でも三塚はどうして…?いや、さっき冗談めかしていたが…。
そういう意味でここにいる…のか?
「味付けはどうです?」
「あ、おいしい…よ。…雑炊もうまかった」
「?………どうかしました?」
手に持っていた取り皿をテーブルに置くと隣に座っている三塚が凪の顔を覗き込んできた。
「その…三塚は…そういう意味…でここ…にいる、のか…?」
おや?というように三塚が器用に片方の眉だけぴくんと上げた。
「そういう意味ってどんな意味?」
「だ、だからその…」
僕を抱きたい、のか?…とも聞けない。それじゃまるで自分が自惚れているようじゃないか?
でも…わざと三塚は凪の耳元で囁いたり、さっきみたいに起きる時に背中に触れたり…そんなのいくら人とあまり接触しない凪だって普通はしないという事は分かる。
自分から言い出しておいてどうしようとうろたえると三塚がくすりと笑った。
「そういう意味がどんな意味かは分かりませんが。凪を欲しいのか?という意味だったら答えは、欲しい、です」
三塚の答えに凪は目を見開いた。
「そうじゃなきゃこうして今ここにいるわけないでしょう?ただの知り合いの為にわざわざ迎え行ったりご飯の用意なんてしませんけど?」
…そりゃそうだ。
ただの親切かとも思ったけど、まさか、そんなはずない…。
「そういうつもり…僕にはない、…から」
「そう?でも俺の事嫌いじゃない、ですよね?」
それはもう断定的な言い方だ。
「嫌いじゃない…けど…」
緊張してくる。心臓が早鐘を鳴らしているようだ。そして三塚の視線が凪の視線と絡まって、だがそれを外す事が出来ない。
「凪にそういうつもりはない、というのはどういう意味?俺なんか相手に出来ない?」
「違う…。そうじゃない…。僕は誰ともそういう付き合いをするつもりはないから…」
「はぁ?……なんですかそれ…枯れてるんですか?」
「枯れてない!」
「枯れてるのと同じでしょう。…そういう付き合いって?恋人を作らない?じゃあセフレはあり?」
「なしだ!」
かぁっと真っ赤になってしまう。
「ああ…すみません…ヴァージンでしたね…」
どん!と三塚の脇腹にパンチした。
「あ!何してるんですか!ピアニストの手がそんな事しちゃダメでしょう!」
慌てて三塚が凪の手を取ると凪の手を確認している。
「それ位どうってことない」
三塚から手を離そうとしたらぎゅっと手を握られて三塚が手を離さない。
「…離せ」
「嫌、かなぁ…」
嫌かなって!どんな返事だ!…と思ったら凪の手を掴んだまま三塚がにじり寄って来た。
「ちょ、っと…近づくな」
「どうして?何とも思ってないなら平気でしょう?」
ソファの端の方に凪も身体をずらしていくがさらに三塚が追い詰めてくる。
そしてずいと顔を近づけて来た。
「凪が欲しいと先ほど言いましたが、身体だけの事じゃないですよ?心も欲しい…」
やめろ。声が…。
凪が身体を竦ませてぎゅっと目を閉じるとさらに三塚は顔を近づけ凪の耳元に口を近付けてくる。
「凪の全部が欲しいと思ってます…。今あなたにその気がなくても別に構いませんが…でもまるきり脈なしでもないようなので…」
「ないっ!」
「嘘でしょう」
艶を含んだ三塚の声が凪の耳を擽って、しかも唇が微かに触れるのにぞくぞくと背中がざわめく。
「…ほら…」
ぐいと三塚の手が凪の肩を掴んでびくりと身体が反応する。
「凪…キスしても?」
「や!ダメ…」
「好きです」
低い声が欲を孕んでいっそう艶めいて耳に響けば腰がぬけそうに痺れる。言葉の意味を考えるよりもその声にびくびくと反応してしまう。
「凪…」
そっと三塚の手が凪の顔にかかると唇を重ねてきた。
嘘だろ!やめろ!と思うのに身体は自由にいう事をきかず、三塚はさらに舌を差し込んできた。
頭を押さえられ三塚の舌が凪の舌を捕えるとくちゅくちゅと絡ませてくる。
…やばい…気持ちいい…。
「んっ…ゃ…」
何度も何度も三塚が角度を変えながら凪の口腔を舐ってくる。
息が荒くなって力が抜けてくるとやっと三塚が離れ、くたりと凪の体から力が抜ければ三塚が凪の体を抱き寄せた。
なんで…キスが気持ちいい…とか…。ないだろ…。コイツ上手いのか…?そういや男も女もって言ってたし…。
「凪…どうしよう…可愛い」
「は?ないだろ」
三塚が何度も軽いキスを繰り返して来て、凪は手でその三塚の顔を遮った。
この声がマズイんだ…。あまりにもよすぎて…言葉が耳に入ってこなくて腰にくるから!
たくさんのポチいつもありがとうございますm(__)m
にほんブログ村小説(BL) ブログランキングへにほんブログ村 BL小説