「凪…」
「……う、ん…?」
三塚の声とキスに意識が覚醒してくる。
「俺もうそろそろ行きます。朝飯用意しといたんで食べて。あと夜にまたきますから…身体大丈夫?」
「…ん…?」
凪ははっと目を覚ました。
そうだ、三塚は仕事が…。
「目覚めた?洗濯も勝手にですけど回しておきましたからあと干して?ちょっと身体つらいかもですけど…一緒にいたいのはやまやまですが…今日もご褒美にケーキ持ってきますから頑張って」
「………ん…」
気恥ずかしい…。
「お前…朝帰りとか…平気なのか…?」
「全然。朝帰りは昔からしょっちゅうなので」
……昔からしょっちゅうって…。そういやこいつの友達も節操なかったとか言ってた…。
むっと凪が面白くないという顔をしたら三塚が笑い出した。
「可愛い…!…凪、俺が朝帰りしょっちゅうって面白くない?」
「……別に」
布団をかぶって潜るとその上から三塚が抱きついて来た。
「朝帰り多いのは野田んちですよ?アイツの実家すぐ近くで、遊んでついでにそのまま泊まるのが小学校の時からずっとだったから。その延長上であっちにあいつが店と自宅構えても休みの度に遊び行って酒飲みすぎて撃沈とか。そんなんばっかです。ここ最近は凪のところにばっかり来てておりこうさんに帰ってたもんだから妹には却って不気味がられてましたけどね」
全部が全部そうではないだろうけど…まぁそれならいいか、とそろりと凪が顔を出すと三塚がキスして来る。
「これから朝帰りは凪んとこだけにします」
「………ん」
「じゃ、夜に」
「ああ、…その…いってらっしゃい…」
「いってきます。……いい!…新婚さんみたいだ」
くくくと三塚が満足そうに笑って出て行ったそのあとから凪の顔がかぁっと真っ赤になってくる。
ベッド…狭くなかっただろうか…?一応セミダブルではあるけど…。ぬくぬくとどうやら凪は熟睡してしまっていたらしい。全然三塚が起きたのにも気付かなかった。
しかし新婚さんって…。
かっとしてそして昨夜の事を思い出してくる。三塚に…抱かれて…。
恥かしいけど…満ちた気持ちだ。
身体だけの事じゃなくて、精神的にも…。
欠けていた何かが埋まったような…。
そんな事はないのに。
「起きよ…」
みしりと身体が悲鳴をあげる。
………やっぱりしばらくは…するのは無理かも…。
今日のレッスンは辛そうだ…。
はぁと溜息を吐きながら凪はのろのろと着替えを済ませた。
凪先生具合悪いの?と代わる代わる生徒に聞かれて苦笑してしまう。ちょっとね、とだけに止めたが、なにしろ恥かしい事に変わりない。
気だるげにしていた様子が敏感な子供達にはすぐに感じ取られる事だったみたいだ。
とりあえず今日を終われば明日は休みだ。…三塚のレッスンはあるけど。
レッスンの途中で玄関が開いたのには気付いた。三塚だ。
三塚も明日は休み…。明日はもしかして一日一緒にいる事が出来るのだろうか…?いや…そんな事思うのも…。
「凪先生、熱ある?顔赤いよ?」
時間が遅いと小学生も高学年だ。
「え?いやそんな事ないよ。今の所もう一回。音は合ってるけど、もっと柔らかく弾かないと」
誤魔化すように手本を弾いてみせて一緒に弾く。
「そう!よくなっただろう?」
子供が嬉しそうに頷けば凪も満足だ。
じゃ、また来週、と最後の生徒さんを送り出しレッスン室の電気を消した。
「お疲れ様。凪!大丈夫でしたか?」
「………大丈夫じゃなかった…生徒に具合悪いかって聞かれまくりだったよ」
レッスンを終え、ほっとしてソファに座ると三塚が慌ててキッチンから出てきた。
「………うーん…」
「何?」
ソファに沈むように座った凪の前に三塚を顔を覗き込むようにしてじっと凪の顔を見て三塚が呻った。
「…子供相手でよかった…」
「?」
「エロいフェロモン垂れ流しすぎ」
「…は?」
「凪……どうしましょうね…?」
「何が…?」
「セックスした後の凪がこんなにエロエロなんて…」
「し、し、…」
「…し?」
「し…ばらく…は…無理っ!」
「ええ!?」
「ええ!じゃないっ…」
かっと顔を熱くさせながら凪が言えば三塚が抗議の声をあげる。
「今日は無理でも明日は…と思ってたのに…」
「し、しないっ!」
「そんな事言わないで…昨日は俺もちょっと箍外れちゃって…もうちょっと抑えますから!ね…?」
「し、知らないっ!」
「凪ぃ……」
三塚がいつもの艶めいた声ではなく情けない声をあげた。
たくさんのポチいつもありがとうございますm(__)m
にほんブログ村小説(BL) ブログランキングへにほんブログ村 BL小説