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熱吐息 dolce~やさしく~7

 アパートに帰ると青桜の制服があった。
 「…今日、取ってきた」
 瑞希がそれに固まってると宗が答えた。
 「……本当、に…高校生?」
 「本当。4月から大学。なぁ、瑞希のとこいていい?」
 「…親御さんに挨拶…」
 「だからウチいないって」
 あ、そういえばそう言ってた。
 でも、まさか勝手に…。
 「別に親も気にしねぇよ。親父には言ってきたし」
 「言ってきた?何が?……」
 瑞希はすとんと床に座った。
 「ちょっと待って。……じゃ、宗が出してたお金…」
 「あれは俺のだ。親のじゃないから気にしなくていい」
 「はぁ?」
 「だからいていい?」
 「…………わけわかんない」
 言ったって何を?
 俺の金って?
 高校生?
 ぐるぐると頭の中を色々な事が回り巡って何から考えていいのか分からなくなってくる。
 「とにかく明日から学校、行く。ここから」
 断定的に宗が言った。
 「飯。買ってきたから」
 高校生に奢られてたってこと?
 まぁ、宗を見れば普通の高校生でないことは確かだろうけれど。
 瑞希が何も考えられないまま宗はごまかすように弁当を出してきた。
 「親の金は使ってないぞ」
 「じゃ、どうやって!?普通ないでしょ!」
 「ちょっと株とか動かして」
 「…………」
 瑞希は胡乱げに宗を見た。
 「ほんとだって。そのうち見せてやる」
 見せてやる…?
 「だからいていい?」
 さっきから何度も宗が瑞希に確認をとる。
 そりゃ、瑞希はいてほしいけど…。
 高校生…。
 じっと宗を見るけど、どうやっても高校生には見えない。
 はぁと溜息をついて頭を抱えた。
 どうしたらいいの…?

 だめに決まってる。
 決まってるのに瑞希は宗を離したくない。
 でも高校生。
 でもいてほしい。
 でも宗は別に瑞希が好きじゃなくて…。
 瑞希ははっとした。
 あの、袋に入ったお金は!?
 宗は親の金じゃないっていうけれど。
 瑞希は立ち上がってさわりたくなないけどそれを手にとって宗に渡した。
 「返す」
 「なんで!?」
 「なんで、じゃないだろ!高校生が、買うとか、こんな金…」
 「俺のだ。どう使おうといいだろ。受け取らない。俺はお前を買ったんだ」
 宗は瑞希から袋を取り上げまた引き出しに仕舞った。
 「とりあえず今よこされたってどうしようもない」
 「でもいらない」
 瑞希が言い切ると宗は眉尻を下げて複雑そうな顔になった。
 「…出てけって言う、のか…?」
 「言ってないだろ!」
 宗がなんでそれを問うのか。
 「じゃ、いていいか…?」
 宗が伺う様に瑞希に聞いてくる。
 買ったと言っておきながら宗が伺ってるのがおかしい。
 買ったというなら自由にするのは宗のはずだ。なのに…。
 「なんなの……いったいどうすれば…?」
 「瑞希」
 とにかく飯食おう、腹減ったと言われれば瑞希は何も言えなくなって、もそもそと宗が買ってきたものを食べた。
 これだって、食費だってガソリン代だって全然瑞希は出してなくて、全部宗が先駆けして買ってきたり入れたりしてるのだ。
 どうすればいいのか。
 自分は高校生に抱かれて喜んでいたのか?
 自己嫌悪で泣きたくなってくる。
 「瑞希っ」
 宗が慌てた声で呼んできた。
 高校生。
 それなのに、やっぱり高校生には見えなくて。
 大人じゃなかった。
 騙された、わけでもないらしいけど。
 これじゃ騙したほうは瑞希のほうだろう。
 情けない…。
 瑞希の方が大人なはずなのに。
 宗が瑞希の身体を抱きしめてきた。
 大きい身体が高校生?
 信じられない、けど、電車とかで見る高校生を思い出せばやっぱりずっと瑞希よりも身体の大きい子だっている。
 まぁ、それはいい。
 やっぱりどこまでいったって問題はお金のことだ。
 返すと言っても宗は受け取らないと言う。
 やっぱり買ったと言う。
 高校生に買われるってどうなの…?
 瑞希は泣きながらくすくすと笑った。
 「瑞希!?」
 「いいよ。好きにして。なんでも、宗の好きに」
 だって瑞希はもう宗がいないのは考えられない。
 高校生はちょっとショックだったが、それでも宗は宗で、拒否していなくなられる方が耐えられないと思う。
 抱きついて宗に瑞希は自分からキスした。
 好き、なのに…。
 
 
 

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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