どうしよう…。三塚が帰ると言ったら…引き止めてもいいのだろうか…?
でもそうしたら…まるで凪が誘っているようじゃないか?でも立花 創英に触れられた肩がどうしても…気持ちに不安を落とす。
三塚の本気を疑っているんじゃない…。もう分かっている。三塚の目はいつだって凪をちゃんと見ている。優しく。
そして…凪だってもう…三塚の存在が…。
家が近づくにつれ無言になっていく。
三塚から言ってくれないかな…と思いながらもそれじゃダメだ、と思い直す。凪から言わないと…。三塚はずっとちゃんと言ってくれてたんだ。
でもだからといって好き、とかは…言えない。それに好きか…分からない。いや、好きは好きだけど、果たして三塚と同じ種類になっているのだろうか…?
ぐるぐると頭の中が混乱してきてしまう。
「凪?着きましたよ?」
やっぱり…三塚は車から降りる気はないのか…?
「……寄って…?」
そっと三塚の袖を掴んで小さく囁いた。
「いいんですか…?」
こくりと頷いて凪は車を降りた。恥かしい。別に何を言ったわけでもないのに…ただ寄ってと言っただけのはずなのに…。
玄関のドアを開けていると車のエンジンを止めて降りてきた三塚が後ろに立った。
鍵を開ける手が震えそうだ。
「凪」
「!」
がちゃんと玄関の鍵が開くのと同時に耳元に三塚の声が響いた。
その声は反則だと思う!
玄関を開けて慌てて中に入ると三塚もするりと入ってきて、そして凪が廊下の電気をつけると三塚は玄関を後ろ手にがちゃんと鍵を閉めた。
「凪」
「ぁ…っ」
まだ靴も脱がないうちから三塚の腕が凪の身体を後ろから捕まえてきた。
「……凪……間違ってないだろうか…?」
「な、何が…?」
耳に囁かれる三塚の声が近い。凪の声は上擦り、腰がぬけそうに身体が快感に痺れる。
「……泊まっていい?」
そ、そんな直接的に聞かれるとは思ってもいなかった!
「ダメなら回れ右して帰ります」
凪の身体を抱きしめる三塚の腕を凪もぎゅっと掴み、そして小さく頷いた。
これが精一杯だ。
「凪!」
三塚の腕が外れたと思ったらぐりんと身体を三塚と向かい合わせにされ、そしてキスされた。
「んっ…」
三塚の腕が凪の腰と後ろ頭を押さえている。
何度も何度も貪るように三塚の唇が凪の口腔を蹂躙してくる。舌を絡めて吸い上げられ…。いつもされるばかりだったけど…。
「!」
そっと凪から舌先を突き出すとすぐに三塚の舌がそれに絡み付いてくる。
「んふ…っ…ぅ……んんっ…」
「凪…」
はぁ、と三塚が荒い息を漏らしながら凪の身体を抱きしめた。その三塚の肩口に凪も顔を押し付ける。
やっぱり…三塚のキスは気持ちいいし触られるのも嫌なんてどこもない。むしろもっと…とか…。
「凪…寝室は…?」
「…え?」
顔が熱い。
「え?……って…まさか本当にただ泊まるだけ、なんて言わないでしょうね?」
「あ。……い、や……言わない…け、ど…」
「本当に?…俺はあなたが欲しいんですよ?」
「う、うん……けど…ほら…僕は……その…誰とも……」
「分かってます…。優しくします。……風呂先のほういい?俺はそのままでも構わないんだけど」
「あ!ああ!うん!」
「……風呂入ってる内に逃げない?」
「……ない…」
「…一緒いってもいいんだけど」
「や!…そ、それは!…ちょ、っと…」
「じゃ、凪先にどうぞ。俺はいい子で待ってます。リビングの方にいますから」
「あ、あ、…ん…わ、わか…った…」
そそくさとそのまま風呂場に逃げるように向かった。
バタンとドアを閉じ大きな溜息を吐き出した。
これから…?三塚と…?心臓がありえない位にばくばくと鳴っている。
…シャワー…しよう…。
着ていたスーツを脱ぐと洗面台に真っ赤になっている自分の顔があった。首や耳まで赤くなっている。
だって!こんなの初めてだし!
いい年して初めても情けないが、三塚はそれをすでに知っている。…考えてみれば三塚は凪の隠しておきたいところばかりを知っているんだ。
でも、それでも、三塚はまだ凪の事を好きだと言ってくれる。人から見たらちょっと、と思うようなところでも三塚は笑ってもそれは馬鹿にした笑じゃないから。だから笑われても平気なんだ。
「あ、シャワー」
鏡で自分の顔を眺めていても仕方がない。さっさとして…ってそれじゃ早く!って言ってるみたいか…?
でも早くしないと…三塚が嫌な気分になるかもしれない…。それもちょっと…。せっかく凪が勇気を出したのに。
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