帰ったらすぐキスしたい…とか言ってたのに三塚は全然そんな素振りなんかしない。
……なんだよ…。
折角勇気出して言ったのに…。意味…分からなかったのだろうか…?
…それとも…三塚はもういいや、とか思ってる…?
でも毎日来る…けど…それに…優しいし…。
レッスンも休んでいい?とか言ってたのに三塚は普通のまま。レッスンも終わったのにキスもしてくれない…。
どうして…?
「凪、ちょっと来て」
何の手伝いも出来ない凪がソファでぐだぐだと考えていたらキッチンの三塚に呼ばれて顔を跳ね上げた。
「味見」
スプーンでまだ蕩け加減のアイスをちょっと掬って凪の口に放り込んだ。
「!」
濃い!美味しいっ!
目を見開いて三塚の顔を見ると三塚が嬉しそうに笑った。
「美味しい?」
こくこくと凪が頷くと三塚が舌を差し出しながら凪の唇を舐め、そしてキスする。
あ…キス…。
キスされるのを待っていた凪は自分から舌を突き出しそして絡めた。積極的な凪に三塚の舌がさらに絡まり唾液が混じりあうような濃厚なキスになっていく。息遣いも熱くなってはぁ、と唇を離すと三塚がくすりと笑った。
「……キス…されたかった?」
「ち…がう…」
ちがくないんだけど…。素直に言えなくて思わず顔を伏せて三塚の胸に自分から縋る。
…なんか凪の方が三塚よりきっとずっと三塚が必要な気がする。三塚は凪がいなくたってきっと平気だろう。でももう凪は三塚がいない事は考えられそうもないと思う。
…こんなに…キスを待ってるなんて…。
「…否定するんだ…?……ですよね…。おしつけがましいもんな…。きっと凪は俺なんかいなくたってどうって事ないでしょうから」
「ちがう!」
え!?と凪は顔を跳ね上げた。
「…三塚こそ…別に…僕じゃなくたって…いいだろう?」
「よくないですけど?俺が欲しいのは凪だけだ。ずっと我慢してるのだって凪が嫌なのだと思って…」
「や…じゃない……!嫌なんて一言だって言ってない!」
「………凪…今日は…いい…?さっき…」
三塚が凪の耳を食みながら色を含んだ声で囁いてくると凪の身体がぞくりと粟立った。
そして顔を赤くしながらも小さく頷く。
ちゃんと…分かってた…んだ…。
「本当は帰ってきてからもずっと我慢してるんですけど…?でも凪にはちゃんとご飯食べさせないとね」
「………」
…いいのに…。
そっと凪は三塚の首に腕を回そうとしたら三塚に止められた。
「ダメ。後で。それでなくとも凪は栄養失調とかなってるんだから!運動はちゃんと食べてから」
かっと凪が顔を真っ赤にする。
だって…運動って!
「もうちょっとで出来るから待ってて」
「………」
おとなしくダイニングに座って待つことにする。…けど、いつも毎日来てくれていのだろうか、と思ってしまう。そのうち飽きられたらどうしよう?食事の用意なんていいから…って自分も少し位は覚えればいいんだ。そうしたら三塚の負担は少なくなる。
「あの!」
「なんです?」
「僕も…料理覚えるから…三塚教えてくれる?」
「嫌です」
嫌!?
「そう。凪がおいしい!…っていう顔が好きなので、凪はしなくていいです!」
「で、も!」
「いいの。凪が自分で覚えちゃったら俺いらなくちゃうでしょう?」
……そんな事はないと思うけど。話をするのだって三塚は曲とかも知っているしピアノしかない凪でも話が出来るから…。
「それに慣れない包丁持って手なんか切ったりしたらどうするんですか!怖いのでやめてください」
…それを言われたら手を切らない保障はないけど…。実際自分でやってみようかと思ったが何度か切っている。
「凪は……一瞬器用そうに見えますけど、実際は不器用そう…」
三塚の言葉に思わずむっとしてしまうがその通りで黙ってしまうと三塚がくくっと笑っている。
「凪は誰にも出来ない事を仕事にしているんですから」
「僕クラスのピアニストなんて山ほどいるよ…」
「嫌味ですか?俺なんか音大も諦めた位なのに」
「ちが…っ…!そうじゃない…本当に僕位なら…世界の一線で活躍するなら分かるけど…本当にすごい人の演奏は感動する。僕のは…そうじゃない…」
「はい?…真面目に言ってる?…困った人だな」
三塚がくすりと笑った。
「俺があなた位弾けるならもう自信満々ですけどねぇ~…。謙虚な凪だから好きですけど。もし凪が俺みたいなんだったら…好きにはならないかな…」
三塚の言葉にぷっと凪も笑ってしまう。
こうして茶化してくれる所とか…凪の気を軽くしてくれる所が好きだと思うんだ…。
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