「…やめろ」
触るな。
口でそんな事を言っても三塚は動かす手を止めない。つっと首筋を撫でられ、身体を竦める。
「凪」
三塚が顔を耳に近づけその腰に響く声で名前を呼んだ。名前を耳元で呼ばれるとそれだけでかっと顔が熱くなってしまう。
それでなくともさっきから甘い事ばかり言われてそんな事に慣れていない凪はどうしたらいいのかが分からない。
「凪…好きです。俺は裏切らない」
三塚の言葉にはっと凪は顔をあげ、三塚と視線を絡ませた。
「俺の事嫌いじゃない、ですよね?」
それはそうなので小さくこくりと頷いた。今までこんなに凪の近くにいた人などいないし、それを凪も受け入れた事もなかった。三塚はいつの間にかすっかり凪の中に入ってしまっているけど…。
三塚がそっと凪の身体に手を触れてきたと思ったら椅子に座ったままの凪を三塚が抱きしめてきた。
「やっ、め…」
「……いや?」
…………嫌じゃないから困る。
「嫌じゃないんですよね?」
くすりと凪を抱きしめた耳元で三塚が笑った。だって…人にこんな…事される事なんてない事だ。されたいと思った事だってないし…。
ずっと一人でいいと思ってたのに…。自分を保てなくなりそうで怖い。
「…凪…待とうと思っていたんですけど…ちょっと待てそうになくて…」
待つ?何を?
三塚が凪を抱きしめたまま耳元に囁かれればそれだけで凪の身体が痺れそうに感じてしまう。
低い声が甘く響く。力が抜けそうになれば三塚の抱きしめる腕の力が強くなってさらに凪の身体は三塚に密着してしまう。
コイツはピアノしてて音大にと思ってた位だと言ったくせにどうしてこんなに肩幅とか広いんだ?凪の身体がすっぽりと三塚の腕の中に納まっている位だ。そんな余計な事を思いながらも抵抗する事もしないのはどうして…。
「…凪…俺の事認めてくれませんか…?」
「みとめ…て…?」
三塚の声が耳元に聞こえるだけでびくりと身体が反応してしまう。それに三塚の甘い香りが…。声も匂いも甘いなんて…。
「そう…こんなに…感じてるのに…」
「ぁ…あ…っ」
つっと背中を撫でられるとありえない声が漏れて顔が真っ赤になった。
「こんなに俺に反応してるのに待て、なんて酷でしょ?」
「ち!違う!声と匂いが悪いんだ!」
「……往生際の悪い」
はぁ、と三塚が溜息を吐く。
「それだけでこんな風になるなんてないでしょう」
……そうだろうか…?
「いや…お前の声だったら絶対なる!」
「なりませんよ」
「………じゃ…どうして…」
凪はいつもぞくぞくしてしまう?
「俺が凪を欲しいと思って、そして凪も俺を欲しいと思ってるからでしょう?」
「嘘だ!そんなことな…い…んっ!」
三塚が唇を重ねてきた。舌で凪の唇をなぞり、そして舌を差し込んでくる。
どうして三塚は全部が甘いんだ?声も香りも…キスも甘い…。
「ん……ふ…」
鼻にかかった息が漏れるとさらに三塚のキスが濃厚になってくる。だめだ…抵抗できない…。
舌を絡められて唾液がぴちゃぴちゃと交じる音が恥ずかしいのに、どうしてそれを凪は黙って受け入れているのか。
後ろ頭を押さえられ三塚の舌が執拗と言っていい位に凪の口腔を舐ってくる。
「んん…ぅ…」
息が…あがってくる。熱くて…熱が身体に籠もりそうだ…。三塚の舌が何度も何度も凪の舌を絡め吸い上げ互いの交じり合った唾液が凪の口端を伝っていく。
「…っ!ん…は、ぁ…」
三塚が口を離すと銀糸が伝いそれにまたかっと顔を熱くさせると三塚がくすりと笑い、凪の濡れた唇と口端から零れた唾液を指で拭った。
…それがまた恥かしくて思わず三塚の腕の中で顔を伏せると三塚の腕がぐっと凪の身体を抱きしめた。
「気持ちいい?」
「………よくない」
「嘘ばっかり」
やっぱり自信家の男だ!
「あ、ぁっ」
凪の耳元に三塚がキスを落とせばぞくりとまた凪の身体が震えてしまう。
「ほら…こんなに感じてるのに…このまま凪を流して進めてもいいんですけど…ちゃんと凪に認めて欲しいのでやめておきます。信用されたい…というのもありますけど」
「何が…?」
どこか現実でないような気がする…。ふわふわと気持ちが浮かんでいるような…。
「凪…俺は裏切らない。絶対に…。信じて」
そんなの分からないじゃないか…。
凪がむっとするとその凪の顔を覗きこんで三塚がくすりと笑う。やっぱりうさんくさい。それに…コイツ…タラシだろう…絶対。
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