎が反った。
 そういう気持ち…一生一緒に…?
 勿論返事は〝はい〟だ。

 「瑛貴くん…ぁ…」
 瑛貴くんの身体が汗ばんでくる。日和の身体も。
 瑛貴くんが律動を繰り返すたびに身体を揺さぶられ汗が混じり、吐息が混じる。
 後ろを穿たれこんなに嬉しいと思うなんて…。
 瑛貴くんじゃなかったら考えられない事だ。
 「はや、く…ぅ…」
 もっと奥に欲しい。
 深く深く。

 ぎゅうっと瑛貴くんを逃がさないように言わんばかりに締め付けてしまう。
 「そんな締めるな…」 
 「あ…ぅ…だ、だって……」
 「いくらでもやるっていっただろ…日和…」
 さらに激しく瑛貴くんが衝いてくるのに日和は背中を仰け反らせ快感を追った。
 全部…貰って…。全部あげる…。

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