「しかし…凪…すぐ分かった?」
「え?ああ、味?すぐ分かるよ」
「………困ったな…今すぐキスしたい気分なんですけど?」
「な、な、何言ってるんだ!」
小さな声で顔を赤くしながら抗議する。
「だってそんなに俺の……作るケーキ好きですよね?」
「うん」
「んん~~~……複雑だな。それも嬉しいは嬉しいですけど、俺としてはケーキよりも俺自身の方を好きになってもらいたいのですけどね…どうもケーキに負けてるよな…」
そんな事はない、とは思うけど…黙っておく。
「デザートどうです?三塚に考えてもらったんだけど」
そこに三塚の友人が来て三塚の隣に座った。
「おいしいです」
まさかここで三塚の味に出会えるなんて思ってもいなかったからサプライズでとても嬉しく思ってしまう。
「男だけど…綺麗な人だなぁ?」
「だろ?」
ふふんと三塚が得意気だ。
「綺麗なだけじゃないけどな」
「……本当に本気なんだ?」
「そう」
「信じられねぇけど…ええと…高比良さんって言ったっけ?こいつってさ、なんかちょっと信用なんない感じしない?」
…する。とこくりと頷いた。
「凪!?そこ頷く?」
「頷く。だってタラシっぽいし…慣れてるのも…なんとなく分かる…」
あはは!と友達が笑っていた。
「そうそう!その通りだと思う。…でも俺、小学校から今まで顔合わせてきたきたけど、初めてコイツのツレ紹介してもらった」
……え?
「…まだツレじゃない」
三塚がむっとして答える。
「まだなのに紹介なんてな。ここに誰かを連れて来たのも初めてだし」
「……あの…?」
「はい?」
凪は普通に受け止めている三塚の友達を不思議そうに見てしまう。
「どうして…そんな…普通?」
「ああ?ああ!男でって事?だってこいつ節操なかったもん。ちゃんと紹介してもらったのは高比良さんが初めてだけどね。過去話聞きたかったらいつでも来ていいよ?紹介された事なくてもほとんど知ってるから」
「野田!」
やめてくれ、と三塚が慌てている。
「っと、コイツとは関係なしに!さっきのディナーショーの話をしに来たんだった。あの、本当にいいんですか?」
「ええ。僕でいいなら。さっき三塚とちょっと話したんだけど、クラシックですよ?」
「全然!ピアノのある店にしたくてしたのに全然で」
「奥様は?」
「弾きません。憧れてたみたいですけど。三塚が弾けるの知ってたしこいつに弾けって言ってたんだけど弾いてくれないし!」
「無理。凪のピアノ聴いたら分かるよ。…本物のピアニストの音と素人の音じゃ全然違う」
「……そうか?弾けない俺らにしたら弾けるってだけでも凄いと思うけどな。なので!本当にお願いします!ギャラとか…」
「あ、いいですよ。そうですね…じゃあその日の食事でもご馳走していただければ」
「ええ!そんなんでいいんですか!?」
「凪!分捕ってやっていいですよ!あんな広いホールで満席になる位のピアニストなんですから!」
「いいよ。別に…。人前で弾くのは勉強になるし。三塚の友達の店でだしな。いつも三塚には世話になってるし…」
「俺が世話した分は俺に返してください。こいつに返す必要はない」
「なんだよ。俺とお前の仲でそんな事言うなよ!助かります。じゃあ、いつがいいかな…」
本当にツーカーで仲がいいらしい二人にくすりと笑ってしまう。
「時間はどれ位でしょう?」
「最初に演奏してもらってそれから食事か、それとも食事しながら…」
「演奏と別がいい。凪のピアノが先。その後食事」
三塚がきっぱりと言った。
「じゃそれで。時間は…」
「さっき凪と話してたけど、有名どころの曲がいいだろうって。もし定期的にというならマイナーな曲入れてもいいけど…。とりあえず初めは誰でも聞いた事あるような曲だろうなと。だいたいクラシックファンじゃなくてお前の店に来る様な客相手にだろう?」
「………そうだけどぉ」
言いたい事言っている二人がやっぱりおかしくて微笑ましい。
「あ、でもやっぱ定期はやめて欲しいかな…」
三塚が面白くなさそうな表情を浮かべてそう言った。
「なんで?」
「凪のファンが身近に増えるのは面白くない」
「ちいさっ!」
「当たり前だ!こちとら一所懸命餌付けしながら振り向いてもらおうと必死こいてるのに」
「あははは~!お前が努力とかありえねぇ!あ、お前の店でも宣伝しろよ」
その友人の提案に三塚はさらに嫌そうな顔をした。
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