「なぁ、お前の友達が言おうとした今までの…って何?」
車に戻って帰り道で三塚に聞いてみると三塚が嫌そうな顔をして凪を見た。
「…変な事吹き込まれるのも嫌なので自分から暴露しますけど」
「うん」
「……凪…俺の事…嫌いません?」
「ないと思うけど?」
なんだろう?
「あ~……でもやっぱりやめとこうかな…」
がしがしと片手で三塚が頭をかいている。
「……過去の事だろ?三塚は言ったじゃないか…回り道したって一緒にって…今までは僕は一人だった。三塚にはそれでもたまには誰か隣にいてくれた人がいたのかもしれないけど…」
「いません。…俺もずっと一人でしたよ。付き合った相手…いますけど…それ、本当にヤれればいいや、位で…。……だいたい告白されて付き合って、本当に私の事好きなの?って聞かれていいや?って答えてサヨウナラがパターンでしたから。だって本当に好きだったわけじゃなかったし…」
「……………」
じとりと凪は三塚を眺めた。
「ほら!呆れてる」
「…………お前…最低だな」
「俺は最初にちゃんと言ってますよ?俺は好きじゃないけどそれでいいなら付き合うけど?って。最初はそれでもいいから、って女が言うから。……凪が本当に…俺が欲しいと思った初めての人なんで」
そこはちょっとは嬉しくなってしまう。…けど。…じゃあ告ってきたら誰でも即OKなのか…?
「……ホント…節操ない…」
「今はもう!凪いれば何も問題ないですから。誰もいらない。凪がいればいい……だめ?」
「…過去の話なら問題ないけど…?」
「過去です!過去!」
「お前そのうち誰かに刺されそう…」
「だから!今はそんな事ないですって!…ホント勘弁してください…こんなの凪に聞かせたくもないけど!野田とかもしくは別の誰かに聞かされるくらいなら自分から暴露しといた方がいい…凪には嘘もつきたくないから…」
凪はイライラする三塚にくすりと笑ってしまう。
「…過去、なんだろう?」
「勿論」
「僕は信じたいと言った。……三塚は信じてと言っただろ?」
「…ええ。ですから…」
「信じるよ」
三塚が運転席から凪の顔を見て目を見開いた。
「……本当、に…?」
「ああ…。三塚の友達と奥さん見たら…分かる。二人とも三塚の事きっと心配してたんだろう?そんなとっかえひっかえ状態で…三塚のちゃんとした相手というのが僕なんかで申し訳ないけど…」
「何言ってるんですか!俺のほうこそ……こんな適当人間ですみません!ですよ…凪……本当に…嫌じゃない…?」
恐る恐る三塚が聞いてくる。
「…恥かしい話ですけど…俺、…本当に人にどう思われるかなんて気になるの初めてで…凪に嫌われるのが怖いです」
「嫌う?どうして?」
凪はもう三塚を選んだのに?それでどうして嫌いになるのだろうか?不思議そうにして三塚を見た。
「野田さんの…三塚の友達の店に、三塚の大切な場所に連れて行ってくれてくれた…。僕にはそれで十分だけど?」
「…凪!」
「…本当に嬉しい…と思った。三塚の中に入れてもらえた、と思ったからね…」
「…………早く帰りましょう!」
「え?」
「抱きしめてキスしたい!」
「………帰ったら三塚のレッスン先」
「後!キス先!」
「レッスン先!……じゃないと…僕がもたなくなりそうだから…」
ちろりと三塚が凪を窺う様に見てきた。
「…それって…いいよ、のお誘い?」
「ちがうっ!」
「………なんだ…」
がくっと三塚が肩を落としている。ああ!つい!恥かしくなって否定してしまったけど!…しなければよかった…。
「あの……ちがく…ない……」
三塚の顔から視線を外し窓から外の方を眺めながら小さく凪が呟いた。聞こえたかな?…と思う位の小さな声だ。
「凪……レッスン…休んでいい…?」
三塚の声が低くなった。
「いや休みたくないけど…レッスンは楽しみなんですけど…凪にそんな事言われたら……」
ちゃんと…聞こえてたらしい!
「凪…耳まで真っ赤ですよ?…ああ!くそ!…なんで車運転中かな!」
ぐいと三塚が凪の身体を引っ張った。
「凪」
呼ばれて振り向いたら素早く三塚がキスした。
「…これで我慢しときます!」
かぁっと凪はさらに顔が熱くなってくる。
「く、く…車…」
周りに見られたらどうするんだ!?
「誰もよその車なんて気にしませんよ」
くすくすと三塚が笑っている。
「凪……帰ったらすぐレッスン!」
「…うん」
…その後…は…?
三塚を見れば三塚も凪をじっと見て、でもすぐに前を向き運転を続けた。そのかわり手は凪の手を握っていた。
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